京阪5型
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「箕面有馬電気軌道34形電車」の記事における「京阪5型」の解説
石山坂本線は大津市の南北を琵琶湖岸に沿って走る路線であるが、開通当初は南北で路線の性格から車両規格まで大きく異なっていた。大津電車軌道の路線として路面電車規格で開通した三井寺駅以南の区間は、大津の中心である浜大津界隈や古い城下町の膳所といった人口密集地を抱え、大正以降は石山に進出した東洋レーヨンの工場をはじめ繊維関係の工場が立地するなど、都市化が進行していた。一方、琵琶湖鉄道汽船が高速電車規格で開通させた三井寺駅以北の区間は、別所駅(現:大津市役所前駅)周辺に大津連隊が駐屯し、滋賀里駅周辺には水上戦闘機強風を擁して京阪神地区の防空に当たった大津海軍航空隊の施設があるなど、軍事施設をつないでいたが、沿線は古くから比叡山延暦寺や日吉大社の門前町として栄えた坂本周辺を除くと農村地域であり、坂本駅(現:坂本比叡山口駅)を発車した電車は田園の中を一直線に大津市内に向けて南下していた。 石山寺駅 - 坂本駅間の直通運転は、三井寺駅以北の各駅に低床ホームを設けて、路面電車タイプの車両が直通運転を行う形で1931年から実施された。ところが、直通運転に充当された車両が大津電車軌道引継の老朽木造単車であったことから乗客数の伸びに対処できず、太平洋戦争末期には沿線の工場の多くが軍需工場に転換されてしまったことから、輸送力不足は看過できない課題となった。こうしたことから1944年4月からは直通運転区間を近江神宮前駅までに短縮し、浜大津駅(現:びわ湖浜大津駅)に仮設の高床ホームを急造して、ラッシュ時には高床車が浜大津まで乗り入れることとなった。それでも輸送力不足は解消されず、浜大津駅以南の各駅にも仮設の高床ホームの建設を進める一方、1945年3月には営業休止となった愛宕山鉄道から同社の1形3両を入線させた。そして、輸送力増強の第二弾として、北野線の減便で余剰となった36が、車番を5に改番のうえ集電装置をパンタグラフからトロリーポールに換装して、同年5月に石山坂本線に入線することとなった。これで本形式は、南海軌道線、阪急、京阪と関西大手私鉄三社で使用されるという珍しい経歴を持つ車両となったが、京阪はこれ以前の1917年1月の深草車庫火災による車両不足時に、南海軌道線から電1形46 - 49の4両を3ヶ月前後借用していることから、南海と京阪は全く縁がなかった訳ではない。 大津線への転属に際しては、1945年5月に完成した北野線と大阪市電との連絡線から大阪市電に入線、市電車両に牽引されて野田橋にあった京阪本線との平面交差で京阪本線に入線、三条駅から京津線に入線して浜大津駅構内の連絡線を渡って石山坂本線に入線、錦織車庫に入庫して整備のうえ石山坂本線での運行を開始した。本形式と先に入線した1形を活用して、同年6月から高床車の乗り入れ区間が粟津駅まで延長され、戦後の1947年には石山寺駅まで延伸されて、全線で高床車が運行されることとなった。それとともに老朽単車の廃車が進められたが、本形式は1両だけの存在であるにも関わらず、ボギー車であったことから同じ路面電車スタイルの20型や30型とともに低床車運用に充当された。それでも老朽化は進行しており、1949年の夏季輸送終了後に廃車される予定であった。 ところが、同年8月7日未明に発生した四宮車庫火災で当時の京津線の主力であった50・70型を中心に22両が被災し、低床ホーム区間で使用可能な車両が危機的なまでに不足する状況となった。このため、急遽5型の延命が決まると共に休車中の34・35が阪急1形14・15とともに同年秋に応援入線して、本形式の続番である6・7となった。塗色は転入当初阪急マルーンであったが、1951年までに当時の京阪の標準色であったクリームとライトブルーのツートンカラーに変更されている。車番の表記も当初は阪急の大型ゴシック体に似た表記であったが、後に当時の京阪標準のローマン体に書き替えられている。 大津線区の危急存亡の秋にその再建に貢献した本形式であったが、もともとが廃車対象車両を延命して使用していたものであった上、その後の京津線復旧の過程で石山坂本線の車両を全車高床化し、路面電車スタイルの車両は全車京津線に振り向ける方針が決まった。そのため京津線の急勾配に対応できない本形式は小型で老朽化も進んでいたことから、引き続いて阪急から入線した10型(阪急1形)6両や京阪本線から入線した200型に置き換えられることとなった。本形式は坂本駅の低床ホーム高床化工事が完成した後は予備車となり、1953年8月に全車廃車された。
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