千日デパートの開業
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「千日デパート火災」の記事における「千日デパートの開業」の解説
1954年(昭和29年)に千土地興行(日本ドリーム観光の前身)の社長に就任した松尾國三は、その当時において不採算に陥っていた大阪歌舞伎座(大阪楽天地の跡地に1932年(昭和7年)9月28日竣工)を閉鎖して新たに新歌舞伎座を難波駅近くの難波新地5番町に建設し、空いた旧大阪歌舞伎座の建物を改造して商業施設に改装する構想を立てた。アシベ名店街の成功によって自信を持った松尾は、新装開業させる商業施設を心斎橋の既存百貨店に匹敵する小売店舗の集合ビルにするべく計画スタートさせた。新しい商業施設は、新歌舞伎座開業予定の1958年(昭和33年)10月に続き、同年12月の開業を目指すこととなった。改装費は総額10億円とした。これが千日デパート誕生のきっかけである。開業前は日本初の大規模ショッピングセンターまたは立体的商店街と銘打ち、当初テナントから賃料と保証金および付加使用料(共同管理費)を徴収する賃貸方式で経営を予定していたため、小売店舗の集合ビルという意味で千日センターと呼ばれるはずだった。経営の目論見としては専門店と百貨店の長所を盛り込んで「高級路線のショッピングセンター」を狙っていた。ところが歓楽街という土地柄や、開業のタイミングが不景気と重なったことが影響してテナントの募集に対して応募が低調になり、大衆向きに路線を変更せざるを得なくなった。そこで商業施設側が売場を直接経営し、入店するテナントに売場の営業権を与え、商品を納入させて売り上げ金の一定割合をテナントから徴収する納入方式に変更することにした。そのことにより名称を千日デパートへ変更して営業する運びとなった。1958年12月の開業当初よりデパートの運営は3つの組織によって為され、主体は千土地興行、管理は新しく設立された株式会社千日デパート、そこにテナント300店で組織する商人会が経営に加わった。 開業当初の千日デパートの大きな特色は、営業時間が10時から22時までで年中無休であること、本町などの繊維問屋100店が直接商品をデパートに納入して「特売場」と称する4階売場で販売することから、最大3割の安売りが実現できることにあった。包装紙を共通化してコストを下げ、セルフサービスの導入や、配達を無料にするなど「大阪一の繁華街ミナミ」という地の利を生かして集客力を高めて利益を出すことが見込まれた。その一方でテナントやライバルの百貨店からは、千日デパートの目算に疑問の目が向けられた。その理由は、賃料や管理費などの出店経費が高く、一定の売り上げが見込めなければ赤字は長期化してテナントに利益が出せないこと、「歓楽街ミナミ」にショッピングセンターを設けても客層に買い物客は少なく、夜間遅くまで営業するといっても飲食店以外に集客を見込めるかどうか定かではなかったこと、近鉄線の難波延伸(上本町・難波間)が実現する目途が立っていなかったことからも集客力に疑問を持たれていたことである。また千日デパートビルは、旧歌舞伎座を改装した建物ということで、商業施設としては構造上の欠点を抱えていると指摘する向きもあった。元々は地階から4階までの建物中央付近に旧劇場部分(旧客席)の大きな吹き抜けがあったことから、開業してからも1階と2階部分にその名残があったこと(開業当初において。のちに2階部分全体にフロアを増床した)、また5階から7階の中央付近にも劇場があることから、建物全体として多くの売場面積を確保できず、総床面積の57パーセントが通路や階段、吹き抜けの部分で占められていることから、残りの43パーセントの売り場面積だけでは売り上げ的に不利だと見られていた(開業当初)。 開業から5年半ほど経過した1964年(昭和39年)5月以降は、日本ドリーム観光(旧千土地興行)の本社組織内に千日デパート管理部を創設し、以降の経営を担うことになった。開店当初の営業形態は、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}地下1階から地上5階までを商業施設、6階を演芸場の千日劇場と食堂、7階を大食堂、屋上は遊戯施設としていた[要出典]。千日デパートは「まいにちせんにち、千日デパート」のコマーシャルソングで知られ[要出典]、また屋上に1960年(昭和35年)から設置された観覧車は大阪の名物となっていた。ビル正面には丸にS(Sen-nichiから)の緑色のマークが掲げられ、千日デパートのシンボルとなっていた。
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