連邦地方裁判所判決「ウォーカー判決」と米政府見解
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「日本の慰安婦問題」の記事における「連邦地方裁判所判決「ウォーカー判決」と米政府見解」の解説
2000年9月21日、サンフランシスコ連邦地方裁判所は「日本国との平和条約において請求権は決着済み」「追加賠償を求めることは同条約によって阻まれている」として元米兵や元連合軍人らの集団訴訟12件に対して請求棄却した。集団訴訟の請求内容が日本国との平和条約に密接に関係するため、サンフランシスコ連邦地方裁判所のボーン・R・ウォーカー(英語版)判事が「アメリカの連邦法や条約に関わる訴訟は連邦裁判所が裁判管轄権を有する」として27件を一括処理した。ウォーカー判事は、元軍人による13件の訴訟については、連合国が対日賠償請求権を放棄した日本国との平和条約14条に抵触することは明白とし、さらに原告が日本国との平和条約26条について「日本は他の六カ国との協定で賠償責任を認める好条件を出したから、連合国国民も請求できる」と主張した件については「26条の適用請求を決定するのは条約の当事者である米国政府であって、原告個人ではない」と却下した。他方、中国・韓国人・フィリピン人らの集団訴訟には他の争点があるため審理継続とされた。 2000年10月31日、米上院は「強制労働被害者と日本企業の賠償問題について政府は最善の努力をすべき」とする決議案を全会一致で可決した。 2000年12月13日の法廷でウォーカー連邦裁判事は5件を請求棄却し、これにより元軍人の請求はすべて棄却され、「戦後補償は平和条約で解決済み」とする日米両政府の立場が司法判断で確認された。被告側のマーガレット・ファイファー弁護士は「フィリピンは平和条約を批准しており、賠償請求権はない」とし、条約締結国でない韓国と中国については日韓基本条約と日中共同声明が日本国との平和条約の枠内にあり、請求権は放棄されていると述べ、また米司法省代理人も「カリフォルニア州法それ自体が合衆国憲法に違反し、アメリカと日本、韓国、中国、フィリピンの国際関係を破壊するもの」と指摘した。 クリントン民主党政権下の米政府の意見書では .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}「平和条約は中国や韓国との賠償問題については二国間条約で解決するよう求め、日本はそれを果たした」「こうした各条約の枠組みが崩れた場合、日本と米国および他国との関係に重大な結果をもたらす」 と明記された。 2001年5月、共和党ブッシュ政権下の司法省はワシントン地裁に法廷助言(アミカス・キュリエ)を行い、「日本国との平和条約の解釈が論点となる訴訟の管轄権は連邦裁判所に属する」とし、またアメリカ政府は外国主権者免責法にもとづき日本政府の要請を支持すると表明した。2001年6月にはアメリカ上院司法委員会の公聴会で国務省・司法省ともに「訴訟は無効」とした。 2001年9月4日、元米兵が日本政府に1兆ドルの賠償金を請求して提訴。9月6日に、米国務省のバウチャー報道官が対日賠償請求運動について「平和条約で決着済み」と声明を出しさらに8日にはパウエル国務長官が同見解を述べた。 しかし、9月10日には米上院で、司法省と国務省が対日賠償訴訟に関して意見陳述を行うことを禁じる修正条項法案が可決した(提案者は共和党ボブ・スミス上院議員)。2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が発生。10月には元駐日大使のトーマス・フォーリー、ウォルター・モンデール、マイケル・アマコストが修正法案は「米国の安全保障に緊要な条約の破棄になりかねない法案」であり、「訴訟に根拠を与えるいかなる措置も平和条約の重要な条項に違反する」として、日本国との平和条約は米国の太平洋地域の安全保障の要石であり、またドイツは連合国と平和条約を締結しなかったが、日本はドイツと異なり明確に決着したこと、また元軍人には日本からの接収資産から一人3000ドル(2万3000ドル)の補償もすでに行われていると批判した。11月20日、米国議会は上下両院で可決した修正法案を最終審議の議会両院協議会で抹消した。 2001年9月17日、米連邦裁ウォーカー判事は中国・韓国・フィリピン人による対日賠償請求訴訟について「フィリピンは平和条約を批准しており、賠償請求をできない」、中国・韓国人については「ヘイデン法が憲法違反であり、したがって訴訟も無効」と判決し、訴えを却下した。原告は控訴。 2001年10月4日、ワシントン米連邦地裁は慰安婦訴訟について日本側の主張を認め請求棄却。原告側はD.C.巡回区控訴裁判所(高裁)へ控訴。
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