上告審判決後
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「大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件」の記事における「上告審判決後」の解説
そして上告審判決で3被告人の死刑が確定したことにより、報道機関の多くは被告人(死刑囚)を実名報道に切り替えた一方、一部の報道機関は引き続き匿名報道を維持した。後の光市母子殺害事件における死刑確定時は各マスメディアは本事件時の対応を踏襲している。 『朝日新聞』(朝日新聞社)は2004年に取りまとめた「事件の取材と報道2004」において、少年死刑囚について「(死刑判決確定により)基本的に社会復帰・更生の可能性が消える一方、犯行当時少年で死刑になる事件は極めて重大なのが通例だ。国家が合法的に人の生命を剥奪する死刑が誰に対して執行されるかは、権力行使の監視の意味でも(犯行当時成年・少年に関係なく)社会に明確にされなければならない」として、原則的に実名報道する方針を決めた。その後、2011年3月10日付のウェブサイト配信ニュース・11日朝刊紙面でその方針に即して実名報道を行った。 『読売新聞』(読売新聞社)は2011年3月10日付のウェブサイト配信ニュース・2011年3月11日朝刊紙面で「死刑が確定すれば更生(社会復帰)の機会はなくなる一方、国家が人の命を奪う刑の対象が誰なのかは重大な社会的関心事」と理由を説明した上で実名報道に切り替えた。 『産経新聞』(産業経済新聞社)は2011年3月10日のウェブサイト配信ニュース・11日付の朝刊紙面で「死刑が事実上確定することで社会復帰などを前提とした更生の機会が失われることや、事件の重大性を考慮した」と理由を説明した上で実名報道に切り替えた。 『日本経済新聞』(日本経済新聞社)は2011年3月10日のウェブサイト配信ニュース・11日付の朝刊紙面で「犯行当時少年だった被告人に死刑判決が下された重大性に加え、被告人の更生の機会がなくなることを考慮した」と理由を説明した上で、実名報道に切り替えた。 一方で『毎日新聞』(毎日新聞社)は全国紙では唯一匿名報道を維持したが、その理由を「『事件当時少年だった被告人の名前は少年法の理念を尊重し、匿名で報道する』という原則を変更すべきではないと判断した。死刑確定後も再審・恩赦が認められて社会復帰する可能性が全くないとは言い切れない」とした上で「死刑が執行された場合はその時点で『更生可能性が消えた』と解釈することができ、実名報道に切り替えることも改めて検討する」とも補足した。また『中日新聞』(中日新聞社)および同系列の『東京新聞』(中日新聞東京本社)も「最高裁での死刑判決が覆る可能性がほぼないことから実名報道への切り替えも検討したが、少年法が求める更生への配慮の必要性はなお消えていない」として実名報道は見送り、『毎日新聞』と同様に引き続き匿名で報じた。なお『毎日新聞』『中日新聞』『東京新聞』の3紙は2017年12月に市川一家4人殺害事件の少年死刑囚(事件当時19歳)が死刑を執行された際に「死刑執行により更生の機会が失われたことに加え『国家による処罰で命を奪われた対象が誰であるかは明らかにすべきである』と判断した」と説明した上で、それぞれ実名報道に切り替えた。 また各テレビ局(NHKおよび民放の在京キー局#各系列の原則としてのキー局・準キー局)もテレビ朝日(テレビ朝日系列)を除き上告審判決を受けて一斉に実名報道に切り替え、うちフジテレビ(フジニュースネットワーク〈FNN〉系列)は被告人3人の顔写真も放送した。テレビ朝日は上告審判決時点では「判決が確定していない段階では少年法の精神を尊重する」として匿名で報じたが、正式な判決確定(判決訂正申し立て棄却決定)をもって2011年4月1日のウェブサイト配信ニュースから実名報道に切り替えた。 日本弁護士連合会(名義:宇都宮健児会長)は2011年3月10日付で「少年の更生・社会復帰を阻害する実名報道を禁止した少年法の理念は死刑判決でも変わらず、それに反する事態で極めて遺憾。再審・恩赦で少年が社会復帰する可能性は残っており、実名が報道に不可欠な要素とも言えない。今後は実名報道することがないよう強く要望する」と声明を出した。また愛知県弁護士会(会長:斎藤勉)も翌日(2011年3月11日)付で「実名報道した社が示した『更生の可能性がなくなった』という理由は、死刑囚となっても更生の可能性を失うものではなく、罪の意味を内省することもあり不適切である。実名報道は少年法に違反し、厳重に抗議する」と声明を出した。
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