治療の実践例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/14 15:25 UTC 版)
ここに記された内容は細菌感染症の一般的な例であり、細菌の種類や状態によって異なるので注意が必要である。 基本的には発熱のある患者を対象とする。主に抗菌薬の選択の仕方や治療の判定などを行う。感染症を治療するには患者の病態、基礎疾患やリスクを把握した上で病原菌の性質及び感染の部位を内科診断学や微生物学的検査を行い把握し、抗菌薬の知識を用いて適切な治療を行い、その治療が十分であったのかまた検査をする。 どこの臓器で感染がおこり炎症をきたしているのか? 要するに感染の局在を調べるということである。これは問診、身体所見、検査(血液検査や画像検査)などを用いれば比較的容易に明らかとなる。例えば、発熱がありCRPが上昇をした患者が来て、咽頭をみて腫れていたら咽頭炎と診断をしたり、発熱があり黄疸、灰白色便をみとめAST、ALT高値で肝臓の腫大、叩打痛を認めれば肝炎を疑うということである。まれに原因臓器が絞れないこともある。こういうときは混乱するが診断学的には前進している。こういうときは不明熱などになるので、検査などを行ってもわからなければそういった病気を疑い始めればよい。 原因微生物は何かを考える。また感染症以外も念頭に置く まず微生物側の要因として得意な臓器がある。例えば肺炎球菌は下部の呼吸器を好み感染をする。黄色ブドウ球菌は傷ついた軟部組織や血液の豊富な組織を得意として呼吸器、消化器、泌尿器は苦手である。経過も起炎菌の推定に役立つことがある。周術期管理において術後感染症の管理は非常に重要である。術後感染症、手術侵襲に対する軟部組織の感染症が多い。術後すぐに感染症を疑ったら溶連菌を、術後1週間くらい経過してから感染症を起こしたら黄色ブドウ球菌を疑うべきである。また宿主の要因というものも存在する。例えば髄膜炎などは年齢によって起炎菌が異なる。またこういった典型的でない場合に出会ったら、それなりの理由を考えるべきである。例えば免疫障害があるのかもしれない。例えば、好中球減少症があるのかもしれない。こういった日和見感染は化学療法後に起こりやすい。細胞性免疫障害はステロイドや放射線治療、HIVで起こりやすい。液性免疫障害は多発性骨髄腫などで起こりやすい。こういった、全身状態以外に外傷の存在で本来交通していない場所が交通しているなどといった解剖学的な理由も考えるべきである。また市中感染と院内感染の区別も重要である。 実際には起炎菌が何かは検査によって行うのだが、培養、グラム染色といった検査の解釈には癖があるのでそれらについては後述する。有名なやり方では呼吸器感染症では喀痰のグラム染色や尿中肺炎球菌抗原・レジオネラ抗原など、尿路感染症では検尿による亜硝酸、尿沈渣で行う。重篤な感染症ならば血液培養を行う。 感染症治療薬の選択 どういった抗菌薬を選択するのかを考える。これは臨床薬理学を用いることができる。抗菌薬の選択では、患者の病態、病原菌、使用する抗菌薬を把握したうえで、感染の部位、微生物、ホストの関係をみていく。具体的には起炎菌が同定できていれば、その起炎菌に感受性があり、その組織に移行する薬剤を選べばよい。それらを検討するには臨床薬理学を用いればよい。臨床薬理学については後述する。 選択できる抗菌薬は以下のものである。 ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン、マクロライド、ニューキノロン、ST合剤など。 治療効果の判定 やみくもに体温、CRP、白血球数に頼ってはいけない。呼吸数、血液ガス、障害マーカー、グラム染色といったパラメータを参考に経過をおっていくべきである。臓器特異的な感染症の経過観察パラメータを纏める。もちろん特異的な血液検査でも可能だが、急性期に何度も検査できない場合が多いため省略した。 臓器パラメータ中枢神経系 意識レベル(JCS,GCS)、神経所見、髄液所見 耳 耳痛などの自覚症状、鼓膜所見 心臓、血管系 超音波検査、血液培養 肺、気道系 呼吸数、SpO2,投与酸素量、喀痰グラム染色上の白血球数、菌の消失 尿路所見 尿所見、排尿時痛などの自覚症状 消化器系 便性、量、排便回数、腹痛などの自覚症状 臓器を問わない 全身状態、発熱など
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