学校教育のユニバーサルデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 01:55 UTC 版)
「ユニバーサルデザイン」の記事における「学校教育のユニバーサルデザイン」の解説
米国では1975年に全障害児教育法を制定し、あらゆる子どもがきょうだいと同じ学校へ行き、個別支援プログラム(IEP)に基づき、個々のニーズを大切にした教育を受ける制度を確立した。そういった流れを受けて、国連は1994年6月、サラマンカ宣言を出し、障害児など特別なニーズを持つ児童の学習をほかの子どもたちと同じ環境に包摂していく方針を出した。これにより、各国はこれまで障害児を分けて教育する方針を転換し、インクルーシブ教育へと舵を切った。一方日本の文部科学省は、長く分離政策をとっていたが、障害者権利条約の批准に伴い、2015年より方針を転換し、インクルーシブな教育環境を実現するための研究や提言を行ってきた。この結果、徐々に教育のユニバーサルデザインが進んできている 教育のユニバーサルデザインとは、障害のあるなしにかかわらず、それぞれにとって最適な教育を受けられることを意味する。ニーズの重い児童学生のための配慮が、軽いニーズの人にもメリットがある場合も多い。学校の建物にスロープやエレベーターがあれば障害のある児童や保護者がアクセスでき、学校が避難所になる際にも機能する。教科書が電子化されて拡大や音声読み上げが可能といったアクセシビリティが確保されていれば、視覚障害のみならずページをめくることが難しい肢体不自由や識字障害の児童学生にも読書権を保障できる。発達障害の学生にわかりやすい授業は、クラス全体の理解を深めることも可能である。このような全体としてのユニバーサルデザインと同時に、授業で手話通訳やスマホによる字幕表示を利用したり、聴覚過敏の発達障害児がイヤーマフを利用したりといった個別の合理的配慮への対応も重要である。 高等教育においても、2018年に合理的配慮が義務化されたため、各大学等においては障害学生支援室などを設け、大学全体のユニバーサルデザインのハード、ソフトを見直している。学生自身が自らのニーズに基づき、自分に必要な合理的配慮とは何かを周囲に伝え、インクルーシブな学習や雇用環境を自ら作り出していく能力の開発が求められている。 AI(人工知能)などコンピューターの技術革新によって将来、多くの仕事が変革する可能性がある。求められる能力も変わってくる。こういった社会を生きる上で、課題を発見し、解決策を提示する資質・能力を着実に育む学校教育への転換が求められている。大学においては、社会人基礎力をつけることが重要であり、人生100年時代においては、40代60代80代でも学び続けられるユニバーサルな教育環境が必要となる。産官学民が連携し、地域社会に必要な課題発見、課題解決を行うなど、教育環境においても、学習主体である児童・生徒・学生・社会人学生が、保護者や地域の人々等と共に創り上げていく発想や設計思想が重要である。その際にも、社会の構成員である多様な人々を理解し、共に生きていくDiversity&Inclusionを理解することが重要である。男性の20人に一人いるといわれる色覚少数者の学生が、緑の黒板に赤では読みにくいため朱色のUDチョークを使うことや、多様な年代にとって読みやすいUDフォントの利用が推奨されている。このような考え方は読みやすさ、視認性を高めるもので、教育現場だけでなく、今では多くの新聞や書籍、プレゼンテーションやサイン、パッケージデザインなどでも利用されている。
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