『記紀』の歴史意識と「欠史」とは? わかりやすく解説

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『記紀』の歴史意識と「欠史」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 15:49 UTC 版)

欠史八代」の記事における「『記紀』の歴史意識と「欠史」」の解説

欠史八代が「欠史」として括られるのは既に述べた通り、『記紀』が記録している情報が『帝紀』的な系譜および陵墓情報のみで『旧辞』的な物語歴史的事件叙述欠いていることによる具体的に記紀』が欠史八代について伝え内容は「天皇名・出自系譜先帝埋葬と陵・即位年月日宮都立后后妃皇子女所生子の後裔氏族立太子・崩年」等に限られ個々天皇治世中に何をしたのか、ということについての情報は無い。しかし近年では、これを「欠史」と見る視点物語要素を「歴史」として捉えてきた近現代の歴史学のものであるという指摘がある。『記紀』は史書として編纂されているにも関わらず史を欠いているとすればそれは何を記録しているのか、ということ問題となる。事実として『古事記』場合記載対象とする神武天皇から推古天皇までの33代の天皇のうち、物語要素欠き系譜情報のみしか記されていない天皇中巻下巻合わせて20名にも上り欠史八代限らず過半数天皇は『旧辞』的な記録存在しない。このことから、物語要素が無いことをもって「欠史」としてしまうならば『古事記』事実上史書の体をなしていないことになる。同様の指摘『日本書紀』欠史八代記録について存在する。このことは逆に、『記紀』の編纂者たちの意識においては天皇系譜に関する情報完備していれば物語要素無くともそれは「歴史であったことを意味する原初的歴史系図によってまとめられるとも言われ古代日本にあっては天皇大王)の代替わり人々にとって過去の出来事が「いつ」起こったことであるのか、を考え時間軸であった。このことを示すのが『風土記』における天皇への言及である。「志木島宮御宇天皇欽明天皇)の御代」といった表現見られるように、どの天皇の代の出来事であるかが、その出来事がいつの出来事であるか、という時間認識と結びついていた。このように天皇基づいて時間認識が行われていた時代出来事具体的な日時指定とは別に系譜はそれ自体歴史であった考えられる。この意味において、『記紀』に見られる欠史八代」の記録基本的に皇統譜完備しており、実際編纂者認識として史を欠いてなどはおらず、「欠史」という表現はあくまで近現代の「歴史意識強く反映したものと言える。 『記紀』の欠史八代どのように理解するかは古代日本王権氏族家族といった社会関係どのように理解するということと密接にかかわっている。現代において欠史八代、あるいはその系譜後世造作されたものであることは一般的な見解となっているが、それが今日見られるになった理由を単に皇室直系継承示しその歴史古く見せるためと理解するのでは不十分である。欠史八代始めとした古代日本王統譜は元来確固として固定されておらず、天皇家各氏族の間に擬制的な親族関係構築する中で、現実政治的状況同盟敵対の関係を反映しつつ翻案接合繰り返してきたものと考えられる。これが如何に構築されてきたかということについては、ヤマト王権がまず王統譜を構築し、これと同祖構造を持つ系譜氏族下賜する制度持ったことで構築されていったとする考え方や、各氏族ごとに構築され擬制親族関係がまずあり、その多元的な権力関係超越した権力構造構築される伴ってそれぞれの内部における「語り」を統合する過程数次にわたる組み換え加上なされてたとする考え方がある。いずれにせよこうした日本王統譜、氏族系譜形成統合幾度にもわたる接合改変経て7世紀後半から8世紀にかけての『日本書紀』『古事記』編纂とともに確定し、これが受け入れられていく中で共有される過去として「史実となって行った

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