【殲撃10】(せんげきじゅう)
- 殲撃10
成都(チェンドゥ)の第611航空機設計研究所(成都飛機工業集団公司)が開発した中国人民解放軍空軍の最新鋭戦闘機。
殲撃10の他にJ-10・F-10・殲10と呼ばれるほか、西側諸国では「ヴィゴラス・ドラゴン(猛竜)」と呼ばれている。
基本設計にはイスラエル軍のIAIラビの技術関与が外観からも分かり、ブレンデットウィングボディやカナード、クロース・カップルド・デルタ翼等は今までの中国軍機には無くスタイルを一新している。
第二期生産分以降は、エンジンは殲撃11やSu-27と同じAL-31FをJ-10の仕様に改修した二次元推力偏向型のAL-31FNを使用しており、推力はかなり高い(将来的に国産エンジンの渦扇10A(WS-10A)を搭載する予定で、2008年11月に開催された珠海航空ショーではJ-10の主任試験飛行士の雷強氏により、WS-10Aを搭載したJ-10の試験が既に行われている事が明らかにされた)。
火器管制装置は、ウクライナのものを中国でコピーしたヘルメット目標指示装置と、ミサイルのシーカーを連動させる事も可能になっている。
レーダーは、南京の第14電子技術研究所が開発した「KLJ-3」パルスドップラーレーダーを搭載している。
このレーダーは最大探知距離104~130kmで、15目標を追尾しつつ、2~6目標を同時攻撃できるといわれている。
また、LANTIRNのような前方赤外線・レーザー目標指示ポッド(イスラエルの技術援助で開発)も搭載可能とされている。
なお、一部機体は空中給油プローブを装備している。
武装に関しては、固定武装として23mm連装機関砲を装備し、主翼下面(片方3箇所ずつ。計6箇所)と胴体前後左右と中心線下の5箇所の計11箇所あるハードポイントに、空対空/空対地/空対艦ミサイル各種やロケット弾ポッド・通常爆弾及び雷石6(LS-6)滑空誘導爆弾・飛騰1型/3型(FT-1/3)GPS誘導爆弾・雷霆2型(LT-2)レーザー誘導爆弾など約4.5tが搭載可能である。
初飛行は1998年で、2008年までに80~100機程度が製造されており、月産2機程度のペースで生産が続いている。
現在、浙江省の基地の16機を含む65機が5ヶ所の基地に配備されているほか、パキスタンにもFC-20の名称で輸出されており、36機を導入予定である。
総合的な能力については、まだまだ謎の多い戦闘機である。
現在の所単座型のJ-10A、複座型のJ-10Sの二種類の他、空中給油用プローブを装着したタイプの4種類が存在する。
さらに、IRSTの設置やダイバータレスインテークの採用、機体各部に設計変更を加えたJ-10B(単座型)/J-10BS(複座型)の開発が行われているほか、空母艦載型の開発も進められている。
【スペックデータ】
乗員 1名/2名(複座型) 全長 16.43m 全高 5.43m 全幅 9.75m 主翼面積 45.5㎡ 空虚重量 8,000kg-9,300kg 最大離陸重量 18,000kg 機外兵装搭載量 5,500kg 機内燃料搭載量 4,950リットル エンジン サチュルン/リューリカ AL-31FまたはAL-31FNターボファン×1基(第1期生産分)
瀋陽 渦扇10A(WS-10A)ターボファン×1基(第2期生産分以降)推力 79.3kN(ドライ出力)/122.6kN(A/B使用時)
89.17kN(ドライ出力)/129.4kN(A/B使用時)(WS-10)最大速度 マッハ2.2(高空)/マッハ1.2(低空) 許容G +9G/-3G 海面上昇率 N/A 実用上昇限度 18,000m フェリー航続距離 1,000nm(増槽使用時) 戦闘行動半径 300nm 固定武装 23mm連装機関砲×1門 兵装 空対空ミサイル:露靂8・露靂9・露靂11・R-73・R-77
空対艦ミサイル:鷹撃8(YJ-8)・Kh-31A(AS-17「クリプトン」)
対レーダーミサイル:鷹撃91(YJ-91)
爆弾:通常爆弾・雷霆2(LT-2)レーザー誘導爆弾・雷石6(LS-6)滑空誘導爆弾・
飛騰1/3(FT-1/3)誘導爆弾
ロケット弾/増槽類:ロケット弾ポッド、増槽等
【派生型】
・J-10A:単座基本型。輸出仕様のF-10Aも存在する。
・J-10AH:海軍航空隊向け。
・J-10S:複座の訓練・多用途任務型。
・J-10B:2009年に確認されたA型の改良型。インテークの形状変更やIRSTの搭載が行われている。
・J-10BS:B型の複座型。
・FC-20:パキスタン向け輸出仕様。
- 殲撃10
1960年代から1970年代にかけて第112航空廠(後の瀋陽飛機航空工業集団)で開発が行われた同名の戦闘機。
こちらは、MiG-25やMiG-31に匹敵する大形戦闘機を実用化する事が目指され、機体設計からも肩翼式のデルタ翼や双垂直尾翼形式、2次元式インテークを採用するなどMiG-25の影響を受けている。
しかし、大推力エンジンや充実したレーダー・アビオニクスといったコンポーネントの実用化がネックとなり、実用化には至らなかった。
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