新たな暫定リスト追加の可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 22:28 UTC 版)
「日本の世界遺産」の記事における「新たな暫定リスト追加の可能性」の解説
ユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の国内組織「日本イコモス国内委員会」の岡田保良副委員長(国士舘大教授)は2018年2月8日に宮崎県庁で行われた講演の中で、「政府が選定する国内の推薦候補地について、2019年度までに追加など見直し作業を行う可能性がある」との見解を示した。日本イコモス国内委員会は2017年12月8日に、将来的に世界遺産になる可能性がある日本の20世紀遺産を選定している。 上掲文化遺産推薦に向けた公募の内、「松島の貝塚群」は2021年に登録審査予定の「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」に加えることを検討すべきとされており、松本城は暫定リスト掲載の彦根城や公募に名乗りを上げなかった犬山城と合わせて既登録の姫路城への「近世日本の木造天守閣式城郭」といったような枠組みでの拡張登録が模索されている。また、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の登録に尽力し内閣官房参与も務めた加藤康子は黒部ダム、そして日本イコモス国内委員会委員長・文化審議会世界遺産特別委員会委員長を務めた西村幸夫と元ユネスコ事務局長の松浦晃一郎らも黒部に加え立山の砂防システムの登録の可能性を公言しており、立山の自然環境を含めれば複合遺産の可能性もあると示唆している。特に西村は今後の日本の世界遺産について、ユネスコが認める保存活用事例(アダプティブユースや遺産と創造性)も勘案しつつ、近代化遺産・産業遺産や稼働遺産としての土木(土工)構築物、戦後建築に移行せざるをえないのではないかと言及。また、特定地域の文化財を推すのではなく、例えば各地の日本庭園や茶室などを一つのテーマとするオールジャパン体制のシリアルノミネーションも有効とする。 さらに既存登録地の京都ではかねてから古都京都の文化財の拡張登録が取り沙汰されているほか、群馬で富岡製糸場と絹産業遺産群の拡張登録や、和歌山では紀伊山地の霊場と参詣道の再拡張登録を目指す動きもある。 自然遺産に関しては、日本の世界遺産条約締約作業に携わった筑波大学の吉田正人が、上記の「自然遺産推薦に向けた選定」は気候と地形に応じた植生を基にユネスコと自然遺産諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)が重視する生物多様性や固有種生態系を中心としたものであると指摘した。その観点からすれば「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」をもって打ち止めの感はあるが、(1)ユネスコとIUCNが推奨する海洋域への展開として除外された奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の海洋域や小笠原諸島の海洋域への拡張登録、(2)登録基準ⅷが示す「地球の歴史」については第1に地質分野として生物圏が評価された小笠原諸島の中から西之島だけ分離独立させることの現実性、第2に太平洋プレート・北米プレート・ユーラシアプレート・フィリピン海プレートの4つが衝突する上に形成された弧状列島の特異さと地震や火山にみられる現在進行形の地質活動が物語るダイナミックな地球の胎動を表現すること、また第3に公海の世界遺産への注目を受けた海底域からの世界遺産推薦の可能性を挙げ、日本海溝や伊豆・小笠原海溝などのプレート境界線、その延長線上に位置する小笠原諸島-伊豆諸島-伊豆半島-丹沢山地を一体的に捉えた視点の検討を提唱する。 加えて吉田は、1982年にIUCNが発行した『世界の優れた自然地域』(The World's Greatest Natural areas)に将来の自然遺産候補として阿寒国立公園・日光国立公園・富士箱根伊豆国立公園が上げられており、いずれも「自然遺産推薦に向けた選定」で俎上(そじょう)した後、日光は日光の社寺として、富士山も富士山-信仰の対象と芸術の源泉として文化遺産に鞍替えして登録された点に着目すると文化的景観の要素も含む複合遺産の可能性も示唆し、日光は男体山や中禅寺湖から流れ落ちる華厳滝など自然崇拝の要素、富士山は前述の海底から地上に至る地質活動の終着点として、さらに阿寒湖界隈はアイヌ文化との密接な関係を備えるとした。
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