2人を窃盗容疑で指名手配
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 05:26 UTC 版)
「名護市女子中学生拉致殺害事件」の記事における「2人を窃盗容疑で指名手配」の解説
一方、県警は犯行に使用された車両(白いワンボックスカー)や、不審人物(前科・前歴のある人物や非行少年、変質者など)について調べ続けた。前者(犯行車両)については、目撃証言に近い車種はトヨタ・ハイエースだったが、色や形状を問わず、車検の登録番号を基に、すべてのワゴンタイプの車を調査対象とした。7月の第2週以降は、トヨタ以外の他メーカーの車種である可能性も考慮し、調査対象台数を一万数千台増やしたが、その対象台数は、約80,000台に上った。 調査対象の膨大さや、登録証だけでは形式や色の明確な区別ができないこともあって、特捜本部は全メーカーの同型車種を点検することを強いられ、既に登録を抹消されているはずの車が使われ続けているケースや、車庫登録を他の市町村で行っている例が多いことも、確認作業の支障になっていたが、特捜本部は少しでも不審な点があった車(事件発生直後、検問や検索で職務質問を受けた車両など)を繰り返し調べ直すなど、地道な捜査を続けた。結果、県内の陸運事務所に登録されていた類似車両約56,000台については、事件から1か月後の7月22日時点で、93%の確認を終え、12月20日時点では、未確認の車両は約15台となっていた。また、後者(不審人物)に関する捜査でも、「拉致現場付近の建築工事現場で働いていた1人が、事件翌日から姿を消した」などの情報を把握。約1,000人近くを事情聴取し、そのうち数人を有力な被疑者としてピックアップしたが、いずれもアリバイが確認されるなどしたため、捜査線上から消えた。 難航する捜査の中で、特捜本部が「比較的有力」と見ていた車は、ワンボックス型の盗難車両2台だった。そのうちの1つが、6月25日に石川市石川(現:うるま市石川)で発見された白いワンボックスカーで、もう1台が、7月5日午前、辺戸岬近くの農道で発見され、後に犯行車両と判明した白いワンボックスカーである。特捜本部や、地元の対策本部はそれぞれ、車両番号・車両の特徴を記したビラを「緊急情報」として配布し、この2台の車の捜索を続けていた。 後者のワンボックスカーは発見当時、ナンバープレートを取り外された状態で、茂みに隠すように放置されていた。発見現場は、地元住民でもほとんど入らない農道の奥で、鬱蒼と草木が茂っていた。単に盗んだ車を放置したにしては、念の入った隠匿工作がされていたことや、中で飲食した形跡があることなど、不審な点が多くみられたため、特捜本部が鑑識を行うこととなり、名護市役所羽地支所に設置されていた対策本部も「被疑車両か?」と色めき立った。 しかし、県警は同日夜、この車について「事件との関連は薄い」との見解を示した。これは、車内に残されていた遺留品の調査や、車内鑑定などの結果、被害者Aの指紋・遺留品が見つからなかったことや、目撃者が「犯行車両はこの車と違い、側面と後部の窓が鉄板のようなもので覆われ、中が見えないようにしてあった」と述べ、この車と事件との関連を否定したためだった。当時、この車の鑑識や、科学捜査研究所による車両鑑定は、計3度行われたが、結果的に犯人2人 (Y・U) の指紋は検出されたものの、被害者Aの指紋は発見されず、車内から発見された毛髪も、Aとは結びつかなかった。しかし、後にこの車が犯行車両と判明したことから、事件解決後には市民の間から、「もっと慎重に車を調べるべきだった。(その日のうちにシロと発表せず)引き続き市民の立場から協力でき、Aの発見も早まっただろう」など、警察の捜査に対する厳しい意見が出た。また、『FRIDAY』は犯行車両の中に、使いかけのティッシュの箱やビニール袋が残っていたことを挙げ、鑑識活動が不十分だった可能性を指摘している。法医学の専門家である医師の上野正彦は、「検査結果が出るまでに3、4日ほどかかるため、車を発見した当日中に『何もなかった』と発表するのは不可解。遺体発見現場も、車で通れる道から10 m未満の場所にあるため、車内で殺された可能性が高いが、そうだとすれば遺留品が出てこないということは考えがたい」「(拉致現場から遺体発見現場まで)50 kmあるが、それだけ乗車していれば髪やフケなど何らかの遺留品が出るし、Aが車内で暴れれば当然その量も増える。現時点では鑑識は失敗だったと言えるのではないか」と、当時の捜査状況に疑問を呈している。 一方、県警はその後も、この車と本事件との関連を調べ続けていた。この車内の遺留品・指紋などから、Y・Uの2人が浮上したため、(この車について窃盗の被害届を受理していた)那覇警察署は同月18日、「事件に関与した可能性が捨てきれない」として、2人を窃盗(ワゴン車を盗んだ容疑)で全国に指名手配。特別班を設置し、同年8月、被疑者Yの実家があった種子島(熊毛郡中種子町)や、Yの肉親が住んでいた愛知県に捜査員を派遣していた。2人には、拉致現場近く(名護市伊差川)での足取りがあったため、その後も県警は「完全には(嫌疑が)捨てきれない」と行方を追い続けていたが、彼らを「本命視」していた捜査幹部は少なく、あくまで「有力というわけではなく、(疑いを)消すための捜査」という意味合いが強かった。また、この車が発見されたことを受け、6月19日にYとUによって砂浜で立ち往生していたところを助けられていた夫婦は、同年9月に沖縄県警に対し、2人の姿が映ったビデオテープを提出していた。
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