女性思想とは? わかりやすく解説

女性思想

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/13 05:32 UTC 版)

独考」の記事における「女性思想」の解説

上述のように、真葛9歳のとき「女の本とならばや」と決意したが、それは同時に「女は人にしたがうもの」という当時通念支配的言説にしたがって生きることでもあった。その姿勢は、夫只野行義にあてた手紙に「これよりはいくひさしく御奉公申し上げ候」と記したり、婚家の生活についても、『とはずがたり』のなかで「国ふうたがえず、ことに家の法かたく守りてやぶらず」と述べたりしているところから、基本的に変化がなかったものと考えられる。しかし、その姿勢貫き通すことについては精神的な痛みともなった奥女中奉公では「独りづとめ」の心得仕事にあたること、また、仙台で夫の留守を守る結婚当初暮らしのなかでは香尼を手本とすることなど、「女の本」となるための道を模索しつづけた。 そして、なぜ女は人にしたがわなければならないのかについて思索めぐらせた。この疑問対す答えとして真葛ヒントにしたのは『古事記』における国生み神話であった。そこでは、男神イザナギが「わが身はなりなりてなり余りしところひとところあり」、女神イザナミが「わが身はなりなりてなりあわざるところひとところあり」とたがいに自分身体的特徴述べあう下りがある。これによって真葛は、「この世に人の生い初めし時、身内尋ねて成り余りしと覚ゆるは男、成り足らぬ覚ゆるは女なり」という観念獲得しこうした身体的差異は心のあり方左右するものだととらえる。 具体的には、禅僧修行のため羅切陰茎切り)することを女性ならば「潔い」と感じであろうが、男性はたまらないであろうし、女性器侵入するのを男性は何とも思わないだろうが女性身の毛のよだつ思いがする。俳優女形仕草かたちや言葉づかい女性のようであっても現実女性決し喜ばないような行動をとるのは、身体的差異由来する心のありよう実際女性とは異なるからだと考える。そしてまた、「才智のおとり勝ることはあるとも、なべて常の心に、余れりと思う男に、足らずとおぼゆる女の、いかで勝つべき」と記し、常に心に余裕をもつ男性対し、常に心理的に不全感かかえた女性結局かなうものではないとして「女は人にしたがうもの」という考え方根拠を以上述たような身体性求めのであるしかしながら真葛は、 孔子聖の女子小人我知らずとのたまえりしとかや。われも女子なり。いざその聖のしらせ給わぬほどを、さて申さめ。 として、女性として自分立場語調強く訴える。そして、女子小人扱いがたいと記す孔子をして「心行き届かぬ」と述べ、みずからの教化不足をにあげて女子小人取るに足らない見下すところが一番人受け入れやすいと手厳しく批判する。そして、儒教道徳は、表向き飾り道具であり、門外に置くべきものなのであって、「道具ぶきよう」なため怪我をすることがあるから、「家事」には用いるべきではないとする。さらに、 このくだりは無学む法なる女心より、聖の法を押すいくさ心なり。…世にいきいきとした愚人ばらは、遠き昔のよそ国の聖のことは、むずかしと聞きつけず、聖人味方するほどの男づらは、いけすかぬと、わかき女どもはにくむべし。よし女にはすかれずとも、いづくまでも聖の御心ざしは、さにあらずおしかかるともがらもあるべし。その勝劣人々の好きずきにこそあらめ。聖に愚の勝つことあるまじけれど、聖上の人は大かた力弱く身あわし。下愚の人はなべて力強ければ、一と勝負してみたきこころいきあらんか。 として「無学む法の女心」から「聖の法」(儒教道徳)への闘争意志表明している。 また、身内たずねて余れり足らずと思うをもて考うれば、人の心というものは陰所を根としてはえわたるものなりけり」と述べ人間心理の根にあるものは陰部であるとする。さらに彼女は性行為を「男女あい逢うわざ」と表現し、「心の本をすりあわせて勝ち負けを争う」ものだとし、「あい逢うわざ」をふくむ恋路においては男性も「弱き女になげらるることあり」として男女勝敗は必ずしも一方的ではないとしている。 このように真葛は、いったんは女性従属性を認めながらも、あい争う人間本性という点では男女ともに同等であり、また、恋路においてはとらわれのない女性の方が勝つこともある として、家父長制的な儒教教え規範に異を呈しまた、儒教道徳における善の無力性を指摘することで、そのような規範とらわれず自由に自分意思実行移せる「下愚の人」あるいは「無学む法なる女」が勝利する可能性論じているのである

※この「女性思想」の解説は、「独考」の解説の一部です。
「女性思想」を含む「独考」の記事については、「独考」の概要を参照ください。

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