出版物へのアクセス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 05:30 UTC 版)
「アクセシブルな情報システム」の記事における「出版物へのアクセス」の解説
厚生省は1995年の補正予算を当てて DAISY 作成システムと同再生専用機を全国の点字図書館や視覚障がい者の教育機関、専門施設に配備し、CD-ROM図書を2580件、配った。また録音図書の普及のため、多くの点字図書館が2000年頃から録音図書の作成をデジタル化し、録音媒体はカセットテープから MO や MD に切り替わる。利用者の読書環境の整備に向け、厚生労働省は2004年(平成16年)概算要求予算に読書機(デジタル録音図書再生機)を日常生活で使えるよう普及を後押しする予算を計上。 その2004年当時、電子点字図書がもっとも充実した会員制データベースは旧称「ないーぶネット」(視覚障害者用図書情報ネットワーク)と称し、「全国視覚障害者情報提供施設協会」が運営していた。加盟者は点字図書館等で、協会は録音図書の電子化に合わせた再生機ほかの整備に2006年度から取り組みを進めた。2010年4月にデータベースのネットワークを日本点字図書館に移行し、名称はサピエ(視覚障害者情報総合ネットワーク)に変わる。録音図書の媒体は従来のカセットテープとデイジー、一般CD(朗読ほか)に加え、複数の版のデイジー(音声版、テキスト版、マルチメディア版)とオーディオブック、音声解説が増えた。 図書館利用になんらかの不便がある人に提供するサービスの変遷は、1998年から2009年の10年余りにわたる文献のまとめ や大学図書館の対応、図書館利用者と図書館のミスマッチの論考がある。 世界知的所有権機関(WIPO)マラケシュ条約への加盟により、日本政府はその第4条に定める著作権法の規制を改めて著作物を利用しやすい形態に複製し譲渡することや、公衆が利用できる状態に置く権利の制限又は例外規定の定めを求められるとともに、第5条にあるとおり、それら複製物を他国の利用者が使いやすくする権限機関(Authorized Entity=AE)の活動を支える課題を負うこととなった。2021年1月より条約に従った政策づくりが進められる。アメリカの場合、既存の組織は著作権を設定した著作物の発行に際し、誰にでも読める版を作成するため、障がいのある人々がしばしば利用する DAISY 規格への移行を検討しはじめている。ゆっくりとではあるが、これまで用いたカセットテープなどの媒体をやめる傾向がアメリカで見られる[要出典]。 アメリカのさまざまな組織が視覚障がいのある読者に対応しており、たとえば民間団体のラーニング・アライ Learning Ally(英語)やブックシェア Bookshare(英語)あるいはジョージア工科大学工学部が受託する AMAC アクセシビリティ が活動し、連邦政府はアメリカ議会図書館に置く全国障がい者図書サービス(英語版) (NLS) を介して、在外居住者を含めた全国民に収蔵図書を無料送付する。前者の2件(ラーニング・アライおよびブックシェア)は読字がしにくいディスレクシアほかの障がいにも対応する。後者の NLS の場合、従来はカセットテープという現物を貸し出しており、形態が変わっても図書コンテンツを無料で提供するという、公共図書館に課された図書館学の手法をつらぬいている。 NLS およびラーニング・アライ加盟組織はコンテンツの暗号化に「DAISY Protected Digital Book」(PDTB)標準を採用する。このシステムは DAISY 定義ファイルは従来と共通ながら、音声ファイル、また事例によっては DAISY SMIL ファイルに記述した特定の情報タグも暗号化されており、暗号解読技術を介して再生する。読者はコンテンツの提供者から暗号キーを受け取り、DAISY 再生機器に読み込ませて暗号を解いてから、内容を利用する。ただし暗号解読手段そのものは標準の DAISY に添付されず再生機器に依存しており、暗号キー対応で必要なプログラム(アルゴリズム)を備えた機種に特化する。ブックシェアは独自のデジタル著作権管理の手法を採用し、デジタル図書ごとにダウンロードした利用者の「指紋」を設定する。これらの処置は著作権条項(合衆国法典第17編第1201条)を遵守し特別な方式で配布する措置であり、一例として適格な障がいが認定されない者など認証を受けない者、未承認の者による著作物の利用を防ぐことを目的とする。 2016年の改定に先立ち、学習障害団体からコメントが寄せられた。
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