東日本大震災と福島第一原子力発電所事故
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「いわき市」の記事における「東日本大震災と福島第一原子力発電所事故」の解説
2011年3月11日の東日本大震災ではいわき市も被災し、震度6弱を観測した。宮城沖から茨城沖の震源域の中間にあたるいわき市は、震度4以上の揺れが3分10秒にわたって続き、これは当震災を観測した震度計の中で最大の長さであった。気象庁の推計震度分布図 によると、市北東部で局地的に震度7相当の揺れがあったとみられている。 翌月4月11日には、いわき市内南西部の井戸沢断層付近を震源とする内陸直下型地震である福島県浜通り地震が発生し、震度6弱を観測した。この地震により井戸沢断層と塩ノ平断層、またいわき市内中西部の湯ノ岳断層が同時多発的に数十キロに渡ってそれぞれずれ動いた。湯ノ岳断層の過去の活動が14万年前の大昔であり、塩ノ平断層に至っては未知の断層で、当震災のひずみにより誘発されたものであると考えられる。これにより、いわき市内の至る所で断層(最大落差2m)や地割れ・亀裂が出現し、土砂崩れも相次いだ。翌日には、湯ノ岳断層付近を震源とした震度6弱の余震も発生した。 この一連の地震活動と津波により、いわき市内の全半壊戸数は宮城県仙台市に次ぐ約4万戸に上り(一部損壊も含めると9万戸)、死者は津波や土砂崩れによるものを中心に400名以上に及んだ。 上記に含め、大熊町で発生した福島第一原子力発電所事故によって市北部が屋内退避区域に指定されるなどの影響もあり、1年半後にいわき市が無作為に抽出したアンケートによると、回答者のほぼ半数が当震災と原発事故により一時的に市外へ避難したと答えた。このため、いわき市ではおよそ15万人が避難したと推測している。3か月ほどでほとんどの市民が戻ったが、半年間で約7,000人の人口が転出した。 福島第一原子力発電所の事故では、歴史的・経済的に繋がりの強かった双葉郡の住民を中心に約24,000人(2013年4月現在) が避難しており、いわき市を転出した住民の減少分を上回っているため、結果的に人口が増加している。だが、そのほとんどがいわき市に住民票を移さず双葉郡内町村に置いたままで住民税の減免を受ながら、原発被災者特例法により避難先のいわき市の行政サービスを受けているので、住民基本台帳の人口ではなく避難者も含めた現住人口に対し、市役所等の業務量は増加しているが税収はあまり増加していない。 いわき市に臨時の役場機能(一部を含む)を置いているのは、楢葉町 と富岡町 と大熊町(原発1 - 4号機所在地) である。また2013年現在、埼玉県にある双葉町役場(原発5 - 6号機所在地)も再移転先を当市に決定し、2013年6月に移転予定である。(予定通り移転し2021年現在も役場機能を置いている。)この4町は住民避難先最多がいわき市であり、浪江町も2,000人以上の避難者がいるので出張所を置いている。広野町も臨時役場を置いていたが、緊急時避難準備区域の解除に伴い2012年3月に帰還した。2013年5月時点で、住民の9割がいわき市に居住している。 いわき市は、被災者用として解体予定だった雇用促進住宅630戸を急遽開放したり、市営・県営住宅を活用したりするなどして、市民に対する仮設住宅の建設は200戸程度であった。一方で、双葉郡の避難者向けの仮設住宅が市内各地に3,300戸以上建設された。 賃貸物件も、被災したいわき市民と双葉郡民によって、多くが借り上げられているほか、東京電力3施設(福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所と広野火力発電所)に関わる社員や、除染作業の本格化による除染作業員や復旧作業員の居住地にもなっているために需要が逼迫しており、2013年4月現在でもいわき市内への転勤者・進学者が入居物件を見つけられない事例もある。賃貸物件の入居待ち予約者が100人以上という賃貸仲介会社もあり、深刻な状況であった。 広野町、楢葉町と居住可能範囲が広がり、東京電力関連社員や除染作業員、復旧作業員の居住地も北部へ移ってきているが、現在地の避難先から故郷に近く気候の似たいわき市へ移りたいという希望は続いている。 住宅地の地価も上昇している。2013年1月1日時点での地価公示地価は泉もえぎ台が10.7%、中央台が10.6%上昇し、住宅地上昇率で全国6位と8位に入るなどいわき市内の住宅地の平均変動率が16年ぶりに前年比プラスになった。これも、いわき市内の通常の需要と被災者の需要に加え、双葉郡内の被災者が帰郷を断念し市内の宅地を購入しているためと考えられる。 この動きは続いており、2014年1月1日時点での地価公示価格は、中央台が11.6%、草木台が11.3%、泉もえぎ台が11.2%上昇し、住宅地上昇率で全国2位と5位と7位であった。さらに2015年1月1日時点での地価公示価格に至っては、泉もえぎ台が17.1%、草木台が14.1%、中央台と泉が丘で13.3%上昇など、住宅地上昇率全国上位10地点すべてをいわき市が占めた。このように、いわき市内の住宅地価が震災前に比べて平均で15%、人気地点で30 - 40%上がる土地バブルに加え、資材の高騰、建築業者不足もあり、住宅購入が大幅に割高になっているため深刻な問題になっている。いわき市も、土地転用を積極的に進めているが解決には至っていない。
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