上告審判決が影響した後の判例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/08 08:43 UTC 版)
「国立市主婦殺害事件」の記事における「上告審判決が影響した後の判例」の解説
東京高裁は本判決後の2000年2月、同様に殺害された被害者が1人であるJT女性社員逆恨み殺人事件(1997年発生)の被告人に対し、無期懲役とした第一審判決を破棄自判して死刑を言い渡したが、同判決では「福田判決」を引用し、「『永山基準』を示した最高裁判決(1983年)は、死刑選択の基準の1つとして『結果の重大性』を挙げ、それに関連して被害者の数を基準要素としてはいるが、必ずしも絶対的な基準ではない。殺害された被害者が1名の事案でも、極刑がやむを得ないと考えられる場合があることはもちろんである」と指摘した上で、「同事件は極めて計画性が高く、動機も被告人による強姦被害に遭った旨を本事件の被害者が警察に届け出たところ、それにより刑務所に服役することとなった被告人が一方的に被害者の対応を逆恨みしたもので、極めて理不尽かつ身勝手なものだ。その動機の悪質さは保険金・身代金目的の殺人と変わらない」と判示している。 また、最高裁第三小法廷は2006年(平成18年)6月20日に言い渡した光市母子殺害事件(1999年発生)の上告審判決で、無期懲役を適用した控訴審判決(2002年3月14日・広島高裁)を破棄差戻とした。同判決は、「強姦目的で2人の人命を奪った犯行の罪質は甚だ悪質であり、動機・経緯に酌むべき点はない。特に酌量すべき事情がない限り、死刑を選択するほかない事件である。原判決および第一審判決は被告人の犯行当時の年齢(18歳)や、不遇な生育環境に加え、事件後に反省の念を持ち、矯正教育による改善更生の可能性があることなどを挙げ、『死刑を回避すべき事情』として指摘しているが、死刑を回避すべき決定的な事情とまではいえない」と判示した。また、本事件の「福田判決」は「強盗強姦はともかく、殺人は計画的なものではなかった」と指摘している一方、光市事件の上告審判決 (2006) は「被害者の殺害について計画性はなかったが、被告人は強姦という凶悪事犯を計画し、その実行および犯行発覚防止のために被害者の殺害を決意して実行しており、偶発的なものとまではいえない。その点を考慮すれば、同事件では殺害の計画性がなかったことは死刑回避の決定的事情とまではいえない」と指摘している。 土肥 (2008) は、逆恨み殺人事件および光市事件の判例を「『殺害された被害者が1人でも死刑がやむを得ない場合はある』『主観的事情は過度に重視すべきでない』と判示した本判決が量刑の判断に影響した事件」として挙げている。
※この「上告審判決が影響した後の判例」の解説は、「国立市主婦殺害事件」の解説の一部です。
「上告審判決が影響した後の判例」を含む「国立市主婦殺害事件」の記事については、「国立市主婦殺害事件」の概要を参照ください。
- 上告審判決が影響した後の判例のページへのリンク