「離心円理論」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 04:08 UTC 版)
すでに述べたように、離心円は従円-周転円で置き換えられる。逆に、惑星の逆行などを考えれば明らかなように、従円-周転円で作られる運動は、必ずしも離心円に沿った等速回転で表すことは出来ない。一方、プトレマイオスは、離心円の中心を地球を中心に回転させる理論も考え、「離心円理論(離心円の仮説)」とよんだ。これは現代から見れば、単に従円と周転円を入れ替えただけであるから、当然、従円-周転円理論と同じ運動を表現できる。 しかし、従円-周転円理論と「離心円理論」の関係についての『アルマゲスト』の説明は、複数の個所に現れ(III.3,IV.5,IX.5,XII.I)、一貫していない。IV.5では、月の「第一の理論」、すなわち従円ー周転円に基づく理論が「離心円理論」でも表現可能であることを示す。ところが、IX.5では、惑星の速度変化の性質から、惑星理論は従円-周転円理論でなければならないと結論する。さらに、外惑星の留を扱うXIIでは、また一転して「離心円理論」による置き換えが外惑星については可能で、ただし内惑星では不可能だとする。 だが、この問題が注意を引いたのは、ずっと後のことであった。そもそも「離心円理論」は、『アルマゲスト』でも実際の天体の分析では使われず、またプトレマイオスの宇宙論の書『惑星仮説』でも取り上げられていない。そのため、中世においても、「離心円理論」が正面から取り上げられたことは、ほとんどなかった。 この『アルマゲスト』の混乱が指摘・修正されるのは、やっと15世紀のクシュチー(en:Ali Qushji)やレギオモンタヌスになってからであった。コペルニクスがプトレマイオス体系の書き換えを通じて地動説に至る際に、この円の入れ替えが重要な役割を果たしたと推測されている。また、インドにおいては、14-15世紀のケーララ学派のニーラカンタが内惑星と外惑星を統一的に扱う理論を作る際に用いられた。
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