姉弟
『古事記』上巻 弟スサノヲは、姉アマテラスが耕作する田の畦を壊し溝を埋め、また、忌機屋(いみはたや)の屋根から馬を落とし入れて機織女を殺す、などのことをした。アマテラスは恐れて天の岩屋戸にこもったので、八百万の神はスサノヲを罰し、高天原から下界へ追放する。出雲国に降りたスサノヲは、ヤマタノヲロチを退治し、その尾から見出した剣(=草薙の太刀)をアマテラスに献上した。
★1b.姉が自らの青春を犠牲にしてでも、弟の夢を叶えてやろうとする。
『巨人の星』(梶原一騎/川崎のぼる) 貧乏長屋で育った星飛雄馬は、父・一徹から野球の特訓を受けていた。母はすでに亡く、姉・明子が家計のやりくりをして、飛雄馬を応援する。巨人軍入団後の飛雄馬が父・一徹と対立した時、明子は飛雄馬のマンションに同居して彼を支える。しかし、「飛雄馬が野球の鬼になりきるためには、彼を1人にする方が良い」と考えて、明子は姿を消す。弟を思う心に変わりはなく、「精神力を発達させるのは心の悲しみである」との言葉を記したハガキを送って、飛雄馬を励ますこともあった〔*巨人軍の川上監督は、明子を「美しくきよらかで万事ひかえめな、日本女性のかがみ」と評した〕。
『姉は蛇』(昔話) 米屋の子供である姉と弟がいた。姉は米を量る仕事をしていたが、いつも桝目をごまかしていたため、蛇になってしまった。夜、姉は布団から抜け出し、大蛇に変身して池の中へ入るのだ。弟がそのことを父に教えるが、父は信ぜず、弟を家から追放する。弟は旅をして、熊や鷲を家来にし、長者の娘婿になる。何年かして弟が家に帰ると、両親も近所の人も死に絶え、姉だけがいた。姉は大蛇の正体をあらわして、弟を襲う。熊が大蛇の尾をくわえ、鷲が大蛇の両眼をくじり取って、弟を助ける(長崎県壱岐郡郷ノ浦町)。
★2b.羊になった弟が姉を救う。
『姉アリョーヌシカと弟イワーヌシカ』(ロシアの民話) みなしごの姉アリョーヌシカと弟イワーヌシカが野原を歩く。水が入った羊のひづめを見つけ、イワーヌシカはその水を飲んで子羊になってしまう。アリョーヌシカは、通りかかった貴族に見そめられて、彼の妻になる。魔女がアリョーヌシカの首に石をくくりつけて水へ投げ込み、自分がアリョーヌシカになり代わる。子羊(=弟)が水辺で泣き、貴族はアリョーヌシカを助け出す。子羊はイワーヌシカの姿に戻り、皆幸せに暮らす。魔女は罰せられる。
『さんせう太夫』(説経) さんせう太夫の館で、姉安寿は浜の潮汲み、弟つし王(厨子王)は山の柴刈り、という重労働を課せられる。安寿が「弟と一緒に仕事をしたい」と請い、さんせう太夫は「2人とも山へ行け」と命ずる。安寿は山道で、つし王に「逃げよ」と命じ、1人で館へ帰って「弟は道に迷ったらしい」と言う。さんせう太夫は安寿を拷問にかけ、殺してしまう〔*『山椒大夫』(森鴎外)では、安寿は厨子王を見送った後、館へは帰らず、沼に入水する〕。
*つし王は沓を前後逆にはいて逃げた、という伝説がある→〔靴(履・沓・鞋)〕6の『奇談異聞辞典』(柴田宵曲)「逆沓(さかぐつ)」。
『ローエングリン』(ワーグナー)第1幕 ブラバント公国の領主没後のある日。公女エルザは弟ゴットフリートを連れて森を散策中に、弟とはぐれてしまい、1人で城へ帰って来た。魔女オルトルートが、ゴットフリートを白鳥に変えてしまったのである(*→〔変身〕1a)。オルトルートの夫であるテルラムント伯爵が、「エルザは国を自分のものにするために森で弟を殺した」と言い、エルザを弟殺しの罪で告発する→〔夢で見た人〕1。
『継子と鳥』(昔話) 姉と弟がいた。木挽きの父が出稼ぎで留守の時、継母が、煮え湯の釜に麻幹(おがら)の橋を架けて、「この上を渡れ」と姉弟に命じる。姉弟が橋を渡ると麻幹は折れて、2人は煮え湯の中へ落ちて死んでしまう。継母は姉弟の死体を埋め、そこに竹を立てる。父が帰って来て、子供たちがいないことを不審に思っていると、2羽の雀が竹に止まって「父さん恋しや、チンチクチンチク」と鳴く。父は姉弟の死体を見つけ、継母を木挽き鋸でひき殺す(岡山県真庭郡八束村花園)。
『八足(別名『姉の八足』)』(落語) 無学な男が本家の旦那の家へ行っていると、子供が迎えに来た。旦那が「お前の子息か?」と聞くので、男は「四足だなんて、よくも畜生にたとえたな」と怒る。旦那は「子息とはむすこのことだ」と説明して、「子息はこの子1人かい?」。男「はい。姉の八足は、まだ学校から帰りません」。
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