腸管出血性大腸菌O-104
別名:病原性大腸菌O-104、O-104
病原性大腸菌の一種。「O-157」「O-111」と同じ腸管出血性大腸菌であり、「O抗原」の差異によって区別されている。
腸管出血性大腸菌O-104、O-157、O-111などは基本的な働きはおおむね同じであり、ベロ毒素を生産することによって大腸の粘液細胞を破壊・死滅させ、出血性の激しい下痢を引き起こし、溶血性尿毒症症候群(HUS)などを併発させる。さらに、他の一般的な食中毒の原因菌と比べて、感染力が非常に強い点も共通している。
2011年5月、ドイツで腸管出血性大腸菌O-104に感染したと見られる食中毒患者が続出した。2011年6月2日までに十数名が死亡しているが、感染源が特定されておらず、スペイン産の野菜が深刻な風評被害を受けるなど、市場に大きな混乱を招いている。また、6月2日にWHO(世界保健機関)が発表したところでは、ドイツで感染を広げているO-104はこれまでに人から検出されたことのない変異体で、致死性の高い新種と見られている。「O-104」による食中毒は、5月下旬を中心に52人の死者を出したが、感染源は特定されていない。7月26月日には腸管出血性大腸菌の流行は終息したとの宣言が出された。
日本ではその前月である2011年4月に「腸管出血性大腸O-111」による集団食中毒が発生、4人が死亡する事件が起きている。
関連サイト:
腸管出血性大腸菌(EHEC)感染患者の急増に関する注意喚起について - 在ドイツ日本国大使館
オー‐いちれいよん【O104】
病原性大腸菌
(O-104 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 07:55 UTC 版)
病原性大腸菌(びょうげんせいだいちょうきん)とは、特定の疾病を起こす大腸菌菌株の総称である。毒素原性大腸菌[1]とも呼ばれる。細菌学的には、菌の表面にある抗原(O抗原とH抗原)に基づいて細かく分類される[2]。このうち、O111 (O-111とも) やO157 (オーいちごーなな、O-157とも) の抗原を持つ菌株は、100人を超える規模の食中毒をたびたび発生させ先進国で問題となっており[3]、メディアによる報道ではこの抗原名で呼称されている。
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- ^ 腸管出血性大腸菌O157:H7による集団発生例
- ^ 腸管出血性大腸菌O157等による食中毒 厚生労働省
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- ^ “O157等腸管出血性大腸菌感染症に注意しましょう”. 千葉県 (2018年6月19日). 2019年7月11日閲覧。
- 1 病原性大腸菌とは
- 2 病原性大腸菌の概要
- 3 注目されることとなった経緯
- 4 統計
- 5 感染対策
- 6 脚注
- O-104のページへのリンク