天球儀と星図
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:10 UTC 版)
1532年、フォペルは最初の天文作品となる天球儀を製作した。直径28センチメートル (cm) のこの天球儀にはいわゆる「トレミーの48星座」が描かれており、1515年にアルブレヒト・デューラー、コンラッド・ハインフォーゲル(ドイツ語版)、ヨハネス・スタビウス(英語版)が作成した星図を模倣して、フォペルが手描きした星図が描かれている。フォペルは、ケルンの人文主義印刷家のヨハネス・ゾーター (Johannes Soter) が1534年に出版したヒュギーヌス作の『天文詩 (Poeticon Astronomicon)』のために40枚の木版画を製作した。 1536年、フォペルは手描きの天球儀や木版星図の習作で得た経験を活かして、木版印刷した紙片を球体に貼り付ける方式で天球儀を製作した。フォペルはこの1536年作の天球儀で、中世には忘れられた存在となっていた2つのギリシャ神話に基づく星座を「トレミーの48星座」に加えた。1つは古代エチオペアのベレニケ2世にまつわる神話を元にした「BERENICES CRINIS」で、これはしし座の尾部の隣に設けられた。もう1つはローマ皇帝ハドリアヌスの愛人であった少年アンティノウスをモデルとした「ANTINOVS」で、これはわし座といて座の間に設けられた。フォペルの定めた2つの星座はメルカトルやティコ・ブラーエ、ボーデなどの星図にも描かれた。1922年に国際天文学連合が現代の88星座を定めた際に、アンティノウス座は採用されなかったが、かみのけ座は採用されて現在も使われている。1532年版と1536年版の2つの天球儀は、ケルン市立博物館に収蔵されている。 フォペルは1543年から1545年にかけていくつかの渾天儀を製作している。フォペルの渾天儀は、中心に小型の地球儀が据え付けられていることから「渾天儀型地球儀」とも呼ばれる。コペンハーゲンのデンマーク国立博物館に収蔵されている1543年製渾天儀はティコ・ブラーエが所有していたものとして知られる。また、奈良県の天理大学附属天理図書館には1544年製の渾天儀が収蔵されている。フォペルは1545年にはアストロラーベも製作している。
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