上告審決定とは? わかりやすく解説

上告審決定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 09:16 UTC 版)

千日デパートビル火災事件」の記事における「上告審決定」の解説

1990年平成2年11月29日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官大堀誠一)で開かれた上告審において、裁判官全員一致意見決定言い渡され主文は「本件上告棄却する」とされ、最高裁原審判決支持した。これにより3被告人有罪確定した最高裁判所は、被告弁護人1名の上趣意のうち、憲法383項違反主張したことについて、被告人C(プレイタウン支配人=同店防火管理責任者)の捜査段階での自白調書のみによって同被告人有罪したものでないことは明らかであるから前提を欠く、とした。また、その他の主張については、意見を言うことを含めて実質事実誤認および法令違反主張であり、さらに被告弁護人4名の上趣意についても、事実誤認および単なる法令違反主張であるからいずれも適法上告理由当たらない、とした。最高裁判所は、決定にあたり被告人A(日本ドリーム観光管理部管理課長=千日デパート防火管理者)、同B(千土地観光代表取締役業務部長=プレイタウン管理権原者)、同Cの過失責任について、職権によって検討加えた被告人Aの過失について (論旨最高裁被告人Aの過失について「千日デパート経営管理する日本ドリーム観光は、夜間閉店後に店内工事が行われる場合売場大量商品可燃物置かれている状況では火災発生した場合延焼拡大する恐れがあったので、可能な限り防火対策を講じる注意義務があった。防火区画シャッター可能な範囲閉鎖し保安係員工事立ち会わせたうえで、万が一火災発生した際には速やかにシャッター全て閉鎖し消火作業を行うと同時にプレイタウンに火災発生通報することで被害最小抑えられるのであり、右限度において同社注意義務負っていた。そのうえで被告人Aには、デパートビルの防火管理者として防火対策実行する権限および履行可能性があったのであるから、各注意義務違反して本件結果招いた被告人には過失責任がある」とした。 原判決では「本件火災拡大防止するためには、デパート閉店後に1階から4階までの売場内の防火区画シャッター全部閉め3階自動降下式の4を除く)、工事が行われている場合は、工事関連する防火区画シャッターのみを開け保安係員工事立ち会わせ、あらかじめ開けておいたシャッターについては、いつでも閉鎖できるような体制整えておくべきであり、被告人Aが右義務履行できなかったような事情認められない」として、その注意義務肯定した閉店後の千日デパート火災発生した場合従業員不在になった売場には多量商品可燃物置かれているのであり、また5名体制保安係員による防火および防犯等の保安管理脆弱な状況にあったので火災容易に拡大する恐れがあった。したがって日本ドリーム観光としては、火災拡大防止するために法令上の有無問わず可能な限り様々な措置講ずるべき注意義務があったことは明らかである。本件火災限定して考えると、夜間工事が行われていた3階売場防火区画シャッター一部除き全部閉鎖し保安係員またはこれに代わるものを工事立ち会わせ、出火に際して直ち出火場所側の防火区画シャッター閉め措置講じるとともに、プレイタウン側に火災発生連絡する体制を採っておきさえすれば、煙は防火区画シャッター区切られ部分封じ込められ、7階プレイタウンへの煙の流入量を減少させることができたはずであり、保安係員またはそれに代わるものが保安室を経由してプレイタウン側に火災発生連絡が入ることと相俟って、同店の客及び従業員避難させることができたと認められる日本ドリーム観光としては、すくなくとも右の限度において注意義務負っていたと言うべきであり、原判決においても肯定されていると解される日本ドリーム観光千日デパート管理部管理課長であり、千日デパート防火管理者である被告人Aとしては、自らの権限により、上司である管理部次長指示求め工事が行われる本件ビル3階防火区画シャッター等を可能な範囲閉鎖し保安係員またはこれに代わる者を立ち会わせる措置を採るべき注意義務履行すべき立場にあったと言うべきであり、右義務違反し本件結果招いた被告人Aには過失責任がある。 —最高裁判所第一小法廷判例時報1991(1368) 被告人Cの過失について (要旨最高裁被告人Cの過失について「右被告人はプレイタウンの防火管理者として同店に滞在する客や従業員に対して火災発生の際に避難誘導するなどして安全を担保する注意義務がある。平素から避難経路策定し従業員指導したうえで避難誘導訓練おこない救助袋保守管理と同器具使用した避難訓練をおこなう注意義務もあった。本件火災に際してデパート保安係から火災通報受けられなかった事情があったとしても、各注意義務怠った被告人Cの過失は明らかである」とした。 被告人Cは、プレイタウンの防火管理者として、平素から救助袋維持管理努め従業員指揮して客らに対す避難誘導訓練実施し、煙が店内侵入した場合従業員速やかに客らをB階段誘導し、あるいは救助袋使用して避難させることにより、客らに対して避難遅延による事故発生未然防止すべき注意義務があった。 被告人Cは、あらかじめ階下からの出火想定し避難のための適切な経路点検をおこなっていれば、B階段が安全確実に地上避難できることができる唯一の通路であるとの結論達することは十分可能であった認められる被告人Cは、建物高層部多数遊興客を扱うプレイタウンの防火管理者として、本件ビル階下において火災発生した場合適切に客らを避難誘導できるように、平素から避難誘導訓練実施しておくべき注意義務負っていたと言うべきである。したがって保安係員らがいずれもプレイタウンに火災の発生通報することを全く失念していたという事情を考慮しても、右注意義務怠った被告人Cの過失は明らかである。 —最高裁判所第一小法廷判例時報1991(1368) 被告人Bの過失について (要旨最高裁被告人Bの過失について「右被告人はプレイタウンの管理権原者であり、同店の防火責任者である部下被告人Cと同様の注意義務があった。また被告人Cが防火管理業務適切に実施しているかを指導監督する注意義務があったが、それを怠った被告人Bの過失は明らかである」とした。 被告人Bは、プレイタウンの管理権原者として、同店の防火管理者である被告人Cとともに、右被告人負っていたのと同様の注意義務があった。被告人Bは、救助袋修理または取替え放置されていたことなどから、適切な避難誘導訓練平素から十分に実施されていないことを知っていたにも関わらず管理権原者として、防火管理者である被告人Cが防火管理業務適切に実施しているかどうか具体的に監督すべき注意義務果たしていなかったのであるから、この点で被告人Bの過失は明らかである。 —最高裁判所第一小法廷判例時報1991(1368) 以上の検討結果および原審判決支持したうえで、最高裁判所は3被告人について最終的な決定言い渡した最終結論 よって、刑事訴訟法414条、3861項3号により、裁判官全員一致意見で、主文のとおり決定する。 — 最高裁判所第一小法廷判例時報1991(1368) →冒頭インフォボックス「最高裁判所判例」も参照のこと。

※この「上告審決定」の解説は、「千日デパートビル火災事件」の解説の一部です。
「上告審決定」を含む「千日デパートビル火災事件」の記事については、「千日デパートビル火災事件」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「上告審決定」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「上告審決定」の関連用語

上告審決定のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



上告審決定のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの千日デパートビル火災事件 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS