突然の倒壊
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/21 05:29 UTC 版)
「大湫神明神社の大スギ」の記事における「突然の倒壊」の解説
大スギは何度も落雷の被害に遭っていたが、そのたびに生き延びていた。2004年(平成16年)5月31日に雷が直撃し、大スギの先端が枯れ始めた。このときは大スギの最上部7メートルを切り詰めて枯損を防いだ。 2005年(平成17年)に瑞浪市の文化課(のちにスポーツ・文化課となる)が大スギの調査を実施した。その結果は樹勢衰退度は5段階のうち軽い方から2番目ということであった。この結果は、住民たちに大スギの今後について危惧させることになった。2012年(平成24年)には住民たちが枝を払ったり根元をカヤで覆って根の損傷を防いだりして、地域のシンボルとして大スギの保護に努めていた。 行政も大スギの保護に動いていた。2010年(平成22年度)末から大スギの保護を目指して瑞浪市と岐阜県の文化財保護事業の補助を受けた維持保存措置が実施可能となり、2012年(平成24年度)の夢づくり地域交付金事業費(ステップアップ型)の活用が承認された。同年1月から、現地調査などを行った上での保存措置が約7,800,000円の予算をかけて行われた。この調査の過程で、大スギが過去に3回程度落雷の被害を受けていたことが判明している。 大スギの最期は、突然のことであった。2020年(令和2年)7月は、梅雨前線の停滞などの影響によって日本各地に豪雨が続いていた。瑞浪市にも土砂災害警報情報が発令されていたが、7月11日の夜は一時的に雨の勢いが弱まっていた。 同日午後10時40分ごろ、神社近くの住民から「杉が倒れた」と通報があった。倒れた方向にはイチョウの木が生育しており、その木にもたれかかるようにゆっくりと倒れた様子であったという。人的被害は出なかったが、隣の住宅の一部が破損し、電線を引っかけたために停電(大湫地区の40世帯)も発生した。大スギが住宅の出入り口をふさいだために、出入りができなくなった住人もいた。 折れた大スギは根元付近から抜けるように倒壊していて、豪雨の影響で地盤が緩んだことが原因とみられる。近くに住む女性の証言によれば「バサバサ」という音が聞こえた後に大きな音がして停電が発生した。女性が驚いて外に出たところ、「目の前が杉の木で埋まっていた」という。 倒壊の翌日から、現地では大スギの撤去作業が始まった。作業に取りかかっていた地元の男性は「根の周りの土を入れ替えたりして手は尽くしてきたが、いつかは倒れると思っていた。けが人が一人もでなかったことが救い」と取材に答えていた。倒壊のニュースを見て三重県から大湫まで駆けつけてきた造園業の男性は、大スギの巨大さに対しての根の浅さを指摘し「この10年ほどで風水害で倒れる巨木が増えた気がする。何らかの対策に力を入れるべきだろう」と述べている。 同月16日、大スギの下敷きとなって押しつぶされた蔵に収められていた木剣がほぼ無傷の状態で発見された。この木剣は、2013年(平成25年)に地元に住む彫刻家の男性が大スギの枝で作って奉納したものであった。地元の人々は倒壊で人的被害が出なかったことに続く「奇跡」として喜び、制作した男性も「地域や僕の気持ちの勇気づけになる。そりゃあ、うれしい」と同じく喜びを語った。剣は製作者が自ら汚れを落とした後、神社の復旧後に再度奉納する予定である。
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