庄内の米作り用具とは何？わかりやすく解説 Weblio辞書

庄内の米作り用具

名称：	庄内の米作り用具
ふりがな：	しょうないのこめづくりようぐ
種別：	生産、生業に用いられるもの
員数：	1,800点
指定年月日：	1990.03.29(平成2.03.29)
所有者：	財団法人致道博物館
所有者住所：	山形県鶴岡市家中新町
管理団体名：
備考：	苗代作り 189点,本田作り 157点,田植え 104点,管理 206点,収穫調整 294点,運搬 156点,役牛馬131点,藁仕事 157点,仕事着 277点,飲食 33点,神体・護符類36点,その他60点
解説文：	致道博物館は、昭和二十五年の開館以来、庄内地方の生活用具類を体系的に収集整理し、社会公共のために供している。この度の「庄内の米作り用具」一式も、こうした博物館の長期にわたる活動の成果が結実したものである。　庄内は、早くから東北地方の米どころとして知られてきた。寒冷なヤマセ（偏東風）に影響されることが少なく、最上川・赤【あか】川を主流とする大小河川を通して豊かな灌漑用水に恵まれるなどの自然条件を基盤に、近世初頭以降、営々と積み重ねてきた灌漑溝の開鑿【かいさく】と稲の優良品種を生み出す努力をはじめ、明治二十年代からはじまる湿田の乾田化、馬耕の導入を契機に取り入れた通し苗代の改善、籾種の塩水選、多肥栽培、正条植え、中耕除草など、各面における農業技術の改良が行われた。　今回の収集は、古くからの様式を継承する米作り用具に加え、こうした農業技術の改良の軌跡を裏付ける用具を農作業の順序に従って、体系的に整理したものである。苗代作り用具、本田作り用具、田植え用具、管理用具、収穫調整用具など、米作りの実際に使ってきた農具をはじめ、農作業に関係する一連の運搬用具、役牛馬用具、稲藁の利用に関わる藁仕事用具、仕事着、飲食用具、豊作を祈念する神体・護符類などを収集している。　この米作り用具には、多くの地域的特色が見られる。第一に、苗代作りや本田作り用具として、備中鍬【びつちゆうぐわ】・平鍬【ひらぐわ】・代下駄【しろげた】、ナンバ下駄などとともに、株切り・犂【すき】・馬鍬【まぐわ】などを数多く含むことである。犂には畝立て耕起用の抱持立式のもののほか平打ち用で短床式の様々なものが見られ、馬鍬には荒掻き用やならし用のものが数多く収集されている。第二に、田植え用具として、苗舟・苗籠のほかに、正条植えに用いたスジツケ（筋付け）・ナワマキワク（縄巻き枠）・カタツケワク（形付け枠）を含んでいることである。とくにカタツケワクは回転させて縦横の線を引きやすく工夫したものが多く、長さ三メートル余におよぶ大型のものも含まれている。第三に、管理用具として、ガンヅメ（雁爪）と、それに代わって正条植えに伴って普及した各種の中耕除草機を含んでいることである。第四に、収穫調整用具として、センバ（千把扱【せんばこき】）・チリタテトンボ（塵飛ばし用具）・唐箕【とうみ】・土臼・ユスリ（選別用具）などに依存していたヒケシ（脱穀調整）作業の改善過程を示す回転脱穀機などを含んでいることである。　米作り作業に関連する用具には肥曳き用の橇【そり】やヤセウマ（背負い梯子）・バンドリ（背中当て）などを網羅する運搬用具、農作業の実際で使われた被り物などがあり、それらは地域的特色の顕著なものである。また、田の神おろしの日や田の神あげの行事に掛けられる「田の神様」、種子籾俵にさしておくゴハン（牛王宝印【ごおうほういん】）など、米作りに打ち込んできた人々の信仰の一面を語る資料として注目される。　当該致道博物館の所有する庄内の米作り用具は、量・質ともに他に類例がなく、この地方に営まれてきた米作りの実態と変遷推移を知る上で貴重であるばかりでなく、わが国の各地で展開されてきた米作りをめぐる習俗を知るための比較資料としても重要である。　よって重要有形民俗文化財に指定し、その保存を図ろうとするものである。