レディ・メイドと『泉』とは? わかりやすく解説

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レディ・メイドと『泉』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 04:35 UTC 版)

マルセル・デュシャン」の記事における「レディ・メイドと『泉』」の解説

早い時期油絵放棄したデュシャンは、既成の物をそのまま、あるいは若干手を加えただけのものをオブジェとして提示したレディ・メイド」を数多く発表した1913年制作の『自転車の車輪』が、最初レディ・メイドといわれている。レディ・メイドタイトル多くは、ユーモアアイロニー交えた地口語呂合わせ成り立っており、一つだけの意味成り立たせないよう周到に練られている。デュシャンは、レディ・メイドについて明確な定義が自分でもできない語っていた。 なかでも普通の男子用小便器に「リチャード・マット (R. Mutt)」という署名をし、『泉』というタイトル付けた作品1917年制作)は、物議かもした。この作品は、デュシャン自身展示委員をしていたニューヨーク・アンデパンダン展に匿名出品されたものの、委員会議論の末、展示されることはなかった。後年デュシャンは「展示拒否されたのではなく作品展覧会の間じゅう仕切り壁の背後置かれていて、自分作品がどこにあるか知らなかった」とインタビュー応えている。デュシャン自分出品者であることを伏せたまま、展示委員立場から抗議評論文を新聞発表し委員辞任した最終的にはこの作品紛失した展示反対した委員意図的に破棄したではないか考えられている)。 後日自身編集携わった雑誌「THE BLINDMAN」においてデュシャンは、アルフレッド・スティーグリッツ撮った『泉』の写真含めて以下の様に言及している。 マット氏が自分の手で『泉』を制作したかどうかは重要ではない。彼はそれを選んだのだ。彼は日用品選び、それを新し主題観点のもと、その有用性消失するようにした。そのオブジェについて新し思考創造したのだ これは、レディ・メイドに関するデュシャン考え方一端表しているとも考えられるこうしたエピソードはいかにデュシャンが、美術を外そうとし、また拒否反応あったかという点を示しているとも言えるが、抗議文の発表など手際良さ目立ち、予めこの事がおこるのを予期していたとも考えられ、「みるものが芸術をつくる」というデュシャン考え方端的に示した一流パフォーマンスとも言えるデュシャンこの後、ほとんど作品制作発表しなくなる。 件の『泉』を含むレディ・メイド作品多くオリジナル紛失している。『泉』は、スティーグリッツによって撮られ一枚の写真残して紛失しており、現在目にすることのできるのは写真複製限られている。しかし、30年後にデュシャン傾倒する若者が、別の市販便器展示許可本人から得て話題となったデュシャン芸術受け継がれていくものだと考え承諾し、「R. Mutt」のサイン入れた。現在、芸術としての公式の便器数百点に上る。 『泉』は2004年12月世界芸術リードする500人に最もインパクトのある現代芸術作品5点選んでもらうという調査結果パブロ・ピカソ名作アヴィニョンの娘たち』を抑えて堂々の1位を獲得したターナー賞スポンサージン製造会社実施)。『泉』の発表後20世紀多く芸術家は「デュシャン以降何が制作できるのか」という問い直面しており、それに応えた作品多く生まれている。 なお、『泉』という日本語題名については、誤訳であり、『噴水』と訳すべきであったという説もある。それは、レディ・メイドという性格上、泉という自然のものではなく人工のものとして扱うべきであるというのが理由である。また、デュシャンエロティシズム対す態度から決し性的なモノ拒否していたとは思われないというのがもうひとつ理由である。もしこの作品邦題噴水』として受容鑑賞するならば、その噴水ノズルは何か? それはこのオブジェ前に在ってしかるべき男性器であり、すなわち作品名からしてダブルミーニングではないか、というのが誤訳説である[要出典]。 「噴水」とすべきという点については、別の主張もある。デュシャンの「泉」に使われ便器配管して流した場合噴水のように上に噴出する。そこからこの作品の題名Fountain噴水、と名づけられたという説である。参考drinking fountain噴水水飲み場【略】DF、あるいはwater fountain噴水水飲み器という表現もある。 『泉』という日本語タイトルつけられていることから、この作品にはアングル代表作『泉』となんらかの関係があると考え、この二つを結びつけて論じる人たちがいるが、デュシャンの『泉』の原題Fontaine(英語ではFountain)で、アングルの『泉』の原題La Sourceとは異なる。この2つ類義語ではあるが、日本人以外でこの二つ作品の関係を論じる人はいないようである。 2006年パリポンピドゥー・センター企画展ギャラリー行われたダダ展」で、従来よりポンピドゥー・センター内の国立近代美術館普段ガラスケース内に展示されていた『泉』が、この企画展移されケース無し展示されていた。企画展終了数日前一人の男がこの『泉』をハンマーでたたき、国立近現代美術所有の『泉』は破損した警察発表によればこの男は「自分のやった事は芸術的パフォーマンスであり、デュシャン理解したはずだ」と述べたという。

※この「レディ・メイドと『泉』」の解説は、「マルセル・デュシャン」の解説の一部です。
「レディ・メイドと『泉』」を含む「マルセル・デュシャン」の記事については、「マルセル・デュシャン」の概要を参照ください。

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