イングリッシュ・ホルンとは? わかりやすく解説

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イングリッシュ‐ホルン【English horn】

読み方:いんぐりっしゅほるん

木管楽器の一。オーボエよりやや大型複簧(ふくこう)(ダブルリード)の縦笛で、音域5度低い。コールアングレ


イングリッシュ・ホルン(コーラングレ)[En-glish horn / corno Inglese(仏) / E.Hrn]

イングリッシュ・ホルンは、コーラングレCor Anglais)とも呼ばれオーボエよりも5度低い移調楽器。つまり、楽譜上のCの音は、5度低いFの音となって発音されるオーボエ同族楽器だが、音域が低い分、管が長くまた、ベルあさがお)が、球状ふくらんでいる点が異なっている。17世紀頃、ショームから生まれたといわれ、オーボエ・ダ・カッチャ(狩りオーボエ)と呼ばれたこともあった。18世紀には、一般に曲がった管で、中にはオーボエのようなベルをもつものもあったが、19世紀に、直管球状ベル定着した19世紀中頃から、大編成の管弦楽はしばし用いられるようになったベルリオーズの「幻想交響曲」の第3楽章では、イングリッシュ・ホルンとオーボエによる羊飼いの笛の対話に始まる。また、フランクの「交響曲ニ短調」の第2楽章ゆるやかな旋律を、この楽器柔らかく歌い上げている。そのほかベルリオーズの「ローマの謝肉祭序曲ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲ドボルザーク交響曲新世界よりでも、イングリッシュ・ホルンの独奏聴かれ親しまれている。

コーラングレ

(イングリッシュ・ホルン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/19 09:42 UTC 版)

コーラングレ
各言語での名称
cor anglais,
english horn
Englisches Horn,
Englischhorn
cor anglais
corno inglese
英国管、英國管
分類

木管楽器 - ダブルリード族

音域
実音記譜
関連楽器

コーラングレコール・アングレ: Cor anglais)またはイングリッシュホルン: English horn)、コルノ・イングレーゼ: Corno inglese)は、ダブルリード木管楽器の一種である。名称は全て「イングランドのホルン」の意味。オーボエ(C管)と同族のF管楽器で、オーボエよりも低い音を出す。まれにアルトオーボエ(alto oboe)と呼ばれることもある。

概要

コーラングレは、楽器の先端部(ベル)が、しばしば「洋梨」と形容されるように、丸く膨らんでいるのが外観的な特徴である。オーボエと同じ指使いでオーボエより完全5度低い音が出る(つまり、楽譜上の記音「ド」(、C)の音を出すと、実際にはその下の「ファ」(、F)音が出る)。このため、オーボエ奏者が演奏しやすいよう、オーボエと同じ指使いの音を同じ音符で書く。従って、記譜された音から完全5度低く鳴るヘ調の移調楽器である(ごく稀に、アルト譜表に実音で記譜されることがある)。オーケストラではオーボエ奏者が持ち替えて演奏することが多い。

音域は2オクターブ半ほどである。ただし、オーボエの最低音変ロ(B♭)音に相当する音[実音で中央ハの下の変ホ(E♭)]を持たない楽器も珍しくない。

古典派の交響曲で使われることは少なかったが、ベルリオーズフランクなどのロマン派時代から多用されるようになった。その独特の牧歌的でエキゾチックな響きから、オーケストラにおいては独奏楽器的な扱い方をされる場面も少なくない。基本的にはオーボエ奏者(性質上、2番奏者)が持ち換えるが、3管以上の編成では単独のパートとして書かれた楽曲も多い。

歴史と語源

コーラングレの原型となったオーボエ・ダ・カッチャ

「コーラングレ」はフランス語で「イングランドのホルン」という意味だが、この楽器はイングランドとも(フレンチ)ホルンとも関係がない。コーラングレは1720年ごろにおそらくブレスラウのヴァイゲル家により、オーボエ・ダ・カッチャ英語版(イタリア語で「狩りのオーボエ」の意味)式の曲がった管体にあわせて球根形のベルをつけたことに始まる。2つのキーを持ち、ベルが開いていて、まっすぐなテノール・オーボエ(フランス語で「taille de hautbois」)、および朝顔形のベルをもつオーボエ・ダ・カッチャは、中世の宗教画に出てくる天使が吹くラッパを連想させたため、ドイツ語で「engellisches Horn」すなわち「天使の角笛」とよばれるようになった。engellisch という語は「天使の」のほかに「イングランドの」という意味もあったため、「天使の角笛」から「イングランドのホルン」に変化した。ほかによい別な名がなかったため、オーボエ・ダ・カッチャが1760年ごろ使用されなくなった後になっても、この曲がった球根形ベルをもつテノール・オーボエは同じ名前で呼ばれつづけた[1]

コーラングレ専用のパートを持つ最古の管弦楽譜は、1749年のニコロ・ヨンメッリのオペラ『エツィオ』のウィーン版で[2]、ここではイタリア語で「corno inglese」と呼ばれている[3]。それにつづく1750年代のグルックハイドンの作品でも同様である[4]。ほかにジュゼッペ・ボンノヨハン・アドルフ・ハッセ、ヨーゼフ・シュタルツァーらのウィーンの作曲家や、ザルツブルクミヒャエル・ハイドンが初期のコーラングレの使用者だった[1]。またグルックに影響された人々、特にエクトル・ベルリオーズもコーラングレを使用した[1]。コーラングレはまた18世紀末のイタリアオペラで使用された[1]。最初のコーラングレ協奏曲は 1770年代に書かれた。「コーラングレ」という名前からは皮肉なことに、フランスでは1800年ごろ、英国では1830年代になるまでコーラングレは使用されなかった[4]。「イングランドのホルン」に相当する名前は、イタリア語・フランス語・スペイン語などヨーロッパの諸言語でも使われている。

コーラングレの「アングレ」が中世フランス語の「anglé」(角ばった、角で曲がった。現代フランス語のangulaire)がくずれたものだという説が提唱されたこともあるが[5]、この説は19世紀に cor anglais という語が出現する以前に cor anglé という語が使われたという証拠がないことから否定されている[6]。この楽器の名が普通に現れるようになるのは、1741年以降のイタリア・ドイツ・オーストリアのスコアで、通常はイタリア語で「corno inglese」と記されている[7]

フランスでは19世紀のヴォーグト (Gustave Vogtという名オーボエ奏者がコーラングレを得意とし、ロッシーニの『ウィリアム・テル』(1829年)序曲の有名なコーラングレのソロは彼による独奏を想定して書かれた[1]。ベルリオーズもヴォーグトを尊敬し、『ファウストからの8つの情景』作品1(1828-1829年)や『幻想交響曲』(1830年)でコーラングレを使用している[1]。ヴォーグトはギヨーム・トリエベール (de:Guillaume Triébertと共同して楽器を改良し、その子のフレデリック・トリエベールが1860年代に開発した楽器では管体がまっすぐになった[1]。1881年にトリエベールから独立したフランソワ・ロレ (F. Loréeによって現代の形のコーラングレが作られた[1]

19世紀の最後の四半世紀を通じて、英語では、フランス語名「cor anglais」とイタリア語名「corno inglese」だけが使われた[8]。いまでも英語圏でフランス語名が使われているのは注目に値する。英語の口語では常に「cor」と呼ばれる[9]

主な製造会社

  • フランス
    • ロレー F.Lorée
    • リグータ Rigoutat
    • マリゴ Marigaux
  • アメリカ
    • ラウビン A. Laubin
    • フォックス Fox  管体にメープルを用いており重量が軽いといった特徴がある [10]
  • ドイツ
    • メーニッヒ

コーラングレが活躍する楽曲

協奏曲

室内楽曲・独奏曲

管弦楽曲等

吹奏楽曲

その他

脚注

  1. ^ a b c d e f g h Michael Finkelman (2001), “Oboe: III. Larger and Smaller European Oboes, 4. Tenor oboes, (iv) English horn"”, in Stanley Sadie, John Tyrrell, The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 18 (2nd ed.), London: Macmillan Publishers, pp. 282-283, ISBN 0333608003 
  2. ^ History of the English horn/cor anglais at the Vienna Symphonic Library
  3. ^ Adam Carse, Musical Wind Instruments: A History of the Wind Instruments Used in European Orchestras and Wind-Bands from the Later Middle Ages Up to the Present Time (London: Macmillan and Co., 1939): 144.
  4. ^ a b Michael Finkelman, "Die Oboeinstrumente in tieferer Stimmlage – Teil 5: Das Englischhorn in der Klassik", in Tibia 99 (1999): 618–24. (ドイツ語)
  5. ^ Michael Kennedy, "Cor anglais", The Oxford Dictionary of Music, second edition, revised, Joyce Bourne, associate editor (Oxford and New York: Oxford University Press, 2006); A. J. Greimas, Dictionnaire de l'ancien français jusqu'au milieu du XIV siècle, second edition (Paris: Librarie Larousse, 1968): 31. ISBN 2033402061.
  6. ^ Adam Carse, Musical Wind Instruments: A History of the Wind Instruments Used in European Orchestras and Wind-Bands from the Later Middle Ages Up to the Present Time (London: Macmillan and Co., 1939): 143; Sybil Marcuse, "Cor anglais", in Musical Instruments: A Comprehensive Dictionary, revised edition, The Norton Library (New York: W. W. Norton, 1975). ISBN 0-393-00758-8.
  7. ^ Willi Apel, "English Horn", The Harvard Dictionary of Music, second edition (Cambridge: Harvard University Press, 1969). ISBN 0674375017.
  8. ^ William Alexander Barrett, 1879. An Introduction to Form and Instrumentation for the Use of Beginners in Composition (London, Oxford, and Cambridge: Rivingtons, 1879): 55.
  9. ^ Norman Del Mar, Anatomy of the Orchestra (Berkeley: University of California Press, 1981): 143. ISBN 0520045009 (cloth); ISBN 0520050622
  10. ^ FOX Winds - ENGLISH HORN

関連項目


イングリッシュホルン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 16:21 UTC 版)

交響曲第9番 (ドヴォルザーク)」の記事における「イングリッシュホルン」の解説

イングリッシュホルンは第2楽章にのみ用いられ有名な長いソロ含めて3回登場するが、このパートどのように(2名のオーボエ奏者のうちどちらか持ち替えて、または別の奏者用意して3名体制で)演奏するべきかについては複数見解がある。自筆総譜では、楽章冒頭楽器一覧にはイングリッシュホルンが挙げられておらず、実際音符オーボエの段に書かれている。そこに奏者指定などがないことから、この点についてのドヴォルザーク意図不明とされる初版パート譜では、オーケストラ一般的な慣習従いオーボエ第2奏者持ち替え演奏するようになっている。しかし、楽器持ち替えのための休みが1小節未満きわめて短い箇所があることから、イングリッシュホルンを(持ち替えではなく独立したパートとして扱う楽譜存在する実際初演の際に用いられ手書きパート譜ではイングリッシュホルンが独立しているほか、チェコスロバキア国立文学音楽美術出版社によるドヴォルザーク全集版(オタカル・ショウレク校訂1955年)をはじめとする後出批判校訂版は、総じてイングリッシュホルンのパート独立させている。

※この「イングリッシュホルン」の解説は、「交響曲第9番 (ドヴォルザーク)」の解説の一部です。
「イングリッシュホルン」を含む「交響曲第9番 (ドヴォルザーク)」の記事については、「交響曲第9番 (ドヴォルザーク)」の概要を参照ください。

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イングリッシュホルン

出典:『Wiktionary』 (2021/08/04 16:39 UTC 版)

語源

英語 English horn

名詞

イングリッシュ ホルン

  1. (楽器) コーラングレのこと。コーラングレ英語ではEnglish hornと言う

「イングリッシュホルン」の例文・使い方・用例・文例

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