「下」の付く敬称
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 17:05 UTC 版)
身分の低い者が王族、皇族など極めて高い地位の者に直接話しかけることは失礼に当たるとされたことから、高貴な人のいる一定の場所のそばにいる取次ぎの人に間接的に呼びかけることで敬意を表す敬称が発生した。本来の正格漢文の用法では、二人称であって三人称として使うことはありえず、特定の地位を表わす言葉や称号の下につけることもなく「○下」の二文字だけの単独で用いる言葉であって、皇帝陛下・関白殿下・将軍閣下のような用法は三人称にも転用するようになってから生じた変則的なもの(端的にいえば誤り)である。 陛下(へいか) 字義は「階段の下」。 天皇、皇帝、皇后、王の敬称。該当項参照。 日本では天皇のみの敬称だったが、皇室典範制定後、后位(皇后・太皇太后・皇太后)の敬称としても採用された。 殿下(でんか) 字義は「宮殿・殿堂の下」。 皇太子以下皇族王族や皇帝に臣従する国王に対する敬称。該当項参照。訳語としては、欧州大陸の貴族やその親族に対する敬称としても用いられる。日本では本来、天皇以外の皇族(皇后など)と三公以上の公卿に対して用いられる言葉であった。 邸下(ていか) 閤下(こうか)/閣下(かっか) 字義は「高殿の下」。 身分や地位の高い人を敬って、その役職名の下に付けていう敬称。 貴族、大統領や首相、大使などの高位の官職、軍の高官などに用いられ、またはそれ自体が独立した呼称として用いられる(例:大統領閣下、参謀総長閣下)。 もともと勅任官(府県知事・省庁次官局長等)以上の者に用いた。現在では主に外交儀礼として大臣や(他国の)将軍などの官名・職名につけられる。また、訳語としては、イギリスなどの貴族の爵位に付して用いることがある。閣下の敬称をつける際に、相手が博士の学位を有している場合は、官名、名前の下に博士閣下と呼称することもある(例:〜大統領●●博士閣下)。 軍では公式の規定だと将官までが「閣下」で佐官から「殿」だが、公式の場ではない一般ではその規定にこだわらず下士官を「閣下」とよんでも差し支えない。 猊下(げいか) 字義は「猊座(仏ないし高僧の座る座)の下」。 猊とは獅子(Lion)の別表記である。仏陀の説法を師子吼(ししく。師子は獅子に同じ)、説法の座を師子座という。また狻猊(さんげい)は龍の子(竜生九子)の内の獅子に似た一匹で、煙を好むため寺院の香炉の装飾の意匠にされ、転じて獅子座を「狻座」「猊座」とも言う。 すなわち、猊下とは「師子座の下(=の側近の方)にまで申し上げます」の義。狻下(さんか)。 首座の聖職者の敬称。 主としてダライ・ラマ法王などの一宗派の最高権威者に対して用いられる。またはそれ自体が独立した呼称として用いられる(例:法王猊下、不老閣猊下)。 キリスト教では教皇・総主教など、仏教では教主、門主、門跡、管長などに対して用いる(例えばダライ・ラマ猊下、浄土門主猊下。ローマ教皇の場合には聖下を使う場合がある。このときは「His Holiness」が対応する)。日本では日蓮正宗のみが例外的に「上人猊下」の呼称を用いる。 臺下/台下(だいか) 字義は「高楼の下」。 高位の聖職者その他の貴人の敬称。 仏教では、宗派によって宗派の代表者に用いる場合もあれば、各大本山(支部)クラスの住職(大僧正、権大教正)に対して用いる場合もある。キリスト教では枢機卿・主教・大司教に用いる。日本政府はローマ教皇に対して用いている。 座下(ざか) 字義は「座席の下」。 正教会における、総主教以外の主教(府主教・大主教・主教)に対する敬称。 聖下(せいか) 正教会の総主教、カトリック教会の教皇に対して用いる訳語。他の「○下」を真似て作られた言葉で漢文の伝統を踏まえていない新造語。英語の"His Holiness"に対応。ただし、英語ではHis Holinessであっても、ダライ・ラマ法王は猊下とされ、ローマ教皇は猊下や台下とされることがある。日本政府は、モスクワ総主教について聖下を用いたことがあるが、教皇に対しては台下を使用している。 キリスト教における最高位の聖職者に対する敬称。 机下(きか) 字義は「机の下」。 医師や弁護士など、俗に先生と呼ばれるような社会的立場にある/資格を有する者に対する敬称。通常は書き言葉の書面上(手紙など)で用いる。 貴下(きか) 同輩以下の者(主に男性)に対する敬称。通常は書き言葉の書面上(手紙など)で用いる。
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