未亡人
『愛染かつら』(野村浩将) 高石かつ枝は18歳で結婚したが、翌春、夫は風邪がもとで死んでしまった。その時かつ枝は妊娠しており、夫の死後、彼女は娘敏子を産んだ。生活のために、かつ枝は敏子を姉夫婦に預け、看護婦となって津村病院で働く。病院の職員たちは、彼女を独身の娘だと思う。病院長の息子津村浩三が、かつ枝を恋する。2人の身分境遇の差や、彼女が子持ちの未亡人であることなどで、浩三の父母は反対したが、最後には2人は結ばれる。
『青年』(森鴎外) 未亡人坂井れい子は、亡夫・法科大学教授坂井恒の遺産を管理して、派手な暮らしをしている。彼女は、美青年小泉純一を自宅に招いて誘惑し、2度ほど関係を持つ。年末、れい子は「27日に箱根へ参ります。1人で参っておりますので、お暇ならいらっしゃい」と純一を誘う。純一が迷ったあげく大晦日に箱根へ行くと、れい子は、愛人である画家の岡村と一緒にいた。純一は不快になり、元日の朝、東京へ帰る。
★3.未亡人の再婚話。
『秋日和』(小津安二郎) 美貌の未亡人秋子は、適齢期の娘アヤ子と2人で暮している。秋子の亡夫の友人3人が、アヤ子に良縁を捜そう、と話し合う。アヤ子は母秋子のことが気がかりで結婚に踏み切れないのだから、まず秋子を再婚させる必要がある。そこで3人のうちの1人、妻を先年亡くした平山が喜んで候補者になり、話を進める。アヤ子は母が平山と再婚すると信じて、自分も結婚する。しかし秋子は、いつまでも亡夫とともに生きたいと考え、再婚話を断る。
★4.未亡人と寡夫の恋。
『男と女』(ルルーシュ) アンヌの夫は映画のスタントマンで、撮影中に事故で死んだ。彼女は子持ちの未亡人となった。ジャン=ルイはレーサーで、かつてレース中に大怪我をし、妻は悲観して自殺した。彼は子持ちの寡夫となった。彼らの子供が同じ寄宿学校に入ったことから、2人は知り合い、恋愛関係になる。しかしホテルでの行為中も、アンヌは死んだ夫のことが忘れられない。アンヌはジャン=ルイに別れを告げ、列車に乗る。ジャン=ルイは車で先回りし、アンヌを駅で出迎える。
★5.未亡人と妻帯者の恋。
『慕情』(キング) 1949年の香港。未亡人である女医スーインは、パーティで新聞記者マークと知り合う。2人は恋仲になるが、マークには別居中の妻がいた。妻は、マークからの離婚の申し出に応じない。スーインとマークの恋は、周囲からは不倫と見なされ、やがてスーインは勤務先の病院を解雇される。マークは朝鮮戦争の現地取材に派遣され、爆撃を受けて死ぬ。
『真珠夫人』(菊池寛) 処女のまま未亡人となった瑠璃子は、自邸の客間をサロンとして大勢の若い男を招き、彼らの心をもてあそんだ。「男は妾を持つことも、芸妓や娼婦と遊ぶことも許されている。同じことが女にも認められるべきだ」と述べて、瑠璃子は自分の行ないを正当化した。しかし彼女は、誰にも身をまかせることはなかった。純情な青年・青木稔は、瑠璃子に求婚するが断られ、ナイフで彼女を刺す。瑠璃子は、かつて心ならずも別れた恋人・杉野直也を呼び、彼に見取られて死んでいった。
『人間ぎらい』(モリエール) 青年貴族アルセストは、虚偽に満ちた社交界を嫌いつつ、社交界の花形・20歳の美しい未亡人セリメーヌを恋している。セリメーヌが何人もの男たちに恋文めいた手紙を送り、裏ではその男たちを愚弄していることを知っても、アルセストはセリメーヌを思い切れず、「誰もいない砂漠で、2人一緒に暮らそう」と言う。しかしセリメーヌには社交界を捨てる意志などなく、彼女はアルセストの申し出をあっさりと拒否する。
★7.亡夫の莫大な遺産を得た未亡人。再婚すれば、その遺産を失う。
『トレント最後の事件』(ベントリー) 実業家マンダースンが殺害され、画家トレントが素人探偵として事件の真相を究明する。マンダースンの若く美しい妻、今は未亡人となったメイベルに、トレントは恋心を抱くが、彼女が亡夫から得た莫大な遺産に妨げられて、トレントは愛を打ち明けることができない。しかしメイベルは、再婚すれば亡夫の遺産をすべて失うのだった。そのことを知ったトレントは、その場でメイベルに求婚し、メイベルもそれを受け入れた。
『メリー・ウィドウ』(レハール) ポンテヴェドロ公国の未亡人ハンナの財産は、国家財政を左右するほど巨額で、彼女が外国人と再婚して富が流出するのを防ぐため、公国公使が、書記官ダニロ伯爵にハンナと結婚するよう命ずる。ダニロはハンナを愛しているが、財産目当てと思われるのがいやで、求婚しない。ところが前夫の遺言で、ハンナは再婚すれば全財産を失って無一文になることを知り、ダニロは喜んでハンナと結婚する。しかし遺言には続きがあり、財産はすべて新しい夫のものになるのであった。
★8.名士の未亡人。
『礼遇の資格』(松本清張) 国際協力銀行副総裁だった原島栄四郎が、殺人の容疑で取調べを受けた(*→〔パン〕3)。彼の妻敬子は、偽証をして夫を救おうとする。その理由を問う取調官に、敬子は答える。「主人を刑務所に入れては困ります。あの人は老齢なので、そう長くはありません。わたしは、国際協力銀行副総裁の未亡人になりたいのです。それは、良い地位の人と再婚するための、有利な資格になりますから」。
★9.戦争未亡人。
『日本の悲劇』(木下恵介) 春子は戦争で夫を失った(戦死ではなく、空襲による死)。戦後、春子は闇屋になったり、温泉宿の女中をしたりして懸命に働き、息子・清一と娘・歌子を育てる。苦労して清一を医科大学までやったが、清一は勝手に、金持ちの開業医の養子になってしまった。歌子は、妻子ある中年男に思いを寄せられ、駆け落ちした。春子は生きる望みを失い、白昼、列車に飛び込んで自殺した。
★10.未亡人になるかもしれぬ人妻。
『男はつらいよ』(山田洋次)第34作「寅次郎真実一路」 寅次郎が酒場で知り合った証券マン富永が、遠距離通勤と長時間勤務に堪えかね、蒸発してしまう。心配する妻ふじ子(演ずるのは大原麗子)を、寅次郎は慰め励まし、一緒に富永捜しの旅に出ようとする。その話を聞いた博が、「万が一のことがあったら、奥さんの悲しみはどれほどか」と、余計なことを言う。寅次郎は、ふじ子が未亡人になった時のことをあれこれ考え出す〔*後に寅次郎は「俺の心は汚い」と反省する。富永は無事だったので、寅次郎は彼をふじ子のもとへ送り届ける〕。
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