構想段階での混乱
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2011年、県教育委員会は外部有識者や県内教育関係者らによる「県立4年制大学設立準備委員会」(委員長・和田恭良副知事)と県庁内に担当部署として「県立4年制大学設立準備室」を設置、基本構想の立案に入った。2012年9月に県側が提示した学部学科に関する基本構成素案は、短大の学科構成を一切引き継がず発展的に解消、全面改組し、経営系学部の「総合マネジメント学部」を開設、「総合マネジメント」「グローバルこども教育」の2学科を設置するというものであった。しかし構想されていた経営系学部とその教育内容の多くは長野大学・松本大学・諏訪東京理科大学(後述の通り、2018年に公立大学へ移行)など既存の県内私立大学の教育内容と重複するものであった。このため既存の県内私立大学から「県から県内高等教育機関全体についての将来像が何も示されないまま、県の事業によって民業が圧迫される」「少子化が進む中で学生獲得をめぐる競合が懸念される」として一斉に反発、また「六鈴会」は短大の学科を継承しない構想に反対し、開学以来の文科・家政科及び児童科を基本とした学部学科構成とし、特に管理栄養士養成課程(管理栄養士養成施設)を設置するよう要求した。小宮山淳前信州大学長ら有識者からは「検討が不足している」等拙速な基本構想取りまとめに反対する意見が出されるなど、委員会は審議当初から混乱に陥った。県が設立準備委員会に当初示していたスケジュールでは、2012年12月までに学部学科構成を確定し、施設整備専門部会、教育課程・教員選考専門部会を設置し会合を開催、2013年2月には教育課程・教員選考の方針を決定する予定であったが、意見集約には程遠い状態が続いた。長野県議会からも「大学の構想が曖昧」等批判の声が上がり、更に2012年11月に発生した田中眞紀子文部科学大臣の「三大学新設不認可」発言とその後の議論・騒動も影響。2012年中には専門部会設置の見通しが立たず、構想がまとまらない状態であった。阿部知事は記者会見で「詰めていかなければいけないところが多々ある」と述べ、県は11月、開学予定年月を2017年4月に延期した。既存の県内私立大学側は懸念と反発を強め、「六鈴会」は比較的志願者の多い英語英米文化専攻と健康栄養専攻だけでも引き継ぐよう求めるなど、2013年に入っても学部学科構成について賛否両論が提起された。既存の県内私立大学は公設民営大学・公私協力型の大学、県が県内の学校法人を後押しして開学した大学、あるいは県や県内市町村が他地域から誘致した大学など、いずれも私立大学ではあるものの、若年層の県外流出の抑制や大学教育の機会均等という県の教育政策にかかわる観点から、開学に県や地元市町村が相当程度関与した大学がほとんどであるため、いずれも公立学校に準じた地域密着型の教育を掲げている。また県内私立大学側には地域貢献の観点から学費を低廉に抑えるなどの経営努力を行ってきたという意識もある。このため県がこれらとは別に既存の県内私立大学と競合するような学部学科・教育内容を有する4年制大学を経営することについては想定外の方針転換と捉えており、反発は収まらない状態が続いた。議論は単に長野県短期大学の4年制化にとどまらず、長野県の高等教育機関全体のあり方、さらには県内の教育全体をいかなるものにすべきかという問題にまで拡大。県は県内高等教育機関の振興案も併せて検討せざるを得ない状況となった。 結論が出ない状態が続く中、阿部知事は2013年3月の長野県議会一般質問に対する答弁において「県総合5か年計画」の期間が終わる2017年度までの開学を目指す方針を改めて示した。同年5月には県内私立大学側と「県立4年制大学設立準備室」の間で更に意見交換が行われるなどの動きがあったが、同年6月19日、学部学科構成に関して委員会内に異論を残したまま、和田委員長が「議論は尽くされた」として審議を打ち切り、基本構想を取りまとめ、阿部知事に構想案決定を報告した。同案によると、県立4年制大学は1年次を全寮制とし、総合マネジメント学部総合マネジメント学科(定員160名、教職課程併設)、健康発達学部こども学科(定員40名、保育士課程併設)、健康発達学部健康文化学科(定員40名、管理栄養士課程食健康コース併設)の2学部3学科を開設、また将来は大学院も設置する方向で検討するというものであった。管理栄養士養成課程の設置は「六鈴会」などの要請によるものだが、これについては異論反論が噴出した。小宮山前信州大学長が「なぜ食だけを取り上げるのか疑問。決定は時期尚早」と反対、他の委員からも「旧来のものを組み合わせただけ」「資格ありきの発想では目指す人材の輩出はできない」等疑義を呈する意見が相次いだ。小宮山前学長は更に「突然の取りまとめには納得できない。構想案ではどういう人材を育てようとしているのか分からない」と指摘した。
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