ESCOT(電子制御式変速操作装置)
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1.日本で初の大型トラックトラクタ用電子制御式多段変速機半自動変速装置である。車両質量が空積で広い範囲にわたり変化する大型トラクタに焦点を当てて開発されたもので、発進時のクラッチ操作とシフトチェンジのタイミングの決定を運転者に任せ、残りの制御を自動化し、オーバードライブ12段トランスミッションに適用した。効果として運転手の疲労軽減とミスシフトによる事故防止が図られる。 2.発進時と停車直前以外はクラッチペダルの操作が必要なく、シフトアップまたはダウンの信号をシフトレバーを前・後方向へ傾倒するだけで発生し、アクセル及びクラッチ操作を自動化したものである。 3.トランスミッション本体はレンジシフト機能及びハイ/ロー副変速機付12段変速機である。運転手は12段全部を順次シフトする各段モードと、1段跳びにシフトしてあたかも6段トランスミッションのように使うモードを選択できる。 4.発進段はシフトレバーHOLD位置か前傾(アップ側)させる3L速に、後傾(ダウン側)させると2L速にセットされるようになっている。 5.運転指令はTMコントローラユニットからエンジンの電子ガバナコントローラへ伝えられ、同時にクラッチアクチュエータへも伝えられ、クラッチの作動ストローク信号がTMコントローラへフィードバックされる。 6.運転席の表示部にはどの段を使っているかが、「1」~「6」及び「R」、「HIGH」または「LOW」によって点灯表示される。 7.人為的ミスや装置の異常に対するバックアップも各種装備されている。ミスシフトに起因するオーバーラン事故防止機能、自己診断機能、最適ギア選択機能(運転者がどのギアに入れてよいか判らなくなった場合は、一旦N位置にしてからアップまたはダウン指令を出すとその時の車速に見合った最適変速段をすばやく判断してシフトする)を備えている。 |
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保管場所 | : | 日産ディーゼル工業株式会社(所有者)、(株)クリエイトセンター(管理者)(〒362-8523 埼玉県上尾市大字壱丁目1番地(所有者)、〒332-0002 埼玉県川口市弥平3-13-16(管理者)) |
製作(製造)年 | : | 1995 |
製作者(社) | : | 日産ディーゼル工業(株) |
資料の種類 | : | 試作品 |
現状 | : | 保存・非公開 |
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名称 / 製作 | ![]() |
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装置構成 | : | 変速本体(機械式変速機)、操作部(運転席)、指示部(運転席)、制御部(電子制御ユニット)、エンジン制御部(電子ガバナ用)、クラッチ制御部 |
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仕様 | ![]() |
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効能 | ![]() |
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エピソード・話題性 | : | 日本で初の電子制御を用いた大型トラック トラクタ用多段変速機半自動変速装置である。 |
特徴 | : | 空積により車両質量が大きく変動する大型トラックトラクタ用として開発され、発進時のクラッチ操作とシフトチェンジのタイミング決定を運転者に任せ、残りの制御を自動化し、オーバードライブ付12段トランスミッションに適用した半自動多段変速機。発進時と停車直前以外はクラッチ操作が必要なく、シフトアップまたはダウンの信号によりアクセル及びクラッチ断続操作を自動化したものである。 |
参考文献 | : | 秦信雄、西山義孝、高橋貞博、渡辺慶人、「大型トラクタ用多段TMの電子制御変速システムの開発」自動車技術会学術講演会前刷集951、P.129-132(No. 9534243) 岡本勲、手代木武、岡崎昭二、秦信雄、鈴木匡、黒沢隆「電子制御変速装置(ESCOT)の開発」日産ディーゼル技報 No. 57、P. 86-91、1956.6 西山義孝、中園長吉、三宅博、佐々木正和「生体反応計測による新変速システム”ESCOT”のイージードライブ性評価について」日産ディーゼル技報 No. 57、P. 33-38、1955.6 |
その他事項 | : | 通称名:ESCOT;設計者(代表):岡本勲;開発協力会社:㈱ゼクセル(現ボッシュオートモーティブシステムズ);技術用途:大型トラックトラクタ及びバス;実物所在:単品あり、実車稼動中;表示部:インストルメントパネル組み込み;表示方式:ランプ表示;表示内容:1~6速、N、R、H/L(ハイロー);制御部:電子式半自動(非常時用手動機能付); |
Escot
ESCOT
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/03 13:50 UTC 版)
ESCOT(エスコット)はUDトラックス(いすゞ自動車の完全子会社)が製造するトランスミッションの商標である。Easy / Safe COntorolled Transmissionのアクロニムであり、運転者の変速操作を簡略化したセミオートマチックトランスミッションである。
概要
クラッチとギアセレクターはアクチュエータを介して動作する。シフトレバーは中立状態から前、後、右へと倒す操作のみで、クラッチは操作しなくてもシフトレバーの操作に応じて自動的に動作する。ただし、ESCOT-V、VI以外のバリエーションでは前進と後退を切り替える際や発進、停止時にクラッチ操作が必要である。シフトレバーを前へ動かすとシフトアップ、後に動かすとシフトダウンで、右に倒すとニュートラルになる。右に倒したまま前に動かすとニュートラルから不用意に変速操作が行われないようにシフトレバーを固定する。右に倒した後に後に動かすとリバース(後退)となる。
7速と12速(ハイ/ロー切り替え型6速)の2種類で、12速仕様のシフトノブにはスプリッター(SPL)スイッチが備えられ、これにより自動変速時の8段と12段の切り替えが行なえる。
バリエーション
- ESCOT-I/ESCOT-II(エスコット・ワン/エスコット・ツー)
- 1995年に登場した。変速操作は手動で、走行中の変速時のみクラッチが自動化されており、発進、停止時にはクラッチ操作が必要である。Iはスペースウィングの三軸車に採用され、IIはビッグサムに採用された。
- ESCOT-III(エスコット・スリー)
- 1997年に登場した。変速操作も自動的に行うモード(E・Dモード)を持つが、発進、停止時にはクラッチ操作が必要である。
- ESCOT-AT IV(エスコット・エーティーフォー)
- 2003年に登場した。自動的に変速を行うモードで発進、停止時のクラッチ操作が不要となった。前進と後退を切り替える際にはクラッチ操作が必要である。
- 6速Hi(12速)で走行中に排気ブレーキをかけると自動的に6速Low(11速)にシフトダウンする「オートシフトダウン」を装備している。クオンには自動発進時のギアを2速に変更可能な「ライトウェイトスイッチ」が設けられた。また、2007年の一部改良の際、積載量が少ないときにはシフトアップのタイミングが早い設定に切り替えて省燃費運転を支援する「クイックライトウェイトシフトスイッチ」が組み込まれた。
- ESCOT-Plus1(エスコット・プラスワン)
- 2003年に登場した。ESCOT-IIと同様に手動変速のみであるが、8段変速モード(5・6速のみハイ/ローの切り替えを行なう)への切り替えスイッチが設けられた。
- ESCOT-V(エスコット・ファイブ)
- 当時の親会社であったボルボの大型トラック、FH/FMシリーズに採用された「iシフト」をベースに開発され、2010年に登場した。発進、停止の際もクラッチ操作が不要となり、クラッチペダルが廃止された。下勾配や惰性走行中にエンジンブレーキを遮断することにより燃料消費を抑える「ESCOT ROLL」が新たに装備された。「E・Dモード」には経済効率を高めた「エコノミーE・Dモード」が追加された。
- ESCOT-VI(エスコット・シックス)
- 2代目クオンの登場に合わせ、2017年に登場した。シフトレバーがゲート式からボルボ「iシフト」同様のストレート式に変更され、マニュアルモードもシフトノブ右側面の+/-ボタンでの操作に改められた。
- ESCOT-VII(エスコット・セブン)
- クオントラクタのマイナーチェンジ並びに親会社であるいすゞ自動車の大型セミトラクタ、ギガトラクタのフルモデルチェンジに合わせ、2023年に登場した。ESCOT-VIをベースに改良が図られており、ESCOT-VIよりもより素早く滑らかな変速を可能とした。当面はクオントラクタとギガセミトラクタのGH13エンジン搭載車のみ搭載される。
関連項目
- Escotのページへのリンク