部分症状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 08:37 UTC 版)
「全身性エリテマトーデス」の記事における「部分症状」の解説
皮膚・粘膜症状 蝶形紅斑(バタフライ・ラッシュ)頬から鼻にかけてかかる丘疹状の紅斑で特異的な症状であるが、感度は高くなく、半分程度である。狼のような外見を呈するというが、そこまで至る例は稀。 多形滲出性紅斑ディスコイド疹、亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)、lupus profundusなど レイノー症状本症の25%に見られる。 光線過敏症本症の大半で見られ、しばしば初回の診察のきっかけとなる。男性に多い。 口腔潰瘍無痛性の口内炎 脱毛 筋肉・関節症状 関節炎・関節痛対称性。なお、ジャクー関節症と呼ばれる可逆性の関節変形をきたすことはあるが、関節リウマチと異なり関節破壊は起こさない。 筋肉多発性筋炎とのオーバーラップを疑うような筋炎、本症独自の症状とおもわれるミオパチーまであるが、まれでありむしろ治療薬であるステロイドの副作用(ステロイドミオパチー)のほうがよく見られる。 腎症状 ループス腎炎。腎不全の原因となりえるため治療法が存在しなかった時代には最大の死因であった。タンパク尿や浮腫(むくみ)など症状があり、ネフローゼ症候群に発展することもある。血尿からはじまることはまれである。他の腎疾患(膜性増殖性糸球体腎炎、膜性腎症など)の病像を呈する上、その疾患経過は予測不能である。分類法として世界的にWHO分類が用いられている。現在では透析療法によって、死亡の原因となることはない。 神経症状 CNSループス(central nervous system lupus)中枢神経症状で、痙攣、髄膜炎、精神症状(うつ症状、統合失調症様症状、自殺願望・希死念慮ほか) うつ症状は自殺の原因となりうるので重要であるが、治療薬であるステロイドの副作用としても起きうる。さらには慢性の疾患である本症にかかっているという事実そのものが、人体の正常な反応としてうつ症状をおこすことも多い。 痙攣は、細菌性髄膜炎などによる可能性がある(本症では免疫能が低下していて感染症にかかりやすい)ほか、抗リン脂質抗体症候群による脳梗塞後遺症としても起きうる。 血管炎を反映した多発単神経炎がおきうるほか、急性炎症性多発性根神経炎としてギラン・バレー症候群のような症状を呈することもある。横断性脊髄炎も有名な症状であるが抗リン脂質抗体症候群と関連した病態である。 心血管症状 漿膜炎としての心外膜炎や、リーブマン・サックス心内膜炎、心筋炎を発症することがある。心外膜炎は、重症であれば心タンポナーデの原因となる。 近年は、ステロイドの副作用の影響を除外してもなお、本症そのものが虚血性心疾患の増悪因子であることが明らかとなっている。 肺症状 漿膜炎のひとつとしての胸膜炎は頻度が高い。いっぽう、通常自己免疫疾患にみられやすい間質性肺炎や肺高血圧の頻度はあまり高くない。むしろ起こりやすいのはニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス肺炎である。びまん性肺胞出血を伴う急性ループス肺炎がおきることがある。抗リン脂質抗体症候群に基づく肺血栓塞栓症も起こる。 消化管症状 悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹痛などが起きうる。原因としてはタンパク漏出性腸症、腸間膜血管炎などがありループス腸炎と称される腸の非特異的炎症もおこりうるがまれとされる。それらの腸症状の原因はときにループス膀胱炎であることがある。結核性腸炎やサイトメガロウイルス性腸炎との鑑別が必要。 血液症状 汎血球減少(血小板・赤血球・白血球の減少)。そのため、易感染や易出血性、全身に出血斑が生じたり、貧血の原因となったりする。凝固能異常は通常抗リン脂質抗体症候群または血小板減少(この症状のみが先行する時は、特発性血小板減少性紫斑病 idiopathic thrombocytopenic purpra: ITPと診断される事がある)が原因で、血液がかたまりやすくなる(そのため肺血栓塞栓症、脳梗塞などの原因となる)ほか、抗リン脂質抗体症候群は習慣性流産の原因となる。赤血球減少(貧血)は溶血性貧血であり、自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia: AIHA)と呼ばれる。ITPとAIHAの合併する状態をエヴァンズ症候群と呼ぶが、実は本疾患の先行症状である事が多い。 脳血管障害による症状 視神経が傷害され急に失明することもある。初期症状は不眠や集中力低下とも言われるが多彩で一言で言い切れるものではない。急性の経過、慢性の経過、ありとあらゆることが起きうる。ループス頭痛(lupus headache)と呼ばれる頭痛も起こす。 肝臓、膵臓 特にルポイド肝炎とよばれる慢性肝炎がおきるが、本疾患に特徴的な病理学的変化があるわけではない。本症そのものによる症状であるのかどうかについて疑問を呈する向きもあるが、本症発症時には脂肪肝や原発性胆汁性肝硬変等の肝機能障害があらわれるのが通常である。本症による膵炎や治療薬として用いられるステロイドの副作用としても膵炎が起きうる。 腹膜 漿膜炎としてのループス腹膜炎の頻度は高くない。 膀胱 自己免疫的に生じる間質性膀胱炎がおきることがあり、ループス膀胱炎と称される。炎症は膀胱を超え腹膜、腸におよび、初期症状は腸症状であるとされる。日本で初めて提唱された概念であるが国際的にはあまり認知されていない。
※この「部分症状」の解説は、「全身性エリテマトーデス」の解説の一部です。
「部分症状」を含む「全身性エリテマトーデス」の記事については、「全身性エリテマトーデス」の概要を参照ください。
- 部分症状のページへのリンク