天球としての実体化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 04:08 UTC 版)
アリストテレスは、天体が透明で硬い球(天球)に張り付き、天球の回転によって運ばれるとした。プトレマイオスも、『惑星仮説』の中で、周転円や従円に天球としての実体を与えた。天体は周転円と中心が同じで天体を包む球に、周転円は従円と中心が同じで周転円を包むに、各々張り付いている。そして、各々の球が回転する。 このような実体が与えられたため、現代からみるとほぼ同値である「従円-周転円理論」と「離心円理論」も、物理的にかなり異なる理論だと捉えられた。中世の後半期、この物理的な実体を徹底して突き詰め考える傾向が、イスラム圏でもヨーロッパでも現れ、結果的にはプトレマイオス理論の動揺に繋がった。科学史家スワードローは、コペルニクスが太陽中心説に至る際、「天球は固体なので、天体の軌道に交錯が許されない」という考えは非常に重要な役割を果たした、と推測している。 その一方、やや後のティコ・ブラーエは、彗星の軌道の観測から、この原則が破綻していることを確信し、自らの理論では躊躇なく火星と太陽の天球を交錯させている。この発見を受けて、それ以降の天動説では天球を液体とする説が現れるようになった。 ただし、インドに於いては、円を天球として実体化することはされず、例えば円の半径が回転しながら変化する理論なども考えられた。
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