転調
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転調(てんちょう)とは曲中で調を全く違う調に移しかえることである。
古典派音楽の時代には、近親調(属調、下属調、平行調、属調平行調、下属調平行調、同主調)への転調が主であったが、ロマン派音楽の時代には、複雑で大胆かつ頻繁な転調が多くなり、それぞれの調を認識することが次第に困難になっていったことが、現代音楽に至って調性が崩壊する一因ともなった。
転調の方法
転調のためには、新しい調への移行と、新しい調の確立が必要である。
新しい調への移行には、古くは前後の調に共通の和音を用い、新しい調でその和音を読み替える、ということが行われた。例えば、ハ長調からト長調への移調では、ハ長調のVの和音はト長調のIの和音であるから、ハ長調のVを鳴らして、それをト長調のIと読み替える。次に、第1の調の和音の構成音のひとつと、第2の和音の構成音のひとつが、増1度関係にあるような和音を続けて鳴らす、ということが行われた。たとえば、ハ長調のIV度(ヘ=Fを持つ)の次にト長調のVII(嬰へ=F♯を持つ)を並べる。しかし、時代をくだるに従って、これらを省略して、新しい調のV7の和音に直接はいるという方法もとられるようになっていった。
新しい調の確立には、最低限、前の調で使われない音が必要である(この音を特徴音という)。たとえばハ長調からト長調への移調では、ハ長調では用いられないがト長調で用いられる嬰へ(Fシャープ)の音である。前述の新しい調のV7の和音に直接はいる方法を用いれば、同主調からの転調でなければ、必ず前の調に含まれない音がひとつは含まれるので(同主調は、V7が同じである)、それだけで十分である。同主調からの転調では、Iの和音に前の調にない音が含まれる。このように、V7ないしIを鳴らすことで、転調は成立するのである。しかし、より丁寧には、新しい調でT-S-D-T(I-IV-V-Iなど)のカデンツを行うことが求められる。これは、第2の調の和音とされる和音が、第1の調に第2の調の和音のひとつを一時的に借用しただけのもの、または第1の調の和音に一時的に♯や♭を付けたらたまたま第2の調の和音のひとつと一致したというだけのもの(いずれも借用和音と呼ばれる)、という印象を与えないためには重要である。
邦楽の転調
近世以降の邦楽では、転調が頻繁に行なわれる。地歌などの三味線音楽では、属調、下属調への転調が非常に多いが、まれに特殊な転調も使われている。また、長唄や義太夫節では、同主調への転調も見られる。箏曲にも幕末以降それらに加え、平行調、同主調への転調も見られる。また曲中における大規模な転調の場合には、楽器の調弦を変えて対応することが多く、大曲では二回以上調弦変えをすることが普通である。
転調の傾向
日本のポピュラー音楽で見られる転調は、以下の方法を採る傾向が多い。
- キーを1個(=半音分)上げるもの(例:イ長調→変ロ長調)
- キーを2個(=半音2個分)上げるもの(例:ハ短調→ニ短調)
- 同主調同士で移るもの(例:嬰ヘ短調→嬰ヘ長調)
- 短3度(半音3個分)ずらして移るもの(例:ハ長調⇔変ホ長調)
- 平行調同士と同主調同士の移動を併用するもの(例:ト長調→ホ短調→ホ長調。ホ短調→嬰ハ短調→ホ長調)
関連項目
転調
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 09:41 UTC 版)
手癖ともいえる程に転調を多用するようになったきっかけは、TM NETWORKの1stアルバム「RAINBOW RAINBOW」のレコーディングの時、ソフトのバグでシーケンサーに誤動作が生じた。その勝手に音調が変化し転調してしまった音源を聞き、小室が「意外と気持ちいい」と感じたことがきっかけとなり、以後の制作活動でそのフレーズが定着した。ちなみにこの時の現象を小室は「筒美京平さん・都倉俊一さんが作るような『歌謡曲的な転調』『キーが変わると、世界観は変わるが、歌の音域が変わらない』作り方が分かった」「これらの転調は適当ではなく理論的に説明が付く」と話している。反面、発見したその後も意識的に挿入していたわけではなく、むしろ「曲作りで行き詰ったときに使う逃げ」「2曲を1曲にまとめるときに役立つけど、先に転調すること前提で考えずに最後の手段としている」「コンピューターの誤作動による偶然の産物であり、中々思うように表現できなかった」「サンプラーが今のようにタイムストレッチができなくてそのままの音でキーを変えられなかった。そのサンプラーの音を使いたいがために機械的に転調させていた。逆のパターンもあって転調した後にそれまで使っていたサンプラーのボイスが無くなっていてボイスのキーと合わせられなくなった」と必ずしも好意的に捉えてはおらず、その後も如何に自由自在に使いこなすかの試行錯誤に腐心していた。 自らの行う転調のやり方について、「これだけ多くの音楽が氾濫している中で、曲にどうインパクトを持たせて、『もう一度聴きたい』と思わせるかという所で転調を理論的に取り入れている」「コーラスのリフレインは4~8回はやるでしょ。そのときに転調して一瞬緊張感を持たせる」「どこでキーが変わっているのか・どこがサビでどこがブリッジなのかを分からないようにする」「声が張るピーク・一番伸びる部分をサビに持っていくため。サビに合わせるとほかのパートが低くなりすぎるため、仕方なく4度転調とか、そういう変な転調を無理やり入れる」「周囲からは『サビでいきなり転調するよね』って言われがちだが、サビが先にあって、その前のBメロで転調しておく」「KCO・安室さん・華原さんは声が出るから転調無しの構成でも大丈夫だった」「お互いのキーの共通コードをつないで転調する。そうすると突然転調した感じが薄れ、スムーズな感じになる」「王道としては、サビの繰り返しで半音キーを上げて高揚感を出す。共通のコードは無いけどメロディを繰り返すことで頭にそのメロディが残る」「ブリッジで転調しておくと、その後自分の演奏テクニックを披露する等やりたいことが自由にできる展開になる」と話している。 小室の思う転調は一時的に少し調が変わって、落ち着こうとする前にすぐ元の調に戻る「経過的転調」と転調してしばらくはそのキーのままで演奏される「確定的転調」に分かれている。前者は「一瞬ハ長調からヘ長調に移って、すぐハ長調に戻るもの。ロックではもう当たり前。突き詰めると段々下がるだけのパターンもそれ」と語っている。後者は「イントロ・サビ等のパートの区別がはっきりできる。インパクトをつけて、急に華やかになったり、暗くなったりと色々変化をつけれる」「曲の後半辺りでリフレインに飽きてきた頃に転調すると、同じリフレインでも再び緊張感を持たせられる」「ボーカリストに合わせてメロディーを無理に変えたり、曲全体のキーを低くしなくても、元来のメロディーラインを残せる」「間奏でソロが弾きやすいキーに変更すると、それがまた曲をスリリングにできる」と語り、その思想を基に突拍子も無い調にずらした曲をたくさん作っている。 コード進行では「F-G-Em-Am」、「Am-F-G-C / 6451」(例:TM NETWORK「Get Wild」「RESISTANCE」「humansystem」、H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」、trf「masquerade」、globe「DEPARTURES」)、「短三和音+五音音階」、「sus4(サス・フォー)」(例:渡辺美里「My Revolution」、小泉今日子「GOOD MORNING-CALL」、篠原涼子「恋しさと せつなさと 心強さと」)、「add9(アド・ナインス)」(例:globe「DEPARTURES」)を多用する傾向にある。
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