有効性が有るとするいくつかの研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/06 08:45 UTC 版)
「エノキタケリノール酸」の記事における「有効性が有るとするいくつかの研究」の解説
内臓脂肪を低下させる機序の研究 以下の各研究により、エノキタケリノール酸は、βアドレナリン受容体と強い結合活性をもち、これが内臓脂肪減少効果の機序の一つとなっていることが示された。エノキタケリノール酸はその各脂肪酸の構成比率が重要であり、それは、リノール酸、α-リノレン酸、ペンタデカン酸、パルチミン酸の比率が95:2:2:1となる。さらに、服用後のエノキタケリノール酸は、脂肪組織への分布も良好であり、血液中で安定しており、内臓脂肪減少効果は長時間にわたり発現することが期待できる。また、βアドレナリン受容体を活性化させる機序も、コンピュータシミュレーションにより明らかになった。 エノキタケリノール酸がβ3アドレナリン受容体と強い結合活性を持つこと、またエノキタケリノール酸を構成する各脂肪酸の比率が重要であることを示した実験 ヒト由来のβ3アドレナリン受容体を発現している細胞を用いた実験において、エノキタケ抽出物からエタノール抽出されたエノキタケリノール酸は、β3受容体と強い結合活性を有していることが分かった。さらに、リノール酸、α-リノレン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸が比率95:2:2:1の割合で構成される脂肪酸複合体であるエノキタケリノール酸のβ3受容体結合活性率が平均75%(74〜77%)であった一方、4種類の脂肪酸のうち1種類でも欠けたもの、または単体脂肪酸での結合活性率は比較して著しく低下した(平均8〜40%)。特にパルミチン酸が欠けた場合は結合能が失活した。(久保光志ほか、2009年) 既に報告されているエノキタケ抽出物のヒト介入試験と同様に、エノキタケリノール酸についても内臓脂肪を減少させる効果が有ることを示した実験 肥満・II型糖尿病マウス(TSODマウス)の1か月の経口投与実験において、エノキタケ抽出物および、それから抽出されたエノキタケリノール酸は、内臓脂肪、血中総コレステロール、中性脂肪を減少させることが明確になった。一方体重の減少は認められなかった。さらに、作用機序に関して、アディポネクチンとレプチンの変動でも有意な増加が認められた。つまり、エノキタケ抽出物、およびそれから抽出されたエノキタケリノール酸がβアドレナリン受容体を刺激することで、二次的反応としてアディポネクチンやレプチンの分泌を促し、脂質代謝系を活発化させることが示唆された。(久保光志ほか、2009年) エノキタケリノール酸が、βアドレナリン受容体にたいして結合活性をもつことを示した実験 βアドレナリン受容体発現細胞を用いた実験において、エノキタケリノール酸は、β3アドレナリン受容体だけでなく、β1およびβ2アドレナリン受容体にも結合活性を示した。エノキタケリノール酸の内臓脂肪減少作用の機序の一つとして、βアドレナリン受容体刺激を介した脂肪分解促進作用が寄与している可能性が認められた。(吉田徳ほか、2009) エノキタケリノール酸の体内への吸収や分布を明らかにするための体内動態試験 エノキタケリノール酸をマウスに経口投与した実験では、肥満・II型糖尿病マウス(TSODマウス)は正常マウスと比べて膵臓、脾臓、腎臓へのエノキタケリノール酸の移行は有意に早かった。さらに、投与3時間後には増量傾向が認められ、24時間後でも有意な増量が認められた。この結果は、糖・脂質代謝異常が生じている状態(肥満・II型糖尿病)では、糖・脂質代謝に影響を及ぼす部位にエノキタケリノール酸は移行しやすいこと、さらに長時間にわたって作用を発現することを示している。(吉田徳ほか、2010) エノキタケリノール酸の血中における濃度と組成変化を調べた実験 ラットとヒト試験によるエノキタケリノール酸の経口投与実験の結果、少なくとも90分の間(ラットの場合は300分)、血中におけるエノキタケリノール酸の濃度は、投与していない対照群と比べて有意に高い値を示した。さらに、エノキタケリノール酸の各脂肪酸の構成比率に有意な変化は認められなかった。服用後のエノキタケリノール酸は、血液中で安定であり、内臓脂肪減少効果は長時間にわたり発現することが示唆された。(齋藤博ほか、2010) エノキタケリノール酸の血中における濃度と組成変化を調べたヒト介入試験 BMI が21以上23未満の健常な男女20人(男性:14人、女性:6人)を対象にしたプラセボニ重盲検法試験にて、中性脂肪値が上昇する食事をとった後にエノキタケリノール酸を摂取し、その吸収と血中遊離脂肪酸濃度、および含有脂肪酸の構成比率を調べた。一般的に血中中性脂肪が上昇すると、血中の遊離脂肪酸は中性脂肪の合成や脂肪組織で貯えられたり生体内で利用されるので、血中における遊離脂肪酸濃度は減少する。本実験において、食後に血中中性脂肪が上昇(血中遊離脂肪酸が減少)する場合においても、エノキタケリノール酸を摂取した試験群は非摂取対照群に比べて有意に遊離脂肪酸およびリノール酸の血中濃度(つまりエノキタケリノール酸の濃度)が高かった。さらに、血中におけるエノキタケリノール酸のもつ特徴的な脂肪酸構成に有意な変化は認められず、安定して存在することが明らかになった。(齋藤博ほか、2011) コンピュータシミュレーションにより、エノキタケリノール酸がどのようにβアドレナリン受容体に作用するのか明らかになった研究 エノキタケリノール酸は内臓脂肪細胞の細胞膜中に入り込むと、そこに存在する遊離脂肪酸とサンドイッチ構造を作り、これによりβ受容体同士はコレステロール分子を介して安定な二量体を形成する。単量体の場合と比べて、この安定な二量体形成は、リガンド結合により誘起されるシグナル伝達が増強されることが分かった。(Nakano et al., 2012)
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