W0 (相対論的量子力学の前提)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/18 15:00 UTC 版)
「ワイトマンの公理系」の記事における「W0 (相対論的量子力学の前提)」の解説
量子力学は、フォン・ノイマンに従い記述される。特に、純粋状態は、光線により与えられる、つまり、ある可分な複素ヒルベルト空間の1-次元の部分空間である。次には、ヒルベルト空間のベクトル Ψ と Φ のスカラー積は、 ⟨ Ψ , Φ ⟩ {\displaystyle \langle \Psi ,\Phi \rangle } と書き、Ψ のノルムは ∥ Ψ ∥ {\displaystyle \lVert \Psi \rVert } で表す。純粋状態 [Ψ] と [Φ] の間の遷移確率は、非ゼロなベクトル表現 Ψ と Φ により定義できるので、次の式が成り立つ。 P ( [ Ψ ] , [ Φ ] ) = | ⟨ Ψ , Φ ⟩ | 2 ∥ Ψ ∥ 2 ∥ Φ ∥ 2 {\displaystyle P([\Psi ],[\Phi ])={\frac {|\langle \Psi ,\Phi \rangle |^{2}}{\lVert \Psi \rVert ^{2}\lVert \Phi \rVert ^{2}}}} 遷移確率は、どのような表現ベクトル Ψ と Φ を選ぶかとは独立である。 対称性の理論は、ウィグナーに従い記述される。このことは、1939年の有名なユージン・ウィグナー(Eugene Paul Wigner)による論文によって、相対論的な粒子の記述に成功したということが素晴らしい点である。ウィグナーの分類(Wigner's classification)を参照のこと。ウィグナーは、状態間の遷移確率が特殊相対論の変換により関連付けられたすべての観測者に同じであることを仮定した。さらに一般的に彼は、任意の 2つの光線の間の遷移確率の不変性のことばで、群 G の下で不変な理論を表現するステートメントを考えた。ステートメントは、群作用が光線の集合、つまり射影空間に作用していることを前提としている。(a,L) をポアンカレ群(非等質なローレンツ群)の元としよう。すると、a は実ローレンツ4元ベクトル(four-vector)で時空の原点の変換 x ↦ x − a を表している。ここに x はミンコフスキー空間 M4 の点であり、L はローレンツ変換であり、すべてのベクトル (ct,x) のローレンツ距離 c²t² − x⋅x を保存する4-次元時空の線型変換として定義することができる。すると、すべてのヒルベルト空間の中の光線 Ψ とすべての群の元 (a,L) に対し、光線の変換が Ψ(a,L) で与えられ、遷移確率が次の変換の下で不変であれば、理論はポアンカレ群の下に不変である。 ⟨ Ψ ( a , L ) , Φ ( a , L ) ⟩ = ⟨ Ψ , Φ ⟩ {\displaystyle \left\langle \Psi (a,L),\Phi (a,L)\right\rangle =\left\langle \Psi ,\Phi \right\rangle } ウィグナーの第一定理は、これらの条件の下、ヒルベルト空間の変換は、線型かまたは半線型作用素となる(もし、ヒルベルト空間の変換がユニタリかもしくは反ユニタリな作用素というよりもノルムを保存するならば)。光線の射影空間の上の対称作用素は、基礎となっているヒルベルト空間へ「持ちあげる」(lift)することができる。これは各々の群の元 (a, L) ができるので、ヒルベルト空間上のユニタリもしくは反ユニタリ作用素 U(a, L) の族を得て、(a,L) により変換された光線 Ψ は、U(a, L) ψ を意味する光線と同じである。単位元と連結な群の元だけに注目すると、反ユニタリな場合は起きない。 (a, L) と (b, M) を 2つのポアンカレ変換として、(a, L).(b,M) で群の積を表すとすると、物理的解釈から、U(a, L)[U(b, M)]ψ を含む光線は(任意のΨに対し)、U((a, L). (b, M))ψ を含む光線であるはずであることが分かる(群作用の結合性)。光線からヒルベルト空間へ戻ると、これらの2つのベクトルはフェーズが異なっているかもしれず(また、ユニタリ作用素を選ぶのでノルムの中にないかもしれない)、2つの群の元 (a, L) と (b, M) である、つまり、群の表現ではなくて、射影表現(英語版)である。これらのフェーズは各々の U(a) を再定義することにより、例えばスピンが 1/2 の粒子に対し、いつもキャンセルできるとは限らない。ウィグナーは(ポアンカレ群に対し?)得ることのできる最良のものは、 U ( a , L ) U ( b , M ) = ± U ( ( a , L ) . ( b , M ) ) {\displaystyle U(a,L)U(b,M)=\pm U((a,L).(b,M))} である、つまり、フェーズは π {\displaystyle \pi } の倍数である。整数スピンの粒子(パイオン、光子、重力子など)に対し、さらなるフェーズ変換により +/− 符号を取り去ることができるが、半整数のスピンの表現に対しては、そのようなことはできないので、2π の角度で軸の周りを回るように、符号は不連続に変換する。しかし、ポアンカレ群の被覆の表現(英語版)を構成することができ、不均一な(inhomogeneous) SL(2,C) と呼ばれている。これは元 (a, A) を持っていて、前にみたように、a は4元ベクトルであるが、今度は A が単位行列式を持つ複素 2 × 2 行列である。ここで得たユニタリ作用素を U(a, A) と表し、これらが連続でユニタリで正しい表現を与え、そこでは U(a,A) の集まりが不均一な SL(2,C) の群法則に従う。 2π による回転の下で符号が変わるので、スピンが 1/2, 3/2 などのように変換するエルミート作用素は観測可能量ではありえない。このことは一価性超選択則(en:superselectionを参照)を示していて、スピン 0, 1, 2 ...の状態と、スピン 1/2, 3/2 ...との間のフェーズは、観測可能ではない。この規則は、状態ベクトルのすべてのフェーズの非観測可能性に追加される。観測可能量と状態 |v) に関連して、整数スピン部分空間であるポアンカレ群の表現 U(a, L) と奇数の半分である部分空間上の不均一な SL(2,C) の表現 U(a, A) があり、次の解釈がに従い作用している。 U(a, L)|v) に対応するアンサンブルは、座標 x に関して |v) に対応するサンサンブルが、奇数の部分空間と解釈できることとちょうど同じ方法で解釈される。 時空の変換の群は可換で、従って、作用素は同時に対角化される。これらの群の生成子は、4つの自己共役作用素 P 0 , P j {\displaystyle P_{0},P_{j}} , j = 1, 2, 3, を与え、これらの作用素は等質な群の下で、エネルギー運動量 4-ベクトルと呼ばれる 4ベクトルとして変換する。 ワイトマンの公理のゼロ番目の第二の部分は、表現 U(a, A) がスペクトル条件である、エネルギー運動量の同時スペクトルは、次の前方円錐の中に含まれているという条件を満たす。前方円錐という条件は、 P 0 ≥ 0 {\displaystyle P_{0}\geq 0} ............... P 0 2 − P j P j ≥ 0. {\displaystyle P_{0}^{2}-P_{j}P_{j}\geq 0.} ということで、第三の公理は、状態の一意性で、ヒルベルト空間の中の光線により表現されることで、この公理はポアンカレ群の作用の下に不変である。これを真空と呼ぶ。
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