ドップラー冷却
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/17 10:12 UTC 版)
詳細は「ドップラー冷却(英語版)」を参照 原子やイオンは光(電磁波)を吸収すると、光圧という力を光の進行方向へ受ける。ドップラー冷却過程ではこの光圧を利用する。 まず、冷却しようとしている物質は気化しているものとする。また、圧力は充分に低く、原子(イオン)同士の相互作用は無視できるくらい低い確率でしか起こらないものとする。ここで、冷却しようとしている原子の吸収波長よりも、やや長波長側に調節したレーザー光を照射したとする。 通常、原子(イオン)は運動しているため、原子から見た光の波長は、ドップラー効果により変化する。原子から見た進行方向を正面とすると、正面から向かって来る光の波長は原子から見て短くなり、後ろから照射される光の波長は長くなる。これにより、原子と正面衝突する光の波長は吸収波長により近づき、原子を追いかける光の波長は吸収波長から遠ざかることになる。こうして、原子は運動方向と反対向きの光圧を受け、原子(イオン)は減速する。これは三次元空間の各軸について同時に行なうことができ、全ての方向について、原子の運動量を減らす、すなわち冷却することができる。 なおレーザー光を吸収することで原子(イオン)の得たエネルギーは、原子を励起させたのち自然放射によって放出される。この際の放射は全方向にランダムに起こるため、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}その際の光圧は原子の平均速度には寄与しない[疑問点 – ノート]。しかし、原子の温度すなわち運動エネルギーは原子の根二乗平均速度に比例し、これはこの自然放射により増大する。 ドップラー冷却過程で到達できる温度はドップラー効果由来の光圧のアンバランスによる冷却効果と、自然放射による加熱効果のつりあいで決まり、使用する原子(イオン)の吸収線の線幅に比例する。ナトリウム、ルビジウム等のアルカリ金属原子、水素、準安定希ガス原子についてはこの線幅はメガヘルツのオーダーであり、ドップラー冷却限界温度はミリケルビンのオーダーとなる。ストロンチウム等のアルカリ土類原子についてはキロヘルツのオーダーの吸収線が使用可能であり、その場合マイクロケルビンのオーダーとなる。
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