天国
『天国へ行った水のみ百姓』(グリム)KHM167 貧乏百姓と金持ちが天国へ行く。天国では金持ちを大歓迎して、音楽を演奏したり、謡(うた)をうたったりする。貧乏百姓が文句を言うと、天国の門の鍵を預かる聖ペトルスが説明する。「お前のような貧乏百姓たちは、毎日毎日天国へ来る。しかし金持ちが天国へ来るのは、百年に1人のわりあいだからなあ」。
*らくだが針の穴を通るよりも難しい→〔針〕6の『マタイによる福音書』第19章。
『トンビになった目連の母親』(中国昔話) 目連の母親は、この世にいる時から根性の悪い女だった。目連は、罪深い母親を俗世間から救い出し、天上の国へ昇らせようとする。しかし昇天する途中、母親は、地上で遊んでいるヒヨコを見て、なまぐさものを食いたい気持ちになった。邪念を起こすと身体が重くなり、母親は下界に引き戻された。母親は、ヒヨコを好きなだけ食べられるトンビに生まれ変わった(広東省)。
『ペーテル聖者の母』(グリム)KHM221 ペートルスの母は、死んで煉獄の火の中にいた。ペートルスが母を連れて天国へ昇ろうとすると、他の魂(=死者)たちも、一緒に煉獄から逃れ出ようと、母の裳裾にぶら下がる。母は他人の幸せを喜ばず、裾をふるったので、魂たちはもとの煉獄へ落ちて行った。ペートルスは、母の心の悪いことを知って、母も煉獄へ落とした〔*→〔蜘蛛〕1の『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)に類似する〕。
『ある抗議書』(菊池寛) 凶悪犯に親族を殺された人物から、司法大臣閣下へ宛てた抗議書。「9人もの人を殺した坂下鶴吉は、獄中でキリスト教に改宗し、すっかり心を入れ替えて処刑されたそうです。彼は天国へ行ったかもしれません。それに対して被害者たちは、地獄の苦しみで死んでいったのだから、地獄へ落ちたのでしょう。殺した者が天国へ、殺された人が地獄へ。これで良いのでしょうか?」
*一般的には、たとえば→〔発心〕3の盤神岩(ばんず)の伝説のように、殺人の加害者は地獄へ堕ち、被害者は成仏する、と考えるのが普通である。
*無理心中のばあい、一方が地獄へ、他方が天へ、ということもあるかもしれない→〔地獄〕7の『ベルサイユのばら』(池田理代子)第6章。
『おぎん』(芥川龍之介) 江戸時代初期。天主のおん教え(カトリック教)を奉ずる村娘おぎんは、火刑にされる直前に棄教した。刑場から、父母の眠る墓地が見えたからである。おぎんはこう考えた。「亡き父母は天主のおん教えを知らなかったから、今頃は『いんへるの(地獄)』へ堕ちているだろう。わたし1人、『はらいそ(天国)』の門に入るのは申し訳ない。わたしはやはり、父母のあとを追って地獄の底へ行こう」。
★5.使命を果たさず死んだため天国へ直行できず、天国と地獄の中間に留め置かれる。
『幽霊西へ行く』(クレール) 18世紀スコットランドの豪族グローリーは、宿敵マクラガンに侮辱され、怒りのうちに死んだ。父の恨みを晴らすべき息子マードックは臆病者で、父の死後まもなく大砲に打たれて死んでしまった。父グローリーの霊は、マードックの霊に「お前を天国の先祖たちに会わせるわけにはいかぬ」と言い、マードックは天国と地獄の中間に留め置かれる。2百年たってマードックは父の恨みを晴らし(*→〔霊〕2c)、ようやく天国の先祖たちのもとへ行くことを許された。
『視霊者の夢』(カント)第1部第2章 天国は、頭上はるか彼方の無限の宇宙空間の中にある、と一般に考えられている。しかしそこから見たら、われわれの地球も天の星の1つとして現われ、別世界の住人が地球を指さして、「あそこに、いつか我々を迎え入れてくれる永遠の喜びの宿・天国があるのだ」と言っているかもしれない。高空への飛行が上昇の観念と結びついているのは、おかしな妄想だ。別世界に着陸するためには、高く昇れば昇るほど、再び低く降下しなければならないのである。
『天国に結ぶ恋』(三島由紀夫) パンパンの「おけい」が天国へやって来て、神さまと仲良くしているうちに、神さまは性病になってしまった。「神さまの病気を治すため」と称して、地獄から、悪徳医者5百人・悪徳看護婦5百人・悪徳土建屋5百人が乗り込んで来る。神さまは病院を建てさせられて破産し、「おけい」を誘って心中する。2人は、花咲き蝶舞ううるわしき天国へ飛び上がる。神さまは「ここまで他人に荒らされちゃ大変だ」と言って、「わしはもう、どこにも存在しない」と、人間世界へ電報を打つ。
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