簡易インジェクションキット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 23:20 UTC 版)
「ガレージキット」の記事における「簡易インジェクションキット」の解説
簡易インジェクションキットは、通常の射出成形で使用される金型の代わりに、樹脂または軽合金等の簡易金型を使用し、ポリスチレンを低圧で射出して作られる。樹脂型は、原型師の作成した原型を金属粉などを混入することにより耐熱性と強度を高めた樹脂で直接型取りして作られる。表面のモールド等は原型に施されたものがそのまま反映されるが、型取りの際に形状にゆがみが生じる場合もある。型の寿命も短い。簡易金型は、電鋳技術を用いて原型を型取りして作られる。表面のモールド等がそのまま反映される点は樹脂型と同じであるが、型取り時の変形は少なく、型の寿命も樹脂型より長い。反面、製造コストも高くなる。成形品には組み立て用のガイド等は設けられていない場合が多いが、材質はプラモデルと同じであるので、ほぼ同じ手順で組み立て、塗装を行うことが出来る。ただし、樹脂型では透明度の高い部品の成形や、細かいディールの再現が難しいため、航空機のキャノピー用に透明な塩ビ板やプラスチック板をバキュームフォーム成形した物が入っていたり、ディテールアップ用にレジンキャストやエッチング製の部品が入っている場合もある。 簡易インジェクションキットは、1980年代にアメリカやイギリスなどで樹脂型による航空機のキットが作られ始めた。プラモデル化されていない機体のフルキット以外に、既存キットを他のタイプに改造するためのキットも発売された。一部のキットにはプロペラや脚柱用にホワイトメタル製の部品がセットされていた。これらの初期のキットは、形状、細部の表現ともに大まかに作られており、ビニール袋または簡素なパッケージに入れて販売されていた。1990年代に入ると、チェコのMPMを始めとする旧ソビエト、東欧圏のメーカーが活動を開始する。これらの新しいメーカーの製品の多くは、表面に繊細なモールドが施され、樹脂型特有の組みにくさはあるものの、外形もほぼ正確に作られていた。また、パッケージなども通常のインジェクションキットと同等のものが使用されていた。さらに、1990年代後半以降に導入された軽合金型を使用した製品は、通常のインジェクションキットと遜色の無いものとなっている。日本ではインジェクションキット志向が強かったため、簡易インジェクションキットは少なく、スケールモデルではグリフォンが1990年前後に発売したSu-22がほぼ唯一の例である。キャラクターモデルでは1990年代半ばにバンダイが発売したLM(リミテッドモデル)シリーズが原型を直接型取りした簡易金型を使用していたほか、ガレージキットメーカーがプラモデルに参入する際に同様の簡易金型を使用することもあった。またツクダホビーが1980年代半ばに発売していたジャンボフィギュアは、商品の形態は簡易インジェクションキットに近いが、材質にポリスチレンではなくポリ塩化ビニルの一種を使用していた。
※この「簡易インジェクションキット」の解説は、「ガレージキット」の解説の一部です。
「簡易インジェクションキット」を含む「ガレージキット」の記事については、「ガレージキット」の概要を参照ください。
- 簡易インジェクションキットのページへのリンク