軍隊(自衛隊)における給食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 06:18 UTC 版)
世界的に日本の自衛隊を含む軍隊の内部においては、勤務内容に応じて様々な形態の食事が隊員にあてがわれる。主に駐屯地・基地・艦艇ほか関連施設内における給食では、勤務や訓練で消費するカロリーをとにかく補給させるため、比較的ボリュームに富む場合が多い。調理は大胆を極め、人体に安全なレベルにまで希釈した漂白剤でキャベツの千切りを殺菌する場合もある。これは衛生面を意識したHACCPによるものである。如何なる事態でも隊員の健康状態が重視される事から、調理器具や食器の洗浄など、衛生面における配慮は厳密に成されている。 しかし自衛隊の給食は近年格段に味が良くなっており、基地・駐屯地によってはレストラン並みの食事が支給される所もある。これは基地に所属する栄養士の関与が大きく影響し、基地・駐屯地ごとの差が大きい。また陸上自衛隊に比べ海上自衛隊、航空自衛隊の給食の方が味が良いと言われている。これは陸自の場合は人員すなわち一度の調理量が多く、また調理に当たる隊員の多くが専任ではなく、一般隊員が交代で差し出されることになっているため、どうしても味が大味になるとのことであったが、2020年代に入り、一般隊員を自衛官の本来業務に就かせるために民間業務委託させている。海自、空自の場合は調理に当たる隊員は専門職であり、徹底的な調理の教育を受け実施している。海自では入港前日夜に「入港ぜんざい」として白玉入りぜんざいが出される。旧日本軍(陸海軍)ではこれらの給食を兵食(へいしょく)と称しており、日本陸軍では『軍隊調理法』といったレシピ集(マニュアル)によって炊事担当の兵が調理を行い提供されていた。一例として日本陸軍における兵食については軍隊調理法#兵食を参照。 また有事や演習では食事を悠長に楽しんでいられないことから、基礎訓練の段階では早食いを叩き込ませ、特にアメリカ海兵隊のブートキャンプでは、新兵は教官である練兵軍曹よりも後に食べ始め、且つ先に食べ終わらねばならず、私語も禁止とされる。その一方で、食事は隊員の大切なレクリエーションでもあるため、土曜日・日曜日などの特定の曜日や祝日・記念日には人気の特別メニューが組まれる場合も多い。アメリカ軍では給食が支給されるのは下士官兵のみで、自弁調達が基本である将校が給食を喫食するのは料金を支払った場合か、戦地では給食支給に限られる。自衛隊や旧日本軍においても無料で給食(兵食)が支給されるのは曹士(下士官兵)のうち基地・駐屯地内に住む営内者(営内居住者)であり、営外者(営外居住者)である幹部(将校准士官)、一部の曹士(下士官兵)、事務官等職員(軍属高等官)は自弁調達および有料支給である。 また演習地や戦場といった野外では、後方で調理された給食が大型容器で部隊に配られたり、レーションと呼ばれる缶やレトルト入りの携行食が提供される。後者は屋外で手やスプーン・フォーク等の簡単な道具を用いて、高いカロリーを短時間で摂取できるよう配慮されている他、チョコレートや飴玉などの菓子類が付属している。これら菓子類は、カロリー摂取もさることながら、将兵の士気向上や気力の維持に役立つと考えられている。食事は戦闘で感じるストレスを緩和させる重要な娯楽でもあるため、これらの食事は見た目や味に逐一改良が加えられ、メニューも飽きないように増やされている。ただ、保存性や輸送の便が優先された結果として、見た目や風味などの要素が犠牲になっているレーションも見られないではない。たとえばアメリカ軍採用レーションは「兵士を飢えさせず健康を維持する」という機能性の面では合理的だが、常に改良を受けているとはいえ、風味の面での悪さが揶揄の対象になるほどである(MRE)。
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