徴兵制度の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 02:21 UTC 版)
大日本帝国陸軍軍人給与、1943年(昭和18年)位給与(円/月)大将 550 中将 483 少将 416 大佐 370 中佐 310 少佐 220 大尉 155 中尉 94 少尉 70 准尉 110 曹長 75 軍曹 30 伍長 20 兵長 13 上等兵 10 一等兵 9 二等兵 6 徴兵制度は納税などと同じく「国民の義務」として導入される性質のものであり、職業軍人とは異なり、徴募兵に対して生計を営み人生を設計するに足る額の賃金は一切支払われないのが通常である。このため、かつては給与を抑えられることから人件費抑制を期待できる側面があった。旧日本軍の場合、兵長までが徴兵による兵であり、伍長以上は官吏すなわち職業軍人の扱いであった。ただし表に挙げた給与の格差については、兵と下士官には衣食住や各種の個人装備が現物支給ないし貸与されるのに対し、尉官以上の士官はすべて俸給から自弁調達する必要があった点も影響する。 現在、徴兵制度を採用している一部の国では訓練に莫大な費用がかかるため、軍事政策に関して批判もある[要出典]。また、若い時期に2年~3年以上の期間兵役を課すことによって、その間の学力や技術の向上が妨げられ、若年労働力が奪われ産業に悪影響を及ぼし、国力として損失が出ているとの指摘もある。ドイツでは兵役は若者の学問的向上期間を制約するとの認識もあり、批判が根強い。実際にドイツでは学力低下が著しく、他のヨーロッパ諸国に差を付けられつつある。イランにおいても、18歳以上の男子のみ兵役が課されるため、除隊してから受験勉強するのが面倒、という理由で、男性のほとんどが高卒。また、一般に徴用兵は自発的ではなく強制されている点で志願兵より士気・意欲(モチベーション)が低く、訓練期間も短いため兵の質が低下する。 また、一般に民主制国家では、志願制と徴兵制で待遇に大差はない。まず軍の就職先としての魅力は決して低くなく、給与の上昇は抑えられている。国が待遇を保証し、衣食住に不自由がないために軍に入隊を希望する若者は少なくない。特に教育費用を捻出できず、キャリアに展望を持てない低所得層にとっては魅力的な存在だ。軍や政府でも従軍中に各種技能や資格を取得したり、勤務成績が優秀な者については士官学校への推薦枠を与えて将校への道を開くなどの機会を与え、除隊後も退役軍人向けの奨学金制度や職業訓練などを用意する例が多く、退役軍人会や在郷軍人会などのネットワークを通じ、退役後の生活について援助を得られるように配慮している。逆に徴兵制だからといって給与や待遇を削りすぎると不満につながり、汚職や政情不安の原因になる。特に不満が支持率に影響する民主制国家において顕著。 国富・国家財政の面からいっても問題は多い。若青年層を網羅的に徴用することで就労上や学究上のキャリアの断絶につながる。直接的には数万単位の若年労働力が労働市場から隔離されることで、労働コストの上昇や生産力の低下を招く可能性がある。また徴用兵に対する国庫負担が生じる一方で、徴用された人が納めるはずだった所得税等が国庫に入らなくなる(参照:軍事ケインズ主義)。 経済学者のスティーヴン・ランズバーグは「軍隊を維持するコストは、兵士になった若者が失う機会の価値に等しい」と指摘している。
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