存廃問題と社団法人への移管
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 22:55 UTC 版)
「Osaka Shion Wind Orchestra」の記事における「存廃問題と社団法人への移管」の解説
前述の通り大阪市音楽団は大阪市が直営事業として運営していた音楽団であり、人件費や赤字分を大阪市が公費から支出していた。大阪市の平成22年度決算によれば、人件費を除いた楽団運営のための歳出額約9,100万円のうち、入場料収入などで補えるのは約4,800万円で、差額の4,300万円と団員44人分の人件費約3億8,700万円を加えた約4億3,000万円を大阪市が負担していたという(ただし、これについては、大阪市音楽団条例(昭和25年4月1日条例第33号)および大阪市音楽団規則(昭和32年4月1日大阪市教育委員会規則第4号)により音楽団の活動に大阪市教育委員会の承認が必要であることに加え、出演料が最大でも1回あたり1時間63,000円・2時間94,500円という、40人規模のプロの楽団としては異例の破格値に抑えられていたという事情もある)。 このような状況を受け、大阪市の橋下徹市長は、2012年1月19日の大阪市議会決算特別委員会で、「(大阪市が音楽団を)直に抱えていく必要はない」と発言、直営方式を見直す方針を表明する。また、その翌日、報道陣に対し「(大阪市音楽団のあり方について)一から考える。存続の結論ありきでは考えない」と発言、楽団解散の可能性をも示唆した。これを受けて、大阪市は同年4月5日に発表した市の施策・事業の見直し試案で、大阪市音楽団を2013年度に廃止する方針を明らかにした 。この試案では楽団員(音楽士)の処遇について「配置転換先を検討する必要がある」との内容が示されていたが、同日行われた橋下市長の記者会見では「(専門職である音楽士が)単純に事務職に配置転換するのは、これからの時代、通用しない。仕事がないなら、分限(免職)だ」「分限(免職)になる前に自分たちでお客さんを探し、メシを食っていけばいい」と発言し、楽団が市直営事業でなくなった場合には楽団員(音楽士)を配置転換せず、地方公務員法第28条第4項(「職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」による職員の降格または免職)を適用して分限免職としたい意向を表明した。 市側の楽団解散の意向について、楽団側は「経営の視点だけで見直されると、存続は難しい」と困惑した。前田憲男、ボブ佐久間、宮川彬良の3人は、人件費を含めた楽団の運営費約4億円について「40数人の団員を維持していくには驚くほど安い金額」と指摘、「これほど実力ある音楽団が大阪にあることを行政や市民は分かっていないのではないか。一度つぶれたら、あの豊かな音は戻らない。残しておかなければ後で大変なことになる」と楽団の存続を訴えた。音楽団の存廃問題を受け、2012年5月5日には宮川彬良と大阪市音楽団「友の会」との共同主催によりコンサート「Go!Go!市音! 大阪市音をほめる会」が約3,000人の観客を集めて大阪城音楽堂で開催された。当日は指揮者の佐渡裕や大阪府立淀川工科高等学校吹奏楽部顧問・名誉教諭の丸谷明夫がスペシャルゲストとして応援に駆け付け、大阪市音楽団との共演時のエピソードや80年以上にわたる大きな社会貢献度などを市民に訴えた。このコンサートは大阪市民からの寄付金と宮川の出資によって実現し、入場無料、楽員たちは全員有志による出演として、公費を一切使わずに開催された。 2012年7月27日の大阪市会本会議において「市政改革プラン」策定を前提とした補正予算(本格予算)案が原案どおり可決したことにより、大阪市の音楽団事業及び音楽堂貸し出し事業を平成26年度から行わないこと(市事業としては平成25年度末で廃止)が事実上決定した。同年10月2日に開催された「Go!Go!市音! 大阪市音をほめる会 vol.2」の中で辻浩二団長から、2014年(平成26年)4月からの一般財団法人への運営移管を念頭に置きつつ、池末浩規大阪市特別参与や外部の有識者の意見を聞きながら「音楽団事業の市場価値の算定(マーケティングリサーチ)」「最適な運営形態」について検討準備を進めていき、2012年末頃をめどに一般社団法人設立のための準備委員会を設立する予定であることが報告された。 2013年11月29日の大阪市会本会議において、「大阪市音楽団条例を廃止する条例案」が可決成立、2014年3月末日をもって市直営楽団としての廃止が正式決定した。2013年12月2日には受け皿となる「一般社団法人大阪市音楽団」が設立され、2014年4月以後の運営を引き継いだ。事業内容は市直営時代のものをおおむね引き継ぐ計画としつつ、収入源として賛助会員制度を導入し、演奏者自身も団のマネジメント業務に携わるとしている。 一般社団法人への移行にあわせ、活動拠点も大阪城音楽堂(大阪城公園内、中央区)からアジア太平洋トレードセンター(ATC、住之江区)ITM棟2階に新設された「市音なぎさのホール」に移った。2017年7月18日に事務局をITM棟12階に移し、なぎさのホールは閉館した。 2018年4月1日、一般社団法人から公益社団法人に移行した。また、Shion と同じく市事業から移管して同日発足した大阪市高速電気軌道(Osaka Metro、旧・大阪市交通局)とパートナーシップ提携を行い、8月1日に事務局をOsaka Metro 緑木検車場(住之江区)に隣接する緑木倉庫事務所内に移した。 社団法人への移管にあたり、大阪市は当初3年に限り「寄付金」の形で運営資金を助成するとした。その後、市は2018年度から3年をめどに財政支援を復活している。
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