リーダー不在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 14:26 UTC 版)
「ティーパーティー運動」の記事における「リーダー不在」の解説
サラ・ペイリンは、保守主義者の間で最も人気のある政治家で、2008年に副大統領候補として旋風を巻き起こし、2010年の中間選挙においても大きな影響力を示した(後述)が、同時に指導者としての資質に問題があるとされ、知識の欠如からくる数々の失言から、「大統領の器ではない」という評価が定着しつつある。また共和党支持者以外を含めると彼女には支持者と同じ数だけの反対者がおり、ポピュリストのアイドルとはいえ、かつての保守層と無党派層の両方を結集したロナルド・レーガンのような、右派にとって都合の良いリーダーではない。共和党系の敏腕選挙コンサルタントとして知られるカール・ローヴは彼女に度々苦言を呈してきたが、ペイリンのリアリティ番組出演を見て「まじめさに欠ける」と再び大統領としての適性を問題視した。前述のアリゾナ銃乱射事件後のイメージ悪化も深刻で、中間選挙勝利で得た期待感は失われ、支持率は急落した。彼女は自ら出馬するよりも、これまでに得た知名度を活かした番組出演や公演、書籍の執筆による印税の高収入を守る方に熱心という友人の話もあり、周囲を散々じらした。しかし結局、彼女は2012年は出馬しないことを表明した。指名候補争いではギングリッチへの支持表明をしている。 グレン・ベックは、人気トーク番組を抱え、草の根運動の火付け役の一人として現代ポピュリスト政治を体現するような人物ではあるが、保守派の間に限れば知名度は高いのものの、反対派からは”狂った”と揶揄されることもあるほどの超保守派で、しばしば共和党の議員をも口汚く罵ることがある。またベックは保守派のなかでも社会的保守派に分類できる人物であり、宗教色の濃い言動が多く、自身がロムニーと同じキリスト教系の新宗教であるモルモン教徒であるため、もし選挙などになったら二人ともバプティスト派が大半の宗教保守派からの支持はあまり期待できないとの分析もある。ベックの保守派への影響力は、オバマ大統領を当選させたオプラ・ウィンフリーのような役割が可能かもしれないが、ベックが司会を務める番組の視聴者はせいぜい260万人で、オプラの番組と比べると1/20以下と遠く及ばず、無党派層に訴える力が弱い。また番組も2011年6月30日で終了した。 他にもジム・デミント上院議員、さらには元牧師で前アーカンソー州知事マイク・ハッカビーなど、ティーパーティーが好む政治家は何人かいるが、それぞれ支持が伸びや悩んで、ティーパーティーを代表するような指導者はいなかった。 2010年4月の世論調査(複数回答)では、ティーパーティー参加者の中での指導者の支持率は、サラ・ペイリンが61%(反対12%)、グレン・ベックが59%(反対6%)、ブッシュ前大統領が57%(反対27%)、ロン・ポールが28%(反対15%)となっていた。違う調査(2010年10月時点)で「運動の顔として相応しい人物は?」という問いの答えは、サラ・ペイリン(14%)、グレン・ベック(7%)、ジム・デミント(6%)、ロン・ポール(6%)、ミシェル・バックマン(4%)で、32%は運動の顔はいないという答えだった。2010年11月2日の中間選挙の結果、過激なティーパーティー候補は敗れたが、当選したランド・ポール、マルコ・ルビオ上院議員なども新たなリーダー候補と目される。(詳しくは「英語版・ティーパーティー政治家リスト」を参照) 2011年3月31日から4月4日の間にNBCニュースとWSJ紙が共同で行った電話調査では、ティーパーティー支持者に限った支持率で、ペイリンが転落した代わりに、不動産王として有名なドナルド・トランプが20%と首位に立ち、ダークホースとして注目された。トランプは、人気テレビ番組に出演しているほか、予てより大統領選に野心を示していた「純粋のアウトサイダー」で、ティーパーティーを積極的に評価して、その支持をあてに急接近していた。なおティーパーティー支持者に限らない場合での首位であるミット・ロムニーはこの条件では17%に落ち込み、以下はハッカビー(14%)、ペイリン(12%)、ギングリッチ(9%)が続いた。ところが、5月16日、急浮上したトランプは「私が最も大きな情熱をかけているのはビジネスだ」と述べて、不出馬の意向を表明した。これはトランプが、オバマ大統領の出生地はアメリカ国内ではないとのキャンペーンを展開して玉砕したのに加えて、大統領の支持率回復に形勢不利と判断したものと思われる。当初より「ジョークの"落ち"かもしれない」との辛辣な懐疑論があったものの、一瞬とはいえティーパーティーの期待を集めただけに、呆気ない撤退はリーダー不在と混迷をさらに印象づけた。 前述のレノルズが初期の段階で分析したように、ティーパーティー各団体は必ずしも全体をまとめるような指導者を必要としてはいないとされ、草の根はあくまでも下からの運動というスタンスを取るならば、中心となる政治的指導者がいないことは弱点というよりも特徴ということになる。参加者に運動のゴールを聞くと、自分たちが支持する大統領候補を擁立するはわずか7%に過ぎず、指導者を担ぎ出そうとする欲求が低いことが分かる。全米ティーパーティー同盟などは、ゴールの一つに財政規律を支持する下院議員を多く選出して、責任ある議会にすることを挙げていた。しかしその目的を達した中間選挙後、リーダー不在で求心力は失われつつありこのままでは「過去の存在となりつつある」との厳しい評価もあった。
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