粟生線活性化協議会の発足と公的支援
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「神戸電鉄粟生線」の記事における「粟生線活性化協議会の発足と公的支援」の解説
神鉄は2009年から粟生線の路線維持・利用促進・活性化のための広報活動を本格的に展開、パンフレットや自社ウェブサイトなどを通じて沿線住民に対し粟生線利用を呼びかけるようになった。また同年、兵庫県、神戸市・三木市・小野市との協議機関として粟生線活性化協議会を発足させた(委員は神戸電鉄と沿線三市。県は立会人)。その第1回会議が2009年12月11日に開かれ、その後も継続して開催されている。神鉄は協議会において「利用客を維持しサービス水準も守れるようにしたい」という考えを示しているものの、朝夕時間帯以外の減便や運賃値上げ等も検討せざるを得ないとの見通しにも言及。神戸電鉄全体の業績は伸びており、鉄道事業の営業成績も概ね良好に推移している中、粟生線の収支のみ悪化するという状態が続いているため、最悪の場合は路線を廃止することを視野に入れ、バス転換した際のコストのシミュレーションまで行っている。2010年、粟生線活性化協議会ではシンボルマークやキャラクターを募集するなど粟生線への関心を呼び起こす活動を展開。また現役時代に粟生線を利用していたであろう高齢者など交通弱者に粟生線の利用・回帰を促すため、2010年10月には粟生線活性化協議会の協力により70歳以上を対象にしたフリーパス「神鉄・高速シニアパス」の販売を開始した。 そのような中、神鉄は粟生線の存廃について2011年度中に判断する方針を固めた。赤字額が10年連続で10億円を超える見込みとなった上、利用促進策への国の補助も2011年度で打ち切られることや、2009年度の経常赤字は12億7千万円であり、2010年度も赤字が10億円を超える見込みのため、結論を急ぐことになった。2011年6月、神鉄は沿線三市に対し粟生線の上下分離方式(公有民営方式)による存続案を示し、押部谷駅 - 粟生駅間18kmの鉄道用地と駅などの施設の買い取りを要請した。神鉄側が示した資産買い取り総額は計68億円、うち鉄道用地が約13億円、駅などの施設約55億円、また市別では三木市40億円、小野市26億円、神戸市2億円であり、買い取り後三市には神鉄に対し鉄道用地と駅などの施設の無償貸与することと、施設修繕費などの負担も求めるというものであった。ただ神鉄の提案通りに上下分離方式を導入したとしても、2012年度は約7億5千万円の赤字、2021年度には9億3千万円の赤字になるという試算も提示、粟生線が極めて逼迫した状況にあることが改めて明らかにされた。これに対し三市とも上下分離方式は受け入れ困難であると回答した。三市は、既に多年にわたり粟生線の赤字補填を行っており、乗客数や旅客運賃収入が低迷している以上更に赤字補填を継続することになる可能性が高く、それに加えて資産も買い取るとなると三市の財政負担が非常に大きくなることや、神鉄の試算に示された通り上下分離方式を導入したとしても抜本的な赤字体質からの脱却は実現しないことなどを指摘。仮に神鉄側が資産買い取り価格を下げたとしても受け入れられないとの意向を表明。沿線三市による支援策は行き詰まることになった。 これを受けて2011年12月28日、神戸電鉄本社で神鉄と関係自治体による会合が行われ、兵庫県の主導で新たな支援の枠組みを協議し、2012年1月末までに存続の結論を出すことになった。2012年2月7日に井戸敏三兵庫県知事は定例の記者会見で、兵庫県・沿線三市が神鉄と協定を締結し、2012年度から5年間無利子で40億円を貸し付け、その間に神鉄にコスト削減などの経営努力も求めながら2016年度までに全線の黒字化を促すと発表、2012年度の廃止は免れることとなった。5年間のうち2012年度・2013年度・2014年度の3年間については旅客運輸収入の目標値を定め、中間の年である2014年度にその達成状況を検証した上で、2015年度・2016年度の目標値の設定や助成期間・方法等の再検討を行うことになった。また一定以上の減収があった場合、三木市と小野市が合わせて最大計1億円を収入補填することになった。 パブリックコメントで提出された意見として、割引企画乗車券の発売や神姫バス程度まで運賃値下げを求める意見があり、2012年2月25日から平日昼間と土休日に使用可能な「粟生線〜三宮 平日昼間&土休日お得きっぷ」が発売された。一方で神姫バスも平日昼間と土休日に使用可能な、チャージ金額が1.3倍(プレミア+30%)となる徳用NicoPaを設定している。 粟生線の大幅な赤字が伝えられるようになってからも沿線住民の反応は鈍い状態が続いていたが、廃止の可能性が言及されるに至った状況を受け、2012年4月、住民団体「粟生線の未来を考える市民の会」(略称「あおみかん」)が結成され、沿線住民による支援運動が組織化された。また活性化協議会は同年7月に「粟生線サポーターズくらぶ」を設立、粟生線の利用促進や活性化を支援する個人や事業者を募集した。一方同年5月19日、神戸電鉄は粟生線の一部区間の昼間時運行本数を大幅に減便するダイヤ改正を行った。平日・土休日とも日中毎時4本のうち、3本を志染発着(急行1、準急2)、志染-粟生間を毎時1本(急行)とした。急行通過駅(藍那・木津)のための普通などの増発は設定せず、急行通過駅も便数削減となった。さらに通勤時間帯も数本減便したほか、新開地発粟生行きの終電(普通)を30分、新開地発小野行きの終電(準急)を15分繰り上げた。神鉄は「路線そのものの維持・存続のための「収支改善計画」の一環」と説明した。
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