ミサオノキ = Aidia henryi とされるまでの経緯とは? わかりやすく解説

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ミサオノキ = Aidia henryi とされるまでの経緯

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 17:05 UTC 版)

ミサオノキ」の記事における「ミサオノキ = Aidia henryi とされるまでの経緯」の解説

ミサオノキ対応する学名現在の Aidia henryi (E.Pritz.) T.Yamaz.(あるいはその基となった学名、つまりバシオニム basionym である Randia henryi E.Pritz.)とされるまでには紆余曲折があった。まず牧野富太郎1890年にこの木に初めて「みさをのき」の和名を与えと共に、その学名を Randia densiflora Benth. とした。牧野は後の1944年に、これは自身採取した標本1888年ロシア植物学者マクシモビッチの許へ送って鑑定してもらった結果に基づくものであったということ明かしており、誤同定であった断じているが、その際フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェルAnnales Musei Botanici Lugduno-Batavi 第4巻第5図A に描かれている図版日本産ミサオノキ似ていることを引き合い出し、「Maximowicz 氏ガ之レヲ間違ヘタノモ無理ハナイ」と擁護している。この誤同定牧野自らの手による1926年新品種の記載参照: #Randia densiflora f. angustifolia Makino)や1940年発行された『牧野日本植物図鑑』にも反映されしまっている。また 牧野 (1890) を引用した形跡が特に見られない文献(しかも海外のものも含む)でも誤って Randia densiflora とされた例が見られた。1944年牧野真正の Randia densiflora が5数花であるのに対し日本産ミサオノキの花は4数花である点のほか、花色淡黄色であってクリーム色ではない点、萼片はさらに鈍角緑色、しかも早落性であるといった差異指摘し後述の Randia nipponensis新種として発表した(なおそれまでミサオノキとしてきた Randia densiflora には、この時新たにミサヲノキモドキという和名を与えている)。そして1949年に『牧野日本植物図鑑』の改訂版出した際に Randia nipponensisAidia属に組み替えAidia nipponensis (Makino) Makino とした。しかしこれとは別に Aidia henryi1970年以前段階では Randia henryi)を指すべきところで Randia cochinchinensis (Lour.) Merr.用いてしまう動き1936年以降日本・海外を問わず見られた。そして正宗厳敬1938年に Randia densiflora を含め今日キュー植物園データベース(Govaerts et al. (2021))でAidia属の別種のものとされている様々なシノニムAidia cochinchinensis に属するものとしてしまった。正宗1955年にミサヲノキモドキ(Randia densiflora)を Aidia densiflora に組み替えたが、彼自身はこれをミサオノキであると考え、そのシノニムRandia cochinchinensis を置くという扱いをしていた。大井次三郎1965年自著ミサオノキRandia cochinchinensis とし、そのシノニムに Randia densiflora のみならず Stylocoryne[正しくは Stylocoryna] racemosa Cav. や Randia nipponensis を置き、後に Tirvengadum & Sastre (1986) や Ridsdale (1996) が別種として扱うことになる分類群一緒くたにしてしまっている。さらに1989年に『日本野生植物』(平凡社)でアカネ科担当することになる山崎敬日本産ミサオノキAidia cochinchinensis で、Randia henryiあくまでも中国南部にのみ分布する種と考えており、その認識のまま1970年当時東アジア産のRandia属として知られていた種の見直し一環として R. henryiAidia henryi へと組み替えた。結局山崎は『日本野生植物』ではミサオノキRandia cochinchinensis とし、属を細分化した場合Aidia属となるものとして掲載している。Aidia属などアカネ科の数属の見直し行った Tirvengadum & Sastre (1986) は Randia densiflora について、また東南アジアマレー群島区系ニューギニアソロモン諸島も含む)に分布するAidia属の見直し行った Ridsdale (1996) は Randia densiflora と Randia cochinchinensis両方について、Aidia henryi のことを指すつもりで誤って用いられた例があることを指摘した。そして同時に Ridsdale (1996:139142) は対象とした地域範囲内見られるAidia属および関連属を判別するための検索表設定しているが、その中からここまで触れた種に関連する要素と、南西諸島自生見られるシマミサオノキ(Aidia canthioides (Champ. ex Benth.) Masam.)に関連する要素抜き出す以下の通りとなる。なお、分布域地域区分に関しては Brummitt (2001) に従うこととする。 1.1a. 花序退化して短い密散花序(英: fascicle)となり、ほとんど分枝しない…… シマミサオノキ Aidia canthioides (Champ. ex Benth.) Masam.(シノニム: Fagerlindia canthioides (Champ. ex Benth.) Tirveng. ex Ridsdale)分布: 中国南中央部: 雲南省; 海南省; 南東部: 広東省、旧広西省福建省香港)、南西諸島奄美大島沖縄)、台湾ベトナム。 1b. 花序はよく発達し明らかな分枝見られる…… 2. へ 2.2a. 4数花である…… ミサオノキ Aidia henryi (E.Pritz.) T.Yamaz.(シノニム: Randia henryi E.Pritz.、Randia nipponensis Makino など)分布: 中国南中央部: 雲南省貴州省湖北省四川省; 南東部: 広東省、旧広西省江西省江蘇省湖南省浙江省福建省香港)、日本台湾後述シノニム Aidia merrillii (Chun) Tirveng. も含めるとさらに海南省ベトナムタイにも分布するということになる。 2b. 5数花である…… 3. へ 3.3a. 花序扇状集散花序様(英: cincinnoid)で、花が最末(英: ultimate branches)上になり、基本的に1つの花が花序の節ごとにつく; 軸に無数の見られる…… Aidia racemosa (Cav.) Tirveng.(シノニム: Randia suishanensis Hayata、Stylocoryna racemosa Cav.)分布: 中国海南省)、タイ半島部)、マレー半島クリスマス島ジャワ小スンダ列島スラウェシフィリピンモルッカ諸島ニューギニアソロモン諸島ガダルカナルレンネルンゲラ諸島)、オーストラリアなど 3b. 花序基本的に2出集散花序で、花が最末上になるが、基本的に2つの花が花序の節ごとにつく; 同士の間には分岐ごとに大きな間隔見られる…… 4. へ 4.4a. 花糸有毛である…… Aidia cochinchinensis Lour.シノニム: Randia cochinchinensis (Lour.) Merr.分布: 中国南中央部: 雲南省; 海南省)、ベトナムなど 4b. 花糸無毛である…… ミサヲノキモドキ Aidia densiflora (Wall.) Masam.(シノニム: Randia densiflora (Wall.) Benth.)分布: インドケーララ州北東部)、アンダマン諸島ビルマタイマレー半島スマトラリアウ諸島州を含む)、ボルネオインドネシアカリマンタンマレーシアサラワク州)など 以上のように、牧野もリズデイル(スペイン語版)も島嶼部含まない日本産の種に関して近縁種比較して4数花であるという特徴区別のための要素として挙げている点で一致している。

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