環境問題に伴う深夜放送の是非
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 17:55 UTC 版)
「深夜番組」の記事における「環境問題に伴う深夜放送の是非」の解説
かつて第1次オイルショックの頃には、省エネルギーのために民放各局は郵政省(現:総務省)によって深夜24時以後の放送を休止し、NHK総合とNHK教育は日中も一部放送を休止、さらに独立県域UHFの一部では日中の放送を休止してカラーバーを放送するか停波の状態にして、夕方~夜間の時間帯のみに放送した時期があった。 2008年に京都議定書の効力が発生し、日本にとって二酸化炭素排出量の削減は待ったなしとなった。このため、政府・与党内で「対策の一環としてテレビの深夜放送を自粛すべきだ」という意見が浮上していた。こうした意見を行う議員の念頭には、1970年代のオイルショック時に深夜放送を自粛した事があるものと見られている。 しかし、NHKは災害対策基本法などの有事諸法制度により緊急時に行政からの情報を放送で伝える義務を負っており、終夜放送に本腰を入れる事になったのもこれが前提となっている。さらに、2007年10月1日から緊急地震速報制度が始まった事がこれに拍車をかけている。実際、一旦放送用の送信機の電源を切ると、再起動させ放送が可能になるまでに30分程度要し、緊急放送に対応することが出来ない。NHKが休止する場合は、こうした非常事態への対処をどうするのかという問題が重くのしかかることとなる。また、災対法では義務を負っていない民放も近年整備された有事諸法ではNHK同様の義務があるため、法令義務をどう担保するかという課題が浮上する事となる。また、生活の多様化やテレビの個人所有が進んだことなどにより、かつてはと違い、深夜・早朝であっても少数とは言え一定の視聴者が存在しており、そのニーズを無視出来ないという面もある。 NHK教育テレビ(2011年6月より「NHK Eテレ」)は2000年4月から、総合テレビの放送休止を補完する目的も含め、第2・4日曜深夜と特定メンテナンス日(地域単位)を除く毎日24時間放送を行っていたが、一連の不祥事などからの立て直しのため、2006年4月に24時間放送を廃止、3・4時台を休止枠に充てていた。 NHKの福地茂雄会長(当時)は、2008年4月の『地球エコ2008』で、上記の影響を受けない教育放送系統のさらなる放送時間短縮を検討していく事を明らかにしていたが、同年7月の定例会見で、秋改編に於ける実行を検討している事を発表した。 そのテスト例として、同月6日は第1次オイルショック以来34年ぶりとなる23:00での放送終了となり、7日(翌日)5:00まで放送休止となった。しかし、翌朝の「NHKニュースおはよう日本」の放送開始前(4:30)までに「2008ウインブルドンテニス男子決勝」が決着しなかったため、教育テレビの7日の放送開始時刻を当初予定の5:00から4:25に急遽前倒しした上で、4:30から教育テレビで試合終了(5:35で番組終了)まで放送する皮肉な結果となった。これは「おはよう日本」のその日のメインニュースが「洞爺湖サミット」関連ニュースを中心に放送していたための緊急処置と見られる。 なお、同年9月のNHK首脳定例会見に於いて、次期経営計画案を先取りする形で、具体的な方針が明らかにされた。教育テレビの深夜の編成を抜本的に見直し、アナログ放送については通常放送終了後停波、砂嵐を復活させるというものである。なお、当初検討されていた「高校講座ライブラリー」の廃止についてはデジタル技術の積極的活用を謳った次期経営計画との絡みやNHK学園高校の態勢作りとの関係もあり、先送りされた模様である。 同年12月29日には、「-地球エコ」のキャンペーンによる放送時間短縮実験の第2弾として、当日の放送を12時30分-21時30分の9時間のみに設定する試みを行ったが、以後の大規模な放送時間の長時間休止を伴うキャンペーンは行っていない。その後も放送終了が2時台~3時台で推移していたが、2012年度から1時台終了に繰り上げる日も増え、2021年度は水曜深夜のみ1時終了である以外は、原則24時台での放送終了となっており、月・火・木・土曜日は24時台前半で放送を打ち切っている。また早朝放送に関しても、1999年以後5時だったのを、2012年から一部の曜日(主に週末)を除き5:30に繰り下げて、停波(電波送出停止)の時間を拡大して地球温暖化の抑制につなげている。 これについて、前述の2007年12月29日の特番において、「なぜ教育テレビで休止なのか」という問い合わせがあったが、「総合編成を行う、総合テレビ、ラジオ第1、FMラジオでは災害基本法に基づく履行義務で災害時の緊急報道を重要視されていること、また衛星放送は太陽電池で放送波を出しており、それ自体からは二酸化炭素が出ないため、電波を止めたとしても電力削減にはつながらない」という理由から、大規模地震などの例外を除き、緊急報道の影響を受けることが少ない教育テレビ(Eテレ)が選ばれたとしている。
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