ダムの水質保全とは? わかりやすく解説

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ダムの水質保全 (だむのすいしつほぜん)

 近年ダムの水質保全が重視されています。
 ダムは、都市用水かんがい用水などを生み出してます。また、ダムからの放流水は、下流河川の水質大きく影響与えます貯水池放流水水質は、これらの用水利用下流河川環境保全支障のないものでなければなりません。さらに、ダム湖自体が、動植物生息の場、レクリーエーションの場などとして、良好な環境保持する必要があります

●ダム貯水池水質現象

冷水・温水現象

 貯水池内の表層水は、春から秋にかけて、太陽輻射などにより暖められ温かい水の層が形成されることがあります。そして、水温成層呼ばれる直方向の層が形成され暖かい流入表層流れ込み下層は冷たいままで維持されます。このような現象冷水・温水現象呼びます
 このような現象起きると、ダムの放流口が中・低層にあると放流水水温低くなり、下流河川生物農業などに悪影響生じることがあり、逆に表層水取水している場合には、放流水流入よりも高温となることがあります

濁水長期化現象

 洪水などの時に周辺土壌洗い流した河川流れ込んで河川濁度の高い状態になることがありますが、これを濁水呼びます
 ダムのない河川場合濁水そのまま河川流下し、洪水終われば元の状態に戻る一過性ののであるのが一般的です。しかし、貯水池があると、そこに濁水貯留され、洪水徐々に放水されるため、下流河川濁り長期化する現象生じることがあります。これを、濁水長期化現象いいます濁水長期化現象を防ぐため、選択取水設備利用されることがあります

富栄養化

 生物成育・生活をするために外から取り込む必要のある塩類栄養塩類いいます植物では土中などに溶けている栄養塩類が体の表面や根などから、動物では主に餌に含まれ体内取り込まれます。
 湖沼などについて、水中栄養塩類豊富になることを富栄養化いいます富栄養化進行すると、そのほか条件相まって水中プランクトン増殖し水質汚濁の原因となります富栄養化問題となる代表的な栄養塩類としては、窒素(N)リン(P)あります

水質保全対策

 ダムの水質現象に応じて様々な対策取られます。(→日本のダム:水質保全

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 冷水温水対策としては、選択取水設備設置一般的です。

選択取水

 ダム湖表層中層下層温度濁度などが異なります必要に応じて取水する高さを変え深さにより異な性質目的に応じて取ることを選択取水といい、下流冷水対策濁水対策などとして利用されます。例えば、農業用水ならば温かい水の方が作物育成によいので、太陽の熱で暖まった表面近く取水ます。選択取水のために選択取水設備設けられますが、最近では大規模なものも出てきています。(→日本のダム:選択取水設備

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 濁水長期化対策としては、選択取水設備設置一般的です。さらに、濁水バイパス清水バイパス整備する方法あります

濁水バイパス

 濁水長期化対策一つで、洪水時に濁水をダム下流直接流し、濁質の貯水池への流入抑制するために整備されるバイパス水路です。奈良県旭ダムでは排砂バイパス設置されていますが、これは濁水バイパス役割兼ね備えており、濁水バイパス先駆的事例といわれています。(→日本のダム:旭

清水バイパス

 貯水池から濁水流れ出るのを抑制するため、選択取水設備により濁度の低い放流するようにしますが、貯水池濁度大き場合にはこの方法のみでは不十分なことがありますこのようなときに、貯水池の上流で、流入する濁り少な取水して、貯水池迂回するバイパス水路経由して直接ダムの下流放流することが有効です。このバイパス水路清水バイパスいいます。(→日本のダム:阿木川

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 富栄養化対策は、流域対策流入河川対策貯水池対策分類できます
 流域対策は、流域内の生活系、畜産系、農業系などの汚濁源を対象にして、流出低減を図るもので、下水道整備畜産廃水処理設備整備などです。
 流入河川対策は、ダム貯水池への流入含まれる栄養塩類低減するためのもので、前貯水池による有機性懸濁物質沈殿除去水生植物による浄化、礫間浄化などです。また、バイパス水路により貯水池下流流入直接放流する流路転換対策あります
 貯水池対策としては、曝気による対策代表的です。

曝気

 水の中空気吹き込んで溶けている酸素の量の増加を図ることをいい、水質の改善のために行われます。そのために用いられる装置には二つタイプあります
低層曝気装置
 貯水池深水層で酸素不足すると、低質からマンガン硫化水素栄養塩類などが流出し赤水黒水現象発生したり、富栄養化による汚濁原因になったりします。これを防ぐため、深水層に空気供給する装置低層曝気装置です。
曝気式循環装置
 貯水池は、夏期などの温かい時期には、表層温かい滞留して層を形成し、深い部分には冷たい水深水層ができます。これらの中間は、温度などが急激に変化する部分で、躍層呼ばれます曝気式循環装置は、この躍層曝気により水の流動起こし循環混合層を形成するための装置で、これにより表層集積しやすい植物プランクトンを光の届かない下層拡散し植物プランクトン増殖集積抑制します浅層曝気装置とも呼ばれます
(→日本のダム:水質保全

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 以上の他に、最近調査研究されている対策として、人口浮島設置生物的浄化貯水池水位低下干し上げによる水質浄化などがあります
 人口浮島設置は、人口浮体植物植えた構造物貯水池浮かべるもので、景観改善などとともに水質の改善期待されています。
 生物的浄化は、ヨシマコモホテイアオイなどの植物植え刈り取るなどによって、栄養塩類低減図ろうとするものです。
 貯水池水位低下干し上げによる水質浄化は、日本では古くから農業用溜池行われてきており、最近では、渡瀬貯水池藻類発生によるカビ対策として行われた事例あります



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