BRICs・VISTAの台頭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 07:38 UTC 版)
「現代の世界の一体化」の記事における「BRICs・VISTAの台頭」の解説
詳細は「BRICs」、「ブラジルの経済」、「ロシアの経済」、「インドの経済」、「中華人民共和国の経済」、および「VISTA」を参照 1997年のアジア通貨危機の際に影響を受けなかった国が2国あった。それが、中華人民共和国とインドである。両国はともに変動相場制を採用しておらず、このことが為替による投機を回避することができた要因だった。中国とインドはアジア通貨危機以後、経済のプレゼンスを拡大していった。これに、原油価格が高騰したことにより、ボリス・エリツィン大統領の時代には国家が破綻状態に追い込まれたロシアも息を吹き返した。さらに、2003年には、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領が就任すると1970年代以来問題となっていた対外債務問題の解決に腐心したブラジルも原油価格の高騰とバイオマスエタノールを武器に息を吹き返していった。これら4カ国を総称して、BRICsと呼ぶ。 ゴールドマン・サックスのレポートによる造語のBRICsという用語は、第二次世界大戦以降、EUを核とするヨーロッパ、アメリカ・カナダの北米圏、日本という経済の三極構造を大いに覆す可能性がある国々ということで、広く知られるようになった。これら4カ国の共通する点は、1億人以上の国内市場の存在、豊富な天然資源、先進国に比べて安価で良質な労働力を確保できるといった点が挙げられる。4カ国の総人口は世界の約42パーセント、面積は約3割に達するという。 原油価格をはじめとする資源価格の高騰は、これまで開発が進んでいなかった地域での油田の開発が展開されるようになった。ペトロチャイナはアンゴラを皮切りに、アフリカの各地で油田の開発を実施しているし、ブラジルは大西洋の沖合いで海底油田の採掘に成功し、ペトロブラスは大きく成長を遂げることとなった。ロシアのガスプロムもまた、サハリン沖の油田開発で日本の総合商社(三井物産や三菱商事)の排他に成功していった。 また、中央アジアや東欧で破綻していった鉄鋼会社を次々と買収していったインドのミタルグループは、ルクセンブルクのアルセロールと合併し、アルセロール・ミタル)が誕生するなど、従来の常識では考えられない企業の発展が見受けられるようになった。インドは1991年には外貨危機を経験したものの、2003年には世界4位の外貨準備を持つ国に変貌した。 BRICsの成功は、世界の通貨の流れを劇的に変えた。上海、ムンバイといった市場に先進国の資金が流入した。また、原油価格の高騰を背景にサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの、いわゆる「オイル・マネー」が自国のインフラストラクチャーの整備のみならず、サブプライム問題にあえぐアメリカ合衆国の金融機関に出資するという形で通貨の面からも世界の市場は一つにまとまりつつある。 BRICsに代わる造語として登場したのが、VISTAである。ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチンのそれぞれの頭文字をつけられて造られたこれらの地域は、前述のBRICs各地域よりも廉価な労働力を持ち、インドネシアを除きBRICsよりもやや小さい国内市場を保有、また、天然資源も豊富なことから、経済的な実力をつけ始めている。南アフリカは、アパルトヘイトの廃止以降、2010年にワールドカップを開催することができるまで、経済成長を達成し、ベトナムは、中国・インドに代わる「世界の工場」になろうとしている。また、これらの地域以外でも、スエズ運河の収入や原油高の恩恵、観光収入を伸ばしているエジプト、人口1億人以上を持つパキスタンやバングラデシュといった国々も徐々にではあるが外資の導入に成功しだしてきており、経済のテイクオフが近づいてきている(NEXT11)。
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