天球図譜とは? わかりやすく解説

天球図譜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/10 06:13 UTC 版)

天球図譜
著者 ジョン・フラムスティード
ジェームズ・ソーンヒル
イングランド
言語 英語
ジャンル 天文学
出版日 1729年

天球図譜(てんきゅうずふ、: Atlas Coelestis)は、王室天文官ジョン・フラムスティードの観測結果に基づいて制作され、彼の死後、1729年に出版された星図[1]

この本は、それまで出版された星図のうちでは最も大判であり[2]グリニッジから観測できる主な 26 星座の図を、ジェームズ・ソーンヒルロココ調のイラストと共に掲載している。またエイブラハム・シャープがデザインした星座早見盤も2つ掲載している[1]

歴史

フラムスティードによる『天球図譜』(第2版、1753年)

初めて望遠鏡の観測に基づいて作られた星図『天球図譜』は、フラムスティードの死からわずか10年後、彼の未亡人がジョセフ・クロススウェイトとエイブラハム・シャープの助力を得て出版した。

これに先立つ1725年には、2919個の星を掲載した『大英恒星目録』を出版している[3]

フラムスティードがこの本を編纂しようとした主な動機の一つは、ヨハン・バイエルが『ウラノメトリア』(1603年)で使った星座の表示法を正したいというものだった。バイエルは星座を背面から見た状態で描いたため、実際の見え方とは裏返しになっており、無用な混乱の元になっていた[2](星座を正面から描かないのはプトレマイオスの時代からの流儀だった)。

この本は出版されるや好評を博し、1世紀近くの間、天文学の専門家たちの間で標準的なリファレンスとして使われた。しかし3つの問題点も指摘された。それは高価であること、非常に大判であること(取り回ししづらい)、美術的な品質が低いことである(ジェームズ・ソーンヒルのイラスト、特に水瓶座の表現には批判が多かった)[3]

ジョン・ベヴィスはこれらの批判を踏まえて星図の改良を試み、1745年に『Uranographia Britannica』(大英恒星図表)を作成した。これはより小判で、天体観測による修正を加え、より美術的なイラストが添えられた。しかしこの本が公に出版されたことはなく、現在わずか16部のみが存在を知られている[4]

フォータン・フラムスティード星図

最終的に星の位置に訂正があったため(初版は1690年代の観測に基づいていた)、1770年代に改訂が行なわれた。これはフランス人技術者ニコラス・フォータンによるもので、パリ科学アカデミーに所属する天文学者ピエール・シャルル・ルモニエシャルル・メシエが監修した[3]

この新しい版は『Atlas Fortin-Flamsteed』(フォータン・フラムスティード星図)と呼ばれ、サイズは初版の1/3だが、ページ構成は同じだった。またいくつかのイラスト(特にアンドロメダ座おとめ座みずがめ座)には美術的なレタッチが加えられた[3]

星座の名前は(ラテン語でなく)フランス語で書かれ、フラムスティードの死後に発見されたいくつかの星雲が追加された[3]

1795年には、メイシャンとジェローム・ラランドによる改訂版が出版された。これにはいくつかの星座と多くの星雲が追加された[3]

脚注

  1. ^ a b Davide Neri. “John Flamsteed, Atlas coelestis”. 2011年7月8日閲覧。
  2. ^ a b Linda Hall Library: “Flamsteed, John. Atlas coelestis. London, 1729.”. 2011年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月8日閲覧。
  3. ^ a b c d e f Giangi Caglieris (2002年). “On-line Flamsteed - Fortin Atlas Celeste - 1776”. 2011年7月8日閲覧。
  4. ^ Michael Oates (2007年2月17日). “Atlas Celeste”. 2011年7月10日閲覧。

外部リンク


天球図譜

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ジョン・フラムスティード」の記事における「天球図譜」の解説

フラムスティード版『天球図譜』は、長らく航海測量基礎となった日本でも1943年再版されている。これさえあれば、グリニッジとの経度緯度の差が分かるようになったので、天文測量世界では自然とグリニッジ天文台基準点となったこのためのちに本初子午線決定する際、基準点グリニッジ天文台置かれた。 フラムスティード天球図譜は、恒星につけられる番号が独特である。星座の西の端から1から順に番号をつけるというもので、この方式はフラムスティード名'(またはフラムスティード番号)と呼ばれ現在も使われている。たとえば、オリオン座α星ベテルギウス)は、フラムスティード記号ではオリオン座58番星となる。フラムスティード天球図譜では、星座の形はすべて地球から見える形で描かれた。それまで天球図は、天球外側か見える形で書くのが通常であったフラムスティード観測の際、誤って天王星恒星として観測。この星におうし座34番星と名づけた。このためおうし座34番星は欠番になっている

※この「天球図譜」の解説は、「ジョン・フラムスティード」の解説の一部です。
「天球図譜」を含む「ジョン・フラムスティード」の記事については、「ジョン・フラムスティード」の概要を参照ください。

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