球面に関する11の性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 07:03 UTC 版)
ダフィット・ヒルベルトとシュテファン・コーン゠フォッセン(英語版)の著書 Geometry and the Imaginationで彼らは、球面の11の性質を記述し、それらの性質が球面を一意に決定するかどうかについて論じた。それらのうちのいくつかは(半径無限大の球面と看做せる)平面も満足する。それら11性質とは: 「球面上のすべての点は一つの定点から同一の距離にある。また、ふたつの定点からそれら点への距離の比は一定である」[注釈] 前半は球面の通常の定義で、球面を一意に決定する。後半は容易に導かれ、円周に対するペルガのアポロニウスの結果と同様のことが従う。後半の内容は平面も満たす。 「球面の等高線および平面切断はすべて円である」[注釈] この性質は球面を一意に定義する。 「球面は幅が一定かつ周長が一定である」[注釈] 曲面の幅は平行な接平面の対の間の距離として測る。他にもいくつか定幅の凸閉曲面はあり、たとえばマイスナーの立体(英語版)はそうである。曲面の周長 (girth) は、曲面を平面上に直交射影した像の境界の外周の長さである。これらの性質の各々は他の性質を導く。 「球面上のすべてのてんは臍点(英語版)である」[注釈] 球面の法線は球の中心から放射状に延びる直線であるから、曲面上の任意の点において法方向は曲面に直角である。法線を含む平面との交線は「法断面」と呼ばれる曲線をなし、その曲線の曲率を「法曲率」と呼ぶ。多くの曲面に対してその上の点の多くは異なる切断に対して異なる曲率を持つ。それら曲率の中で最大および最小の値を持つものを主曲率と言う。任意の閉曲面は少なくとも四つの「臍点」と呼ばれる点を持つ。臍点にいてすべての断面曲率(特にふたつの主曲率)は等しい。臍点は曲面を球面で極めて近似できる点と見なすことができる。 球面に対しては全ての法断面の曲率が等しいから、任意の点が臍点である。この性質を満たす曲面は、球面と平面に限る。 「球面は中心曲面を持たない」[注釈] 与えられた法断面に対して、断面曲率に等しい曲率を持ち曲面に接する円が存在して、その中心線は法線上に載る。例えば、最大および最小断面曲率に対応する中心点は「焦点」と呼ばれ、そのような中心点全体の成す集合は焦面(英語版)を成す。 大半の曲面では焦面は二葉曲面(それぞれが曲面となるような二つの集合)を成し、ふたつの葉は臍点で交わる。いくつかの場合は特別である:管状曲面(英語版)の場合、一葉は曲線でありもう一葉は曲面となる。 円錐、円筒、トーラス、サイクライド(英語版)の場合は、二葉とも曲線を成す。 球面の場合、任意の接触円の中心は球の中心であり、焦面は一点となる。この性質は球面に対して一意である。 「球面の任意の測地線は閉曲線である」[注釈] 測地線は曲面上の曲線で、二点間の最短距離を与えるものである。これは平面上の直線の概念を一般化するものである。球面上の測地線は大円。この性質を満足する曲面は他にもたくさんある。 「与えられた体積を持つすべての立体の中で、球は表面積が最も小さくなるもののひとつである。与えられた表面積を持つすべての立体の中で、球は最も大きい体積を持つものの一つである」[注釈] これは等周不等式(英語版)から従う。これらの性質は球面を一意に定義し、その定義の仕方はシャボン玉のようなものと思える—シャボン玉は決まった体積を囲んで、その体積に対して表面積は表面張力が極小(最小)化されるように決まる。だから自由に浮かぶシャボン玉は球面を近似する(重力のような外力がシャボン玉の形状をやや歪ませる)。 「与えられた表面積を持つすべての凸立体のなかで、球面は最も小さい全平均曲率を持つ」[注釈] 平均曲率(英語版)は二つの主曲率の平均で、球面は全ての点で二つの主曲率が一定であるから、平均曲率も一定。 「球面は一定の平均曲率を持つ」[注釈] 球面は境界も特異点もなく正の一定平均曲率を持つ唯一の埋め込まれた曲面である。他に一定の平均曲率を持つ埋め込まれた曲面に極小曲面(英語版)がある。 「球面は正の一定ガウス曲率を持つ」[注釈] ガウス曲率は二つの主曲率の積である。ガウス曲率は、曲面上の長さや角度を測ることで決定され、その曲面の空間への埋め込みの仕方に依らないという意味で、曲面の持つ内在的な性質である。したがって、曲面を曲げてもガウス曲率は変わらず、またほかの正の一定ガウス曲率を持つ曲面は球面に小さな切れ目を入れてそれを曲げることで得ることができる。そうして得られた球面以外の曲線は境界を持ち、球面は境界を持たない正の一定ガウス曲率を持つ唯一の曲面となる。擬球面(英語版)は負の一定ガウス曲率を持つ曲面の例である。 「剛体運動の三径数族によって球面は球面自身に変形される」[注釈] 原点を中心とする単位球面について、任意の座標軸回りの回転でこの球面は自身に写る。原点を通る任意の直線周りの回転は、三座標軸周りの回転の組み合わせで表すことができる(オイラー角の項を参照)から、先の球面をそれ自身に写す任意の回転からなる回転の三径数族が存在する(この族は三次元回転群 SO(3) である)。ほかに変換の三径数族を持つ曲面は、平面(この場合の族は、x-軸および y-軸に沿った平行移動と原点を中心とする回転で径数付けられる)に限る。円筒は剛体運動のに径数族を持つ唯一の曲面であり、一径数族を持つ曲面は回転曲面および螺旋面(英語版)に限る。
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