筑後川流域
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「昭和28年西日本水害」の記事における「筑後川流域」の解説
筑後川では、上流部の大分県日田郡上津江村(日田市上津江町)上野田にある建設省の観測所で5日間の総降水量が1,148.5ミリに達したのをはじめ、熊本県阿蘇郡小国町宮原で1,002.6ミリ・時間雨量90.2ミリ、小国町小国で994.6ミリなど本流(大山川)流域で平均900ミリ、支流の玖珠川流域で平均700 - 800ミリの豪雨が降り注いだ。このため筑後川の水位は、6月25日22時に治水基準点である久留米市瀬の下観測所で警戒水位の5.14メートルを超え、以後一時間ごとに60センチ上昇。日田市では計画高水位を6月26日14時の時点で過去最悪の水位を突破した。6月26日以降、筑後川の水位は8 - 9メートルまで上昇し、堤防天端すれすれの状態が6月27日まで続き、警戒水位を下回る平常の水位に戻ったのは、7月2日以降になってからであった。 本流および支流・玖珠川の膨大な濁流は、日田郡夜明村(日田市)から浮羽郡浮羽町(うきは市)・朝倉郡杷木町(朝倉市)間の夜明峡谷に集まり、一挙に筑紫平野に流入した。この地点には、当時九州電力が水力発電専用ダムである夜明ダムを建設中であったが、濁流は夜明ダム堤体に激突。九州電力は水門を全開して濁流からダムを守ろうとしたが、濁流はダム両岸をえぐるように流れ、25日夜半から翌26日午前中にダムは左岸の発電所取水口と右岸の国道386号から決壊、ダム本体に据えつけられた水門も3門吹き飛んだ。その後濁流は、1674年(延宝2年)に建設された大石堰に激突し、ここで堤防を決壊させ、浮羽町役場をはじめ町内すべてを水没させた。 堤防を決壊させた濁流は浮羽郡各所に流入、支流の巨瀬川の洪水と合流し巨瀬川の堤防を決壊させ、さらに吉井町・船越村・江南村(うきは市)の筑後川堤防も相次いで決壊した。田主丸町(久留米市)では橋梁がことごとく流失、町内は水深1メートル以上の浸水となった。原鶴温泉街も完全に水没し、筑後川南岸は一面が海のようになったと伝えられている。筑後川北岸の朝倉郡でも甘木町・蜷城村・朝倉村・大福村(朝倉市)で堤防決壊が多発してほぼすべての地域が浸水。三井郡では、小郡町(小郡市)などを除き完全に外部との交通が遮断され、数日間陸の孤島と化した。 久留米市では、東櫛原町など数か所で堤防が決壊し、東・西・北の三方向から一挙に市内に濁流が流れ込んだ。東櫛原町の堤防では、決壊の一時間前より堤防上を洪水が越流しはじめたが、その様子はあたかも滝のようであった。決壊した堤防から流出した水は久留米市内に押し寄せ、国鉄久留米駅、久留米大学医学部附属病院など久留米市中心部をことごとく水没させ、市内の80%が浸水した。水位は市内中心部の明治通りにある旭屋デパート(のちの久留米井筒屋)前で約1メートル、もっとも深い場所では約3メートルに達した。道路も国道3号久留米大橋、国道264号豆津橋をはじめ、小森野橋、宮ノ陣橋、両筑橋、恵蘇宿橋、原鶴大橋が流失または損壊し、国道3号は佐賀県三養基(みやき)郡鳥栖町(鳥栖市)と久留米間が完全に不通となった。特に、小森野橋では、橋の補修作業を行っていた作業員5人と作業を見物していた住民20人を乗せたまま橋が流される災害となった。 筑後川流域における被害は、死者147人を出したのをはじめ、堤防決壊・崩落84か所、護岸崩壊38か所、道路損壊1,889か所、橋梁流失948か所などにおよび、家屋の被害も下表に示す通りとなった。被災者数は54万4,060人、被害総額は約32億8,700万円(現在の金額で約231億7,000万円)にも上った。浸水した区域は筑紫平野のほぼ全域であり、東は夜明ダム直下、西は佐賀市の嘉瀬川堤防、南は矢部川堤防、北は筑紫野市の宝満川流域にまでおよび、さながら有明海が内陸山沿いまで海域を拡大したかの様相を呈した。1890年(明治22年)の洪水、1921年(大正10年)の洪水と並んで、この水害は「筑後川三大洪水」とも呼ばれている。 福岡県内における筑後川流域市郡の被害状況市郡名死者行方不明者負傷者全壊家屋数流失家屋数半壊家屋数床上浸水床下浸水道路損壊橋梁損壊被災者数久留米市 5 0 274 336 409 2,380 4,880 9,284 10 6 82,351 浮羽郡 7 0 965 213 162 206 3,748 2,752 11 81 42,405 朝倉郡 15 4 669 133 91 861 1,349 1,998 41 74 24,883 三井郡 8 0 1,094 384 47 812 6,717 1,190 285 86 55,737 三潴郡 2 0 1,104 29 0 122 16,675 3,925 249 183 124,132
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