インジェクションキット(射出成形キット)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 19:32 UTC 版)
「プラモデル」の記事における「インジェクションキット(射出成形キット)」の解説
金型の中に熱で溶けたプラスチックを高圧で流し込んで成形されたキット。大量生産に向き、パーツの精度も高い。製造には精密な金型と、大掛かりな射出成形の設備が必要となるためにイニシャルコストが高いのが難点。製法上、パーツに金型の合わせ目であるパーティングラインが生じる欠点もある。樹脂の通り道であるランナーがあるのが射出成形品の特徴である。ランナーと部品を結ぶゲートはピンゲートにすることで小さくなるが、樹脂の通り道が小さくなるため、生産性が犠牲となる。金型は定期的に整備を続ければ長持ちし、事実40年以上生産され続けているキットもある。一般的なインジェクションキットの他、樹脂や電鋳や軽合金による簡易金型による「簡易インジェクションキット」という物もあり、これは型の寿命が短い代わりにコストを下げることができるため、マニア向けの少数生産キット製造の手段として用いられることが多い。通常のインジェクションキットより部品の精度が劣る物が多いが、MPMのような一部のチェコ製合金型のものは通常のインジェクションキットに迫る出来の物もある。
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インジェクションキット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 23:20 UTC 版)
「ガレージキット」の記事における「インジェクションキット」の解説
射出成形による通常のプラモデルであり、本来ガレージキットに含まれる性質のものではないが、開発の経緯がガレージキットに類似する、インジェクションガレージキットと呼ぶべきものも存在する。特に日本では金型の製造コストが比較的低かったこともあって例が多い。その代表的なものがマニアホビーが1970年頃に製作した1/72スケールの九七式戦闘機である。当時陸軍の一式戦闘機から五式戦闘機までは1/72のプラモデルが存在し、海軍機では九六式艦上戦闘機までモデル化されていたのに対し、日中戦争で活躍した九七式戦闘機は1/72のキットが存在しなかった。そこで、メーカーが作らないのであれば自分たちで作ろうと言う、ガレージキット的発想で模型マニア数名が立ち上げたのがマニアホビーである。作られたキットは当時の最新の考証を取り入れた上質のインジェクションキットで、表面にヒケを生じさせないためにあえて位置決め用のピンを設けないなど、マニアならでの工夫も取り入れられていた。さらに、初版の製品は一般の模型店のルートを通さず通信販売のみとし、ダンボール製の質素な箱に入れて販売すると言う、ガレージキット的方法がとられた。このキットは模型ファンの人気を呼びマニアホビーはその後模型メーカーとしての道を進むことになる。九七式戦闘機も再発売分からは通常のパッケージに入れられ、模型店ルートで販売された。マニアホビーは10年足らずの間に10点ほどのキットを発売した後解散し、プラモデルの金型はハセガワに売却された。このような、メーカーの作らないキットを自分で作ると言う発想で作られたキットには、他にも模型店のホビースポットUが開発したX-1やXF5U、モーブのP-40、スウィートのマッキ MC.200などがある。キャラクター系でも、実現はしなかったものの、ハセガワがマクロスのモデル化を行う以前に、個人レベルでCADを利用してVF-1 バルキリーのインジェクションキットを作る計画があった。 別のタイプとしては絶版キットの復刻がある。1980年代、日本ではマルサン製の怪獣キット、アメリカではオーロラ製のモンスターキットのレジンキャスト製の複製が作られ、一部が流通していたが、1990年代末にアメリカのポーラーライツはインジェクションキットでそれを行った。ポーラーライツは金型の現存する旧オーロラ製キットの再生産も行っているが、金型の現存しないものについては、オリジナルのキットを電鋳等で型取りして新たに簡易金型を作成し、販売を行った。これはマニアの行為とほぼ同じであるが、インジェクションキットのため安価な点と、版権所有者の正規の許諾を受けていた点が異なっている。ポーラーライツの活動が低調になった後、アメリカのメビウスも同様に旧オーロラ製キットの復刻を行っている。 既存キットの改造やディテールアップ用のパーツにはインジェクション成形されたものも多い。その代表的な例が1980年代半ばにモデルカステンが初めて発売した連結式キャタピラである。当時の1/35クラスの戦車のキャタピラは軟質樹脂のベルト状のものが普通で、形状的に正確なものは少なかった。そのため、一部のモデラーは予備キャタピラのインジェクション部品を集めてキャタピラを再現しており、それをヒントに本製品は開発された。キャタピラ1枚ずつの連結式と言う構成は、金型を小さくし製作コストを下げる意味合いもあった。発売当初は知名度も低く、戦車本体よりはるかに高価なキャタピラのみのキットというこれまでになかった商品はなかなか理解されなかったが、グンゼ産業(現・GSIクレオス)の発売したこれもガレージキット的な意味合いの強かった、マルチマテリアルキットの「ハイテックシリーズ」に同梱されて以降、知名度も上がり、次第に普及していった。現在では連結式キャタピラのみならず、ファインモールドのナノ・ドレッドシリーズなどインジェクション成形のディテールアップ用パーツは大小の多くのメーカーから発売されている。 また、近年の3D-CAD/CAM の低価格化により、イベントのアマチュアディーラーの中にも、架空機の1/144キットを販売している青空モデルのように、少数ではあるが自ら製作したオリジナルのインジェクションキットやパーツを供給する者がいる。
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