グリーゼ近傍恒星カタログ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 07:43 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動グリーゼ近傍恒星カタログ(グリーゼきんぼうこうせいカタログ、Gliese Catalogue of Nearby Stars)は、頻繁に参照される天体カタログであり、地球から25パーセク(81.54光年)以内の恒星(若干の白色矮星等もある)を収録する。
第1版と補遺
1957年、ドイツの天文学者ヴィルヘルム・グリーゼは、地球から20パーセク以内の比較的近いところにある1,000個近くの恒星の既知の性質を赤経の順に並べた最初の天体カタログを出版した[1]。収録された恒星には、GL NNN(番号は、1から915)の符号が割り当てられた[2]。
ただし現在では Gl NNN(lは小文字のL)もしくは GJ NNN が使われる[3]。GJは、のちの増補版である「グリーゼ・ヤーライス (Gliese Jahreiss) カタログ」(次節参照)の符号GJがさかのぼって使われているものである。以下に述べるGJカタログ以前の増補版にも、GJがよく使われる[3][4]。
1969年にグリーゼは、範囲を22パーセクまで広げ、大量の更新を含むCatalogue of Nearby Starsを出版した[2]。この更新で収録星数は1,529個になり、追加分には Gl NNN.N(番号は4.1から909.1の不連続)の符号が割り当てられた。赤経の順番を維持するため、新しく収録された恒星には、既存の番号の間の枝番が割り当てられ、たとえば Gl 4 と Gl 5 の間に Gl 4.1 と Gl 4.2 が追加された[2]。
1970年には、リチャード・ウーリーらによって、範囲を25パーセクまで広げた補遺が出版された。新しく収録された恒星には、Wo 9NNN の符号が付けられ、赤経順に9001から9850の番号が割り当てられた。1969年の追加(Gl NNN.N)とは重複しており、たとえば Gl 4.1 = Wo 9001 (= GJ 4.1 = GJ 9001) である[5]。
ヤーライスによる改訂版 (GJ)
グリーゼは、1979年にハルトムート・ヤーライスとともにさらに拡張した第2版を出版した。このカタログは、現在では一般に「グリーゼ・ヤーライスカタログ」(GJカタログ)と呼ばれる[6]。このカタログには、2つの表が収録されている。表1では、近傍の恒星と確定したものに対して、GJ 1NNN(番号は赤経順に1000から1294)の符号が割り当てられ、表2では、近傍と疑われる恒星に対して、GJ 2NNN(番号は赤経順に2001から2159)の符号が割り当てられている[7]。
このカタログの出版以降、以前・以降の版や補遺に含まれる全ての恒星に、GJの符号が用いられている。
グリーゼは、1991年に、再びヤーライスとともに、3,803個の恒星の情報を含むThird Catalogue of Nearby Stars (CNS3)を出版した。このカタログは予稿であったが、現在でも用いられている[8]。多くの恒星には、既にGJ番号が振られていたが、1,388個の恒星には番号がなく、名前を付ける必要があったことから、赤経順に3001番から4388番が割り当てられた。現在のカタログには、これらの番号も含まれている。このような非公式なGJ番号を持つ恒星の例としては、GJ 3021がある。
1998年には、ヤーライスによってオンラインのみの最新版が作られ、ルプレヒト・カール大学ハイデルベルクのAstronomisches Rechen-Institut, Heidelberg(ARICNS)で入手できる。
グリーゼ581やグリーゼ710など、いくつかの恒星は、もとのカタログの番号で知られる。このカタログの恒星は、地球から近いため、しばしば研究の対象となる。
最新の更新版は、2010年に出版されたものであり、可能なものについては2MASSのデータとの調和が図られている[9]。
出典
- ^ Gliese, W. (1957) (German). Katalog der Sterne naher ALS 20 Parsek fur 1950.0. Astronomisches Rechen-Institut, Heidelberg, 89 Seiten. Bibcode: 1957MiABA...8....1G
- ^ a b c Gliese, W.. “Catalogue of Nearby Stars. Edition 1969”. Veroffentlichungen des Astronomischen Rechen-Instituts Heidelberg, Nr. 22, Verlag G. Braun, Karlsruhe, 117 Seiten. Bibcode: 1969VeARI..22....1G .
- ^ a b “Result of query: info cati GJ$”. SIMBAD. 2020年3月23日閲覧。(ソースには最後に「~A」と書かれているが、これは連星を区別する部分であり、ここでは省略した)
- ^ Woolley, R. V. D. R.; Epps, E. A.; Penston, M. J.; Pocock, S. B. (July, 1997). Stars within 25 pc of the Sun (Woolley+ 1970) (VizieR On-line Data Catalog: V/32A. Originally published in: 1970ROAn....5....1W ed.). SIMBAD. Bibcode: 1997yCat.5032....0W
- ^ “HD 123 -- Double or multiple star”. SIMBAD. 2020年3月24日閲覧。
- ^ Gliese, W.; Jahreiß, H. (1979). “Nearby Star Data Published 1969-1978”. Astronomy & Astrophysics, Supplement Service 38: 423-448. Bibcode: 1979A&AS...38..423G.
- ^ “Dictionary of Nomenclature of Celestial Objects”. ストラスブール天文データセンター. 2009年12月11日閲覧。
- ^ Gliese, W.; Jahreiß, H. (1991). “Preliminary Version of the Third Catalogue of Nearby Stars”. In L.E. Brotzmann; S.E. Gesser. The Astronomical Data Center CD-ROM: Selected Astronomical Catalogs. I. Greenbelt, MD: NASA/Astronomical Data Center, Goddard Space Flight Center. Bibcode: 1991adc..rept.....G
- ^ STAUFFER J.; TANNER A.M.; BRYDEN G.; RAMIREZ S.; BERRIMAN B.; CIARDI D.R.; KANE S.R.; MIZUSAWA T.; PAYNE A.; PLAVCHAN P.; VON BRAUN K.; WYATT P.; KIRKPATRICK J.D (2010). “Accurate Coordinates and 2MASS Cross-IDs for (Almost) All Gliese Catalog Stars”. Publications of the Astrophysical Society of the Pacific, 122: 885-897. arXiv:1006.2441. Bibcode: 2010PASP..122..885S. doi:10.1086/655773.
関連項目
外部リンク
グリーゼ近傍恒星カタログ (GJ, Gliese, Gl)
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「星表」の記事における「グリーゼ近傍恒星カタログ (GJ, Gliese, Gl)」の解説
詳細は「グリーゼ近傍恒星カタログ」を参照 『グリーゼ・カタログ』(後に『グリーゼ-ヤーライス・カタログ』とも呼ばれる)は地球から20パーセク以内の近距離の恒星全てを網羅する星表である(後の版では25パーセクまでカバーされている)。『グリーゼ・カタログ』での番号が 1.0 - 965.0 までは、第2版: Catalogue of Nearby Stars (1969, W. Gliese). に収録されている恒星である。整数番号を持つ恒星が初版に収録され、小数点の番号を持つ恒星が第2版で追加された新しい恒星であると思われる。この第2版で追加された星表を CNS2 という略称で呼ぶが、恒星の番号にはこの略称は使われない。 9001 - 9850 までの恒星は、補遺: Extension of the Gliese catalogue (1970, R. Woolley, E. A. Epps, M. J. Penston and S. B. Pocock). で収録された恒星である。 また、1000 - 1294 と 2001 - 2159 までの恒星は、補遺: Nearby Star Data Published 1969–1978 (1979, W. Gliese and H. Jahreiss). に含まれる恒星である。1000 - 1294 までの恒星は近傍星だが、2001 - 2159 までの恒星は近傍星であるかどうか疑わしい恒星であることを示している。 3001 - 4388 までの恒星は、 Preliminary Version of the Third Catalogue of Nearby Stars (1991, W. Gliese and H. Jahreiss). に含まれる恒星である。この版は "preliminary"(予備版)と名乗っているが、2001年9月時点でまだ正式版は発行されておらず、このカタログが CNS3 と呼ばれている。このカタログには合計 3,803 星が収録されている。これらの恒星のほとんどには既に GJ 番号が付いているが、番号が付いていない星も1,388個(と太陽)が含まれている。これらの星にも何らかの名前を付ける必要があるため、現在ではこのカタログのデータファイルでは通常、これらの星には 3001 - 4388 の番号が付けられている。この非公式な GJ 番号を持つ星の例として、太陽系外惑星を持つ恒星として知られる GJ 3021 がある。
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