裁判および有罪判決
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 03:15 UTC 版)
2021年6月23日にファスト映画の投稿について著作権法違反で初めて逮捕者3名が発生。同年11月16日にファスト動画投稿の著作権法違反裁判で初めて有罪判決が言い渡された。判決では「著作権者が正当な対価を収受する機会を失わせ、映画文化の発展を阻害しかねない」とし、懲役刑および罰金刑の判決が下された。判決言い渡し後、大川裁判長は3被告に対し「ファスト映画を作成し公開することはあなた方が思っている以上に重い罪です。今後予想される著作権者からの損害賠償請求には誠意をもって対応するよう努めてください」と説諭、「本判決等により、ファスト映画の違法性が一段と周知された後もファスト映画の作成や公開が横行するのであれば、その量刑傾向は重い方向にシフトすべきである」と述べ、安易な著作権侵害に警鐘を鳴らした。そして翌年の5月19日には、大手映画会社など13社は3人に総額5億円の損害賠償を求める訴えを起こした。海賊版対策などを行うコンテンツ海外流通促進機構(CODA)は「今回の判決は妥当であり、『ファスト映画』という著作権侵害のさらなる被害の拡大を防ぐための大きな成果として捉えています。クリエイターらが時間、労力、費用をかけて制作した著作物を無許諾で利用し、広告費などから暴利を得る行為は決して許されることではありません。今後とも引き続き『ファスト映画』をはじめとする日本コンテンツの不正利用の一掃と著作権の適正な保護に努めてまいります」とコメントしている。 摘発に協力した中島博之弁護士は「初公判では、被告人らが権利侵害主張を行ってきた映画会社をピックアップし、その会社を避けてファスト映画投稿を行い、作品の削除を回避し、YouTubeアカウントが停止されないように計画的、組織的に運営されていたことが明らかとなりました。」と述べた。また、「映画が作られるまでには映画会社、監督、演者、関係者など多くの人々の労力、時間、費用がかかっています。何の製作の苦労もしていない第三者が、映画に関わった方々の表現意図・思いなどを無視して、映画を無断で編集して次々と投稿し、利益を得ようとする行為は悪質としかいいようがありません。」、「今回、判決では映画を無断で編集して短くまとめて投稿する、いわゆるファスト映画作成の過程が著作権のうち翻案権も侵害していると明示されました。映画に関わった方々の表現意図・思いなどを無視して、映画を無断で編集する行為も犯罪と認定して頂き、映画製作にかかわった人々の思いに寄り添った判決とも言えます。」とし、CODAなどの権利者団体と協力し対応していくとコメントしている。 2022年2月15日、ファスト映画の投稿により著作権法違反罪に問われた神奈川県座間市の人物を逮捕。取り調べも「一筋縄ではいかなかった」とされ、弁解録取の際には「この逮捕は憲法違反だ」、「ファスト映画は著作権法で定める『引用』の範囲内の行為だ」と話し、容疑を否認した。検察官は論告求刑で「その動画の視聴者が別途対価を支払ってその映画を鑑賞する機会を奪う行為で、映画の収益構造を根本から破壊して、甚大な経済的損失を与えるものである」と指摘。「ファスト映画の公開で多額の収益を得ていて、その動機に一切の酌量の余地はなく、さらには当初は「引用の正当な範囲内である」と主張して犯行を正当化しており、その身勝手な態度は強く非難されるべき」として、懲役2年、罰金200万円を求刑。同年5月19日に仙台地裁は、懲役2年、執行猶予4年、罰金200万円(求刑懲役2年、罰金200万円)の判決を言い渡した。 大川隆男裁判長は判決理由で「映画の著作権者が正当な対価を収受する機会を失わせ、厳しい非難に値する。被害額は多額で、生じた結果は重い」と指摘した。
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